Blue Rose
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第十九話 療養所その九
「楽しく過ごすんだよ」
「長崎で、ですね」
「長崎はとてもいい街だからね」
「そうですよね、景色が奇麗で」
「色々な場所もあるしね」
「グラバー園とか大浦天主堂とか中華街とか」
「色々な場所があるからね」
岡島も優花に話す。
「そうした場所を巡ったり美味しいものを食べて」
「長崎ちゃんぽんやカステラですね」
「そう、実は僕どちらも好きなんだ」
長崎ちゃんぽんもカステラもというのだ。
「よく食べてるよ」
「長崎ちゃんぽんって量も多いですしね」
「そう、太い麺と豚骨スープの上に具が一杯乗っていてね」
岡島も楽しそうに話す、それが長崎ちゃんぽんの特徴であり一杯食べるだけでかなりのボリュームがあるのだ。
「いいよね」
「僕好きです」
「それならね」
「その長崎ちゃんぽんを食べてですね」
「あとはカステラもね」
それもというのだ。
「食べるといいよ」
「あれもいいですよね」
「長崎のカステラは味が違うんだ」
他の場所のカステラと、というのだ。
「だからね」
「甘いものも楽しんで」
「長崎で過ごすといいよ」
「わかりました、そうさせてもらいます」
「高校の間はこっちだよね」
「はい、そうさせてもらいます」
「じゃあね、ただ本当にマスコミには注意してね」
岡島は優花に再びこう言った。
「連中はとにかくタチが悪いから」
「そのことにはですね」
「注意してね」
「高校に通う様になっても」
「そうした連中は人の過去が好きだからね」
ここでも顔を顰めさせてだ、岡島は優花に話した。
「それが御飯の種だからね」
「人の過去がですか」
「誰だって過去があるよ」
この言うなら当たり前のことをだ、優花に言うのだった。
「それぞれね」
「いい過去も悪い過去も」
「中には人に言えない、隠していないといけない過去もあるね」
「知られたくない過去ですね」
「それがあるんだ、けれどその過去を暴く行為は」
マスコミの多くがする様な所業はというのだ。
「最低最悪の行いだよ」
「そうしたことをする人にはですね」
「本当に注意するんだ、まして君がこれから作る過去はね」
「知られてはいけない過去ですね」
「そう、絶対にね」
かつては男であった、それはというのだ。
「それこそ最高の記事になるからね」
「僕普通の人じゃないんですか」
「普通だよ」
岡島は優花の今の眉を曇らせた問いに即座に答えた。
「紛れもなくね」
「そうですよね」
「人は心で人間になるからね」
それ故にというのだ。
「君は人間だよ」
「それでもですか」
「そう、君の過去が他の人と違うから」
「狙われるんですね」
「噂が少しでも漏れるとね」
「そうなるからですね」
「気をつけるんだよ」
くれぐれもという言葉だった。
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