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逢魔

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第三章

「こんな風な声が聞こえるのかしら」
「謎ね」
 美稀はまた言った。
「これは」
「そうね、謎ね」
「本当にね」
「謎というと」
「その謎を解きたくなる」
「それが人情でしょ」
 晴香は美稀ににこにことして言った。
「なら早速お爺さんのお家にお邪魔しましょう」
「今から?」
「そう、突撃取材しましょう」
「馬鹿言いなさいよ、そんなことしたら」 
 それこそとだ、美稀は晴香の陽気な提案に良識で返した。
「問題になるわよ」
「駄目なの」
「アポ入れないでどうするのよ」
「そうなのね」
「そう、うちの新聞部もちゃんと取材前にはアポ取るわよ」
「だからなのね」
「スポーツ新聞系はないことないこと書くけれどね」
 新聞部でもそちらはというのだ。
「宇宙人は出るし」
「あそこは八条学園の大スポだからね」
 関東では東スポという、発売する地域によって名前が違うがその内容は変わらない。最高の新聞紙である。
「ないことないことね」
「先生が宇宙人にすり替わってるとかね」
「普通に書くからね」
「あそこはアポなしどころじゃないから」
 事実を公表するのではなく物語を創っているのである。
「また違うわよ」
「そうよね」
「けれど常識ある人はマスコミでもよ」
 日本のマスコミ人のゼロコンマ何パーセントに常識が備わっているのかという深刻な問題があるにしてもだ。
「普通はよ」
「事前になのね」
「アポ取るものよ」
「じゃあお爺さんに連絡してから」
「お爺さん自身に確認取るのもね」
「それがいいのね」
「そう、わかったわね」
 こう言って晴香に念押しをした。
「今は退散よ」
「それじゃあ」
 晴香も納得してだ、そしてだった。
 二人はこの日は老人の家の前から退散した、そのうえで。
 日曜の暇な時にあらためてだ、二人でだった。 
 老人の家の門に来てチャイムを鳴らした、すると。
 如何にも人のよさそうな老人が出て来てだ、チャイムを鳴らした二人に穏やかな声で尋ねてきた。怪しいところは何もない。
「今日は珍しいお客さんじゃな」
「珍しい?」
「といいますと」
「はっはっは、何か察しはつく」
 源田は自分の言葉にいぶかしむ顔になった二人に笑っても言った。
「何でわしの家は賑やかなのか聞きに来たな」
「あっ、わかるんですか」
「そのことが」
「大体な」
 おおよそのところはというのだ。
「わかったわ」
「そうなんですね」
「もうですか」
「歳は取ったがぼけておらぬつもりじゃ」
 それでというのだ。
「まだまだそこまではわかるわ」
「そうですか、けれど実際にです」
「私達それで来ました」
 美稀も晴香も源田に素直に話した。
「どうしてお爺さんのお家がいつも賑やかなのか」
「そのことを確かめに」
「それでわしに聞きに来たのじゃな」
「それはどうしてですか?」
「何でいつも賑やかなんですか?」
「立ち話も何じゃ」
 老人から二人に言って来た、今度も。 
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