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魔女に乾杯!

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94部分:第九十三話


第九十三話

              第九十三話   神社の中で
 赤音達は神社の中へこっそりと入って行った。そして葵達が何処にいるかまず探した。
「いたよ、御主人」
 ハリーが赤音の側まで来て言う。
「どこ?」
「ほら、あそこ」
 前へ顔を向ける。するとそこに葵と友人達がいた。見れば箒を手に何かをしていた。
「お掃除かな」
「多分ね」
 ジップが応える。
「てっきりここで遊んでると思ったけど」
「うん」
 だが違っていた。姉達はせっせと神社の掃除に励んでいたのであった。だがそれが赤音にとっては凄く不思議なことであったのだ。
「あのお姉ちゃんが」 
 葵は家事はあまりしない。やればできるのだがものぐさでしようとしないのだ。料理も作れるし、掃除もする。だが必要な時以外はしようとはしない。とにかくズボラなのである。
 それは妹である赤音自身が最もよく知っている。だから彼女は今姉が掃除をしているのが不自然に思えて仕方がなかったのである。
 だがそれでもこれは現実だった。赤音は掃除をしている。それも自ら進んで。
「これ一体どういうことなんだろ」
「さあ」
 使い魔達もこれに応えることができなかった。
「私達も不自然だと思うけれど」
 ジップが言った。
「それでも実際にお掃除しているしね」
「きっと何か見返りがあるんだよ」
「だろうね」
 赤音はハリーのその言葉に頷いた。そうでなければ納得出来なかったからだ。
「さもなければここで悪いことしたか」
「そのわりには進んでやってるね」
「だったらやっぱり見返りが欲しくて、かな」
「アルバイトでね」
 掃除はすぐに終わった。葵達は掃除を終えると箒をなおした。そしてそのまま神社の後ろへ向かった。
「行く?」
「勿論」
 赤音は頷いた。そして木の陰に隠れてついて行った。
「行かなきゃわからないからね」
「了解」
「じゃあ行くか」
「うん。けれど」
「けれど。どうしたの?」
 二匹の使い魔は主に尋ねた。
「何かあったの?」
「やっぱりね。引っ掛かるよね」
 赤音は曇った顔でこう言った。
「お姉ちゃん、こんなところで何をしているのかって」
「まあね」
 神社の周りはどう見てもいい場所ではない。そんなところで何をしているか。妹でなくても心配になるところであった。
「お掃除はしてるけど。悪いことしてなきゃいいけど」
「まあそれは確かめてからね」
 ジップが主を宥めるようにして言った。
「いいわね」
「うん」
 赤音はそれに頷いた。そして姉の後を追うのであった。

第九十三話   完


               2006・2・28

 
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