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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第85話

~朝・特務支援課~



ケリを付けてくる。そのライフルは欲しい奴に売るか、セティちゃん達を通してセティちゃん達の親父さんに返しといてくれ。じゃあな。 ランディ



「……くそっ……!」

ランディの部屋でランディの置き手紙を読んだロイドは悔しそうな表情で声を上げ

「……やっぱり気にしていたんだな…………」

「……………………………」

リィンは重々しい様子を纏って呟き、エルファティシアは目を伏せて黙り込み

「それにランディさん、その子の気持ちを全然わかっていないよ!」

シャマーラは悲痛そうな表情でランディが置いていった武器――――”バルディッシュ”を見つめて声を上げ

「ええ………”創る者”だからこそわかります。その子が悲しんでいる事を…………」

「肝心な戦いに自分を使ってもらえない………武器にとっては屈辱ですし、とても悲しい事でしょうね……」

エリナとセティはそれぞれ重々しい様子を纏って呟いた。

「……そんな……」

「こ、こんな書き置きだけ残して……」

一方ティオとエリィは表情を青褪めさせ

「……すっかり……昨日の言葉に騙されたな……クソッ……エニグマまで置いて行くなんて……しかもエルンストの分まで置いて行くなんて用意周到だな………」

ロイドは複雑そうな表情をした後、悔しそうな表情で机に置かれてあるランディとエルンストのエニグマを見つめ

「………ランディ………」

キーアは不安そうな表情をしていた。するとその時ワジとノエルが部屋に入り

「ダメです、周辺の人達も全然見かけていないみたいで……」

「多分、人通りのない深夜に出て行っちゃったんだろうね。」

二人はそれぞれ報告した。

「で、でも一体どこに……?」

「ケリを付けてくるという事はマインツ方面でしょうか……?」

報告を聞いたエリィは不安そうな表情をし、ティオは真剣な表情で考え込み

「ああ……その可能性が高いだろう。」

ロイドは疲れた表情で頷いた。

「それなら山道に展開している警備隊からも連絡が……!」

そしてノエルが真剣な表情で言ったその時

「――――そいつは望み薄だな。」

セルゲイの声が聞こえた後セルゲイとヴァイス、アルが部屋に入って来た。



「課長……それに局長達も……」

セルゲイ達を見たロイドは驚き

「ったく、いつも散らかしてるクセに妙に小奇麗にしていきやがって。」

「……まあ、これもあいつなりのケジメなんだろうな。」

「今までお世話になった事……ですか。」

セルゲイは周囲を見回して溜息を吐き、ヴァイスが呟いた言葉にアルは重々しい様子を纏って呟いた。

「……警備隊にも問い合わせたがヤツの姿は確認されてないそうだ。多分、マインツに向かうとしても真っ当なルートは使わねぇだろ。あれでも百戦錬磨の元猟兵……正規軍の目をくらますことは幾らでもできるはずだ。」

「ギュランドロス達あたりなら気付いたかもしれないが………」

「それぞれさまざまな”理由”で放置するでしょうね。」

「そうね……特にエルミナやルイーネあたりなら、上手く行けばランディ一人で敵の戦力を減らせる事ができ……最低でも攪乱はしてくれると期待しているのじゃないかしら?」

セルゲイは重々しい様子を纏って推測し、考え込みながら言ったヴァイスの言葉にアルとエルファティシアはそれぞれ答えた。

「そ、それは……」

セルゲイ達の話を聞いたノエルは複雑そうな表情をし

「……少しは私達の事を頼ってくれると思ったのに……」

「……………………」

エリィは疲れた表情をし、ティオは黙り込んでいた。

「……ま、しばらく様子を見るしかないかもしれないね。山岳地での軍事行動ほど猟兵の得意分野は無いだろうし。追いかけようにも手がかりすら見つからないんじゃないかな?」

するとその時ワジが提案したが

「―――いや。」

「え……」

ロイドの答えを聞いて呆けた。



「多分、ランディも夜のうちにはマインツ方面には行ってないと思う。ひょっとしたら……まだクロスベル市にいる可能性すらあるかもしれない。」

「ええっ!?」

「どうしてわかるんですか!?」

「……簡単な事さ。もしランディが本気で”赤い星座”の武装活動を何とかしようとしているなら……今のあいつの得物……スタンハルバードだけでなんとかなると思うか?」

(あら……中々良い所をついているわね。)

ロイドの推理を聞いたルファディエルは感心し

「あ……」

「……確かに。どう考えても無理がありますね。」

ノエルは声を上げ、ティオは納得し

「って事は、ヤツが猟兵時代に使っていた武装――――”ソイツ”の代わりを調達するのが先ってワケか。」

セルゲイは考え込んだ後”バルディッシュ”に視線を向けた。

「はい………本来の得物であるブレードライフルを得意としていましたし……ウィルさんの話ではブレードライフルは本来は火薬式の武器だという話ですから。それらを市内で調達するのは決して不可能ではありませんし……昔の得物をどこかに保管していた可能性もあります。」

「なるほどな……」

「そ、それじゃあ市内で彼が立ち寄りそうな場所を回ってみれば……!」

「ランディさんの行方を突き止められるかもしれない?」

「確かに……!調べる価値はありそうです……!」

「ああ、そう思ってさ。」

「………………………」

「ワジ……見当はずれだと思うか?」

(あら……もしかしてこの子……)

