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魔女に乾杯!

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79部分:第七十八話


第七十八話

                第七十八話  分け合う
 美奈子は魔法塾には通ってはいない。ピアノやヴァイオリンのレッスンを受けてはいるがそちらは何も知らない。ここが華奈子と違うところであった。
「あたし楽器は苦手だからね」
 華奈子はそれに対して笑いながらこう答える。活発な彼女は楽器よりも踊りの方が得意なのだ。歌は二人共得意にしている。どんな歌でも見事に歌ってみせることで知られている。
「将来双子でアイドルになったらどう?」
 友達にはよくこう言われてからかわれる。
「キャラクターも全く違うし受けるかもよ」
「おてんばな華奈子ちゃんとおしとやかな美奈子ちゃんでね」
「何であたしだけそう言われるかなあ」
 華奈子はそれを聞いてつむじを曲げた顔を作る。
「あたしだっておしとやかな一面があるのよ」
「何処が」
 それを言うといつもこう突込みが帰ってくる。
「華奈子ちゃんがおしとやかだったら女の子は皆おしとやかよ」
「そうそう。本当に姉妹で全然違うんだから。同じなのは顔だけね」
「そういえば」
 それを言われると二人はいつも顔を見合わせる。
「あたし達って顔は同じよね」
「うん」
 美奈子もそれに合わせて頷く。
「けれど。何か全然違うね」
「それは仕方ないわ」
 苦笑いを浮かべる華奈子を宥めるようにして言うのが常であった。
「だって。全部同じだったらかえって怖いじゃない」
「それはそうだけれど」
「双子でもね。違う場所が一杯あるのは当然よ」
「けれど。羨ましいなあ」
「羨ましい?」
「うん。美奈子が」
 華奈子はこう言った。
「おしとやかだし楽器も上手いし勉強も出来るし。あたしみたいなおてんばとは全然違うしね」
「けれど私は貴女のそうしたところが羨ましいのよ」
「そうなの?」
「ええ。元気があって踊りが上手くてスポーツ万能だし。私そっちは全然駄目だから」
「何か。二人でいいところ分けあってるみたいね」
「そうね」
 二人はここでにこりと笑みを浮かべ合った。
「だからあたし達双子なのかな」
「そうかもね」
 笑い合いながら言う。
「同じ顔だけれど得意なものは全然違う」
「けれど同じところがあるかも」
「それは?」
「さあ、何かしら」
 だが美奈子はここは誤魔化した。
「けれどそれがあったら華奈子には絶対に負けないわよ」
「あたしだって」
 華奈子も言い返す。
「同じものがあったら。美奈子だってライバルよ」
「その言葉、忘れないでよ」
「勿論よ」
 二人は言い合った。だがここに一つ秘密があることを華奈子は知らなかった。美奈子だけが知っていることであった。


第七十八話   完

 
                 2005・12・31

 
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