Blue Rose
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第十九話 療養所その七
「お掃除も運動になるからね」
「出来れば洗濯も」
「ああ、それはいいから」
そちらについてはだ、岡島は笑って答えた。
「ここには洗濯機はないからね」
「だからですか」
「うん、そちらは僕達い任せてね」
「わかりました」
「ただ、お掃除はしたいのなら」
「していいですね」
「散歩もね。読書も好きな本があったら言ってね」
何でもという口調での言葉だった。
「ここの図書室にある本なら何でも持って来るから」
「本棚にもありますね」
「うん、何しろ入院していることと同じだからね」
この療養所での生活はというのだ。
「時間は嫌になる位あるから」
「暇なんですね」
「学校じゃないからね」
入院と変わらない状況だからだ、それでというのだ。
「そうなっているよ」
「そうですか」
「だから他にもしたいことはあるかな」
「趣味とかですか」
「うん、何かあるかな」
「絵、ですか」
ここで優花は学校に通っていた時のことを思い出してだった、岡島に話した。
「出来たら」
「ああ、君学校では美術部だったね」
「はい、油絵も水彩画も描きますし」
このことについてもだ、優花は岡島に話した。
「色鉛筆を使うこともあります」
「色々描くんだね」
「描くことは好きでして」
「趣味なんだね」
「はい、ですから」
「わかったよ、じゃあ絵の具とかもね」
「用意してくれるんですね」
優花は目を輝かせて岡島に尋ねた。
「そちらも」
「すぐに持って来るから、キャンバスとかもね」
「そうしてくれますか」
「絵の具も筆も鉛筆も多い方がいいね」
「じゃあそちらも」
「十二色どころかね」
それこそというのだ。
「三十色でも何色でもね」
「そんなにですか」
「用意するよ、君家では何色持ってたのかな」
「どっちの絵の具も色鉛筆も四十八色ずつでした」
「わかったよ、具体的な色も教えてくれるかな」
持っていたそれもというのだ。
「それも」
「全部ですか」
「揃えさせてもらうよ」
「いいんですか?」
「いいよ、これ位はね」
岡島は微笑んで優花の遠慮している顔に返した。
「別に」
「そうなんですか」
「君も時間が沢山あるから」
「その時間をですか」
「散歩や読書やそうしたことで過ごすべきだよ」
「何かそれですと」
「いやいや、何もしないでいるのもストレスだからね」
それが蓄積されるからだというのだ。
「だからね」
「そうしたことをしてですか」
「ストレスを溜めないでね、ましてや君はストレスを溜めたらいけないから」
「女の子になるからですか」
「身体に負担がかかるのは確かだしね」
性別が変わる、身体的にそうなることがというのだ。
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