魔女に乾杯!
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
8部分:第七話
第七話
第七話 ライバル登場
華奈子達五人は今日も楽しく魔法を勉強する為に塾へ向かう。そして教室に入るとやっぱり先生はいない。ただ机と椅子、そして教壇や黒板があるだけである。これはいつも通りであった。
五人は特に何も考えることなく席に着いた。そして先生を待つ。その間はおしゃべりだ。
「ねえ、昨日のウタバン観た?」
「あ、観たよ」
「やっぱりコウイチ君いいよね」
「あたしツヨシ君の方がいい。可愛いじゃない」
「え〜〜〜、可愛いのならコウイチ君の方がそうじゃない?」
「そうかなあ。やっぱりツヨシ君の方がいい」
「昨日の娘の新曲もよかったよね」
「コンコン最近上手くなったよね」
「うんうん」
昨日の歌番組の話をしていた。アイドルについてである。こうしたところは年相応であった。魔女だからといって女の子であることは変わりがなかった。
そうこうおしゃべりをしているうちに足音が聞こえてきた。華奈子達はそれを聞いておしゃべりを止めた。そしてきちんと座りなおして足音の主を待った。
扉が開いた。そして白い魔女の服に身を包んだ先生が姿を現わした。
「起立」
梨花の声に合わせて五人が席を立つ。
「礼」
「こんにちは」
先生も挨拶を返す。こうしていつもの授業がはじまる。筈だった。
「皆さんにお手紙が来ていますよ」
先生は授業をはじめる前に五人に対してそう言った。
「あたし達にですか?」
「ええ」
先生はにこりと笑って華奈子にそう答えた。
「これです。どうぞ」
「はい」
華奈子達は先生からその手紙を受け取った。それは封がしてあった。細長い紫の封であった。
「何か変な色の封筒ね」
「うん」
そう言いながらあける。そしてそこにあった手紙を読みはじめた。そこには綺麗な文字でそう書かれていた。
『梅花町の魔女っこの皆さんへ』
「あたし達のことね」
「うん」
五人で顔を見合わせながら読み続ける。華奈子が読み他の四人がそれを覗き込みながら聞いている。
『はじめまして。私は別の町の魔女です。どうか宜しくお願いします』
「礼儀正しいなあ」
「華奈子ちゃんと大違い」
「放っといてよ」
そう言い合いながらも読み続ける。
『今私も立派な魔女になる為に勉強しています。そしてその修業の為に明日あることをします』
「何だろ」
『明日梅花小学校の校旗を頂きに行きます。貴女達にそれを止められるかしら』
「えっ!?」
どうやら只ならぬ状況であるらしい。華奈子達はそれを読んで聞いて絶句した。
『私を防げたら貴女達の勝ち。私が校旗を頂いたら負けよ。どう、勝負してみませんか。
それでは明日の夜九時に梅花小学校で。どうか宜しく。
紫の魔女より』
手紙はそれで終わっていた。読み終わった華奈子達は皆驚きの表情であった。
「どうする?」
まずは美樹が他の四人に尋ねた。
「これ大変なことよ。私達の学校の校旗を盗もうなんて」
「かといって警察にいってもね。何か信用してくれなさそう」
「子供の言うことだからね。どうする?」
「どうするって決まってるじゃない」
華奈子が強い声で皆に言った。
「売られた喧嘩よ。買わなくてどうするのよ」
「華奈子ちゃん、男の子じゃないんだから」
「男の子も女の子も関係ないわよ。挑戦状よ、これ」
春奈に対してそう返す。
「引き下がっちゃ駄目よ。皆はどう思う」
「私は華奈子ちゃんに賛成するわ」
まず梨花が言った。
「校旗盗まれちゃうちの学校も恥ずかしいしね」
「あれでもないと寂しいしね」
美樹も頷いた。
「私も。それに喧嘩は売られたら買えって、いつも姉ちゃんに言われたし」
赤音もだ。残るは春奈だけである。
「春奈ちゃんはどうするの?」
四人は彼女に尋ねてきた。
「わたし?」
「ええ。どうするの?行くも行かないも自由よ」
「行くわ」
意を決した顔で頷いた。
「喧嘩とかは嫌いだけど。わたし達の学校のことだから。行きましょ」
「これで決まりね。じゃあ明日の九時に学校で」
「うん!」
五人は頷き合ってその場を後にした。後には先生だけが残った。
「あの、皆さん授業は」
だが皆もう授業のことは忘れていた。先生はそれを見て仕方無いな、という顔をした。
「まあいいですね。明日は特別授業がありますし」
にこりと笑ってそう言った。こんな時でも落ち着いた先生であった。
第七話 完
2005・6・2
ページ上へ戻る