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魔女に乾杯!

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60部分:第五十九話


第五十九話

                 第五十九話   消えた影
「!?」
「どうしたの、華奈子ちゃん」
 四人は華奈子が急に立ち止まったのを見て顔を彼女に向けた。
「あそこに」
「あそこ!?」
 華奈子は茂みを指差した。四人はそこに注目した。
「何かいたのよ」
「まさかそれって」
「そのまさかかも」
 華奈子はそれに答えた。
「あそこにいたのよ。それも二匹いるみたい」
「それじゃあ間違いないわね」
「探そう」
「うん」
 こうして五人はまた探しはじめた。だが結局何も見つかりはしなかった。そしてそうこうしている間に時間だけが過ぎていった。五人は仕方なく諦めることにした。
「おかしいなあ、さっき確かに見たのに」
 華奈子は悔しそうにこう言った。
「見間違いかな、そんな筈はないけれど」
「まあ今日は諦めましょう」
 皆を代表して梨花がこう言った。
「また来ればいいから」
「そうね」
 そんなことを言いながら五人は裏山から帰った。だがその後ろ姿を見送る影があった。
「危ないところでしたな」
「全く」
 その茂みからひょっこりと影が出て来た。紫の魔女の使い魔タミーノとフィガロであった。
「意外と勘がいい。流石はあの方の・・・・・・」
「タミーノ殿」
 フィガロがこう言って彼を宥めた。
「あまり迂闊なことは」
「おっと、これは失敬」
 タミーノはそれに気付き言葉を引っ込めた。
「何処で誰が聞いているかわかりませんからな」
「そうそう。御気をつけなされ」
 彼等はそんな話をしながら五人を見ていた。だが五人はそれには気付いていない。
「今は大事な時ですからな」
「左様でしたな」
 二匹はそう言い合って頷き合った。それからまた言った。
「して紫の魔女様の今後は」
「また何か考えておられるようです」
 フィガロはこう答えた。
「今度は何か。楽しみですな」
「我等も何かと腕の振るいがいがあるというもの」
「ええ。あの方はまさしく天才」
「その天才をどう使われていくのか」
「楽しみにしておきましょう」
「それではその時に備えて」
「こちらも腕を磨いておきましょう」
「はい」
 そう言いながら二人は何処かに姿を消した。だが気配は残っていた。それは何かを企む気配であった。

第五十九話   完


                   2005・10・27

 
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