犬猿の仲
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第三章
「な、何だこれは!」
「お、おい危ないぞ!」
「うわ、カメラ倒した!」
「箱ひっくり返したぞ!」
スタッフ達もだ、その騒ぎに巻き込まれてだった。
収録現場は大騒動になった、大溝もそれを見てだった。
慌ててだ、スタッフ達に言った。
「おい、これはだ」
「大変なことになってますよ」
「撮影出来てるよな」
「何とか」
若いスタッフの一人が何とか答える。
「俺が持ってるカメラで」
「ならいいがな」
「はい、ただ」
「凄い動きだからな」
その喧嘩の有様がだ。
「撮影しきれてるか」
「何とか」
「何とかか」
「はい、ですが」
「この騒ぎはな」
「どうしますか?」
「どうしますもこうしますもな」
それこそという返事だった。
「えらいことになったら」
「あの二匹ずっとですよ」
「ワンワンワン!!」
「キーーーーーーーーーーッ!!」
親の敵同士の如く争う、お互い結構傷を負ってもだ。
喧嘩を続ける、だがその中で。
岡崎と猿の飼育係が二匹の間に行ってだ、そしてだった。
自分達の犬と猿をそれぞれ止める、しかし。
彼等もそれぞれ噛まれ引っ掛かれダメージを受ける。だが何とかだった。
二匹を引き離した、しかし。
気付けばだ、収録現場もスタッフ達もだった。
酷い状況になっていた、大溝もだ。
気付けば眼鏡が割れていてだ、髪の毛も乱れていた。そして。
服も乱れていてだ、こう言う始末だった。
「嵐みたいだったな」
「無茶苦茶でしたね」
「全くだ」
それこそというのだった。
「酷いものだった」
「あの、三原君普段大人しいんですよ」
岡崎がその大溝に傷だらけの顔で言って来た。
「実は」
「そうなんだな」
「それが、なんです」
「水原君もですよ」
飼育係の者も言う。
「本当になんです」
「普段はだね」
「穏やかなんですよ」
このことを保証するのだった。
「猿の中で一番」
「それがなんだ」
「はい、犬を見たら」
「いや、本当にね」
嵐の後の廃墟を見る顔でだ、大溝は言った。
「犬猿の仲とはね」
「本当のことでしたね」
「あの言葉通りでしたね」
「そうだったよ、しかもね」
さらに言うのだった。
「予想以上だったよ」
「あそこまで仲が悪いとは」
「予想以上でしたね」
「全くだよ、犬と猿は絶対に顔を合わせてはいけないね」
このことを思い知ったのだった、そして。
この日の撮影を放送してみた、すると視聴率は好評で動画サイトでも大人気だった。大溝はそのことを聞いてテレビ人として素直に喜んだ。
しかしそれと共にだ、こうスタッフ達に言ったのだった。
「もう犬と猿は一緒にしないよ」
「はい、絶対に」
「これだけは止めましょう」
「嵐は勘弁して欲しいからね」
だからだというのだ、大溝にとっても他のスタッフ達にとっても苦い教訓となった。だが諺コーナーはこれからも続き安定した視聴率を出し続けた。
犬猿の仲 完
2016・3・16
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