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逢魔

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第一章

                 逢魔
 源田幹二朗はもう何十年も昔に定年を迎え金婚式まで寄り添った女房とも死に別れ子供や孫、曾孫達もたまに家に来るだけの悠々自適と言えば聞こえがいいが実際は一人暮らしには広い家で朝から夜までいる。
 もう髪の毛はすっかり白くなり薄くもなっている、皺だらけの細長い顔で背中がいささか曲がった好々老爺といった外見だ。 
 身の上を聞くと寂しい年金生活者、孤独死が怖そうな身の上だ。だが。
 彼についてだ、近所の子供達はこう言うのだった。
「あのお爺さんいつも賑やかだよな」
「家もな」
「いつも誰かいる感じで」
「家を出てもにこにことしていて」
「明るい感じで」
「爺さんも明るいし」
「いい感じだよな」
 こう話す、だが。
 その話をl聞いてだ、爺さんの家の近所の高校に通う榎本美稀と草薙晴香は食堂で御飯を食べながら首を傾げさせていた。
 美稀は面長でシャープな顎を持っている、やや茶色にした髪を首の付け根まで伸ばしていて大人びた顔立ちの顔の切れ長めの目は奥二重だ。眉は薄く唇は奇麗なピンクで髪から出ている耳は大きい。背は一六七程ですらりとしたスタイルだ。
 晴香は背は美稀より二センチ位低く黒の細い質の髪をなびかせる感じで首筋の高さで切り揃えている。美稀程ではないが面長であるが彼女よりは年相応の顔立ちで奥二重の黒い瞳は大きく唇は赤い。美稀は青のブレザーとグレーをベースとしたチェック模様の短いスカート、白ブラウスに赤ネクタイといった制服で晴香は白のブレザーと短いスカート、赤ネクタイと白ブラウスといった制服だ。二人はそれぞれハンバーグ定食を食べつつ話していた。
「源田さんのお話だけれど」
「その話よね」
 美稀の言葉にだ、晴香はすぐに応えた。
「どう考えてもね」
「おかしいわね」
「だってね」
 晴香は自分のハンバーグで白い御飯を食べつつ言った。
「ずっとお一人でしょ」
「広いお家にね」
「それでいつもお家が賑やかって」
「お子さんもお孫さん達も滅多に来ないらしいわ」
「それでもいつも賑やかなんて」
「朝から晩までね」
「じゃあ誰が来てるの?」 
 かなり歌川しげにだ、晴香はまた言った。
「それじゃあ」
「変な人とか?」
「お子さんやお孫さん達以外の」
「曾孫の人達も多いらしいけれど」
「その人達は滅多に来ないし町内会とかもね」
「滅多によね」
「元々人付き合いのない人だったらしいわ」
 そうだとだ、美稀も話す。
「これがね」
「それがどうしていつも賑やかか」
「謎よね」
「私達の学校も謎多いけれどね」
 晴香は八条学園、自分達が通っている学園のことにも言及した。
「妖怪だの幽霊だのの話がね」
「七不思議どころか学園全体で百はあるわよね、怪談話」
「もっとあるでしょ」 
 晴香はこう美稀に返した。
「むしろ」
「そうよね、まあとにかくね」
 美稀はハンバーグの皿のところにあるキャベツをベースとしたサラダにも箸をやる、そしてそれも食べつつ言った。
「源田家の謎」
「今この辺りの子供達の中で一番ホットな話題ね」
「まさにね」
 こう晴香に話した。
「そうなってるわ」
「その真相は何か」
「何かしらね」
「お友達とかは」
 一番現実的な可能性をだ、晴香は出した。
「遠くの」
「だから人付き合いはね」
「ないの」
「奥さんがいる時はそれなりにあったらしいけれど」
 だが今はというのだ。 
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