黙り込んでいるワジに尋ねたロイドを見たルファディエルは目を丸くし

「いや、フフ……さすがに予想外だと思ってさ。―――いいんじゃない?聞いててなるほどと思ったよ。それで、彼が立ち寄るとしたら市内のどこが怪しいのかな?」

尋ねられたワジは口元に笑みを浮かべた後尋ねた。

「そうだな……―――やはり旧市街周辺が一番怪しいかもしれない。交換屋のアシェリーさんは裏で武器も扱ってるし……ギヨーム親方なんかも重火器の扱いには詳しそうだ。」

「カジノのドレイク・オーナーも何か知ってるかもしれませんね。ランディさん、しょっちゅう遊びに行ってたみたいですし。」

「そうね……それに確か、ランディがクロスベルに来た時以来の知り合いじゃなかったかしら?後はひょっとしたら”ラギール商会”にも寄っているかもしれないわ。あそこなら文字通り”何でも”揃っているから……」

「クク……ヤツも災難なこった。上手く撒いたつもりがお前らにかかりゃ、あっという間に尻尾を掴まれちまうんだからな。」

ロイドやティオ、エリィの推理を聞いたセルゲイは口元に笑みを浮かべて言った。

「ふふっ、確かに。」

「さすがは特務支援課の初期メンバーだな……」

「みんなランディさんの事、ちゃんとわかっているね♪」

セルゲイの言葉にノエルは苦笑し、リィンとシャマーラは口元に笑みを浮かべて言った。

「……当然です。こんな勝手、リーダーとしても許すわけにはいきません。何とか行き先を掴んで絶対に連れ戻さないと……!」

「あたりきしゃりきです。」

「ええ、首に縄をかけても連れて帰りましょう。」

セルゲイ達の言葉にロイドやティオ、エリィはそれぞれ答えた。

「……あいつを連れ戻すための行動は別に構わないが……さすがに今の状況で全員で行くことは許可できん。」

するとその時ヴァイスは真剣な表情で言い

「え……」

「きょ、局長!?どうしてですか!?」

ヴァイスの言葉を聞いたエリィは呆け、ロイドは真剣な表情で尋ねた。

「……マインツを占拠している猟兵達は囮で本命はクロスベル市の襲撃である事を警戒しているのでしょう?ヴァイスは。」

「ああ。なんせ奴等が憎んでいると思われる対象である俺やギュランドロス達全員がクロスベル市に集結しているしな。下手をすれば”怪盗紳士”――――”結社”の軍勢や”黒月”の構成員と同時に仕掛けてくる可能性も十分に考えられる。」

アルに言われたヴァイスは頷き

「なっ!?」

「……………………………」

「た、確かにありえそうですね……………」

「下手をすれば”赤い星座”、”黒月”、”結社”の3勢力を同時に相手にしないといけない恐れもあるね。」

二人の会話を聞いたロイドは驚き、セルゲイは目を細めて黙り込み、ノエルは不安そうな表情で言い、ワジは真剣な表情で言った。

「――――まずエルファティシアは置いていってもらう。襲撃が起きた際、エルファティシアの力は必要だ。」

「そうね。私なら戦場で魔術での援護、並びに負傷者達の治療ができるわ。……そして”戦争”の経験者でもあるから、殺し合いには慣れているわ。」

ヴァイスの言葉にエルファティシアは頷き

「次にリィン。訓練兵とはいえ、軍人のお前なら殺し合いの覚悟はできているな?」

「…………………はい。賊の討伐に従軍し、既に殺し合いの経験はあります。」

ヴァイスに視線を向けられたリィンは重々しい様子を纏って頷き

「後はセティ達――――領主の娘であるディオン3姉妹も個人的にですが殺し合いになった際の覚悟もできていると思っていますが?」

アルは真剣な表情でセティ達に視線を向けた。

「……………はい。」

「……………まあ、たまにだけどあたし達――――”工匠”達の採取区画に忍び込んだ挙句、あたし達が手に入れた材料や身につけている装備を狙って来る賊と何度か殺し合った事があるしね……………」

「………加えて父様――――ユイドラ領主の娘である私達の身柄を確保する為に襲ってきたと思われる者達と戦い、殺してしまった事は何度かあります……………」

アルに視線を向けられたセティ達はそれぞれ重々しい様子を纏って答え

「本当ならルファディエル達も置いていってほしい所だが……さすがにそれだとお前達の戦力が落ちすぎるし、本人達が承知するとは思えないしな。」

ヴァイスは真剣な表情でロイド達を見回して言った。

「………………………わかりました。残りのメンバーで絶対にランディを連れ戻します……!」

それぞれの答えやヴァイスの言葉を聞いたロイドは複雑そうな表情で黙り込んだ後決意の表情で言い

「――――ラテンニール!!」

ロイドが答えるとティオはラテンニールを召喚し

「……ラテンニール。少しの間でいいので、ここに残ってキーアやセティさん達を守ってください。……万が一襲撃があれば”本気”で対処しても構いません。」

真剣な表情でラテンニールを見つめて指示をし

「オう!そノ時は敵ヲゼンブ殺シテもイインだなっ!?」

「………………………はい。存分に暴れても構いません。」

ラテンニールの確認の言葉にティオは重々しい様子を纏って頷き

「……一応ラテンニールも残していきます。私達にはラグタス達がいれば十分ですし……”魔神”のラテンニールなら”赤い星座”や”黒月”、”結社”が襲撃をかけてきても一人で何人もの”敵”とも渡り合えると思いますし……」

「そうか。それは助かる。」

ヴァイスに視線を向けて言い、ティオの言葉にヴァイスは頷いた。



「………ランディ、大丈夫なのー?」

するとその時キーアは不安そうな表情で言った。

「ああ……絶対に連れて帰ってくるから!」

「ええ、何も心配いらないわ。」

「キーアはツァイトやセティさん達と一緒にお留守番をしていてください。」

「……うんっ。ロイドたちも……くれぐれも気を付けてね!」

その後ロイド達は支援課のビルを出て、情報収集を始めた…………… 
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