Three Roses
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第八話 短い輝きその七
「司教も太子もおられます」
「あの方もですか」
「ですからあの娘達と共にいなくてもです」
構わないという口調だった。
「ですから」
「だからですか」
「あの娘達と会っても」
基本同じ王宮の中にいるので毎日の様に顔を見合わせる。それで会釈をし合うがそれでもというのだった。
「姉妹、従姉妹には思えないのです」
「ですか」
「私は一人です」
王家、その中ではというのだ。
「そう思ってきましたし」
「今もですね」
「そうです、貴女達がいてくれれば」
「それで構いませんか」
「そう考えています、では今日も」
自ら書を開いてだ、マイラは司教に言った。
「学問のご教授をお願いします」
「わかりました」
司教はマイラの疎外感、そして孤独を愛する感情に思うところがあったが彼女の頑なさに言えなかった。
このことは太子も同じでだ、彼は帝国から来ている側近達に共に食事と酒、帝国の宮廷料理のそれを楽しみつつ言った。
「妃は気難しいな」
「どうもですね」
「遊興には興味がおありではなく」
「こうして美酒、美食も楽しまれません」
「ただ峻厳と旧教の教えを守るばかり」
「修道院の尼僧の様です」
「孤独を愛している」
太子ははっきりと言った。
「私と共にいてもだ」
「それでもですね」
「あの方は心を開かれない」
「あくまで、ですね」
「信仰に生きておられ」
「学問をされていますか」
「学識と教養は備えている」
太子はマリーのそうしたところも見ていた。
しかしだ、それと共にというのだ。
「だがな」
「常にお一人ですね」
「学問と祈祷にばかり励まれ」
「その他のことには興味を示されない」
「そうした方ですね」
「まさにな、あれではだ」
太子は側近達に冷めた目で話した。
「尼僧だ」
「修道院のですね」
「そうした方ですね」
「修道院は狭い」
その世界自体がというのだ。
「閉じられた中で毎日同じ者達と顔を見合わせてだ」
「学問と祈祷ですね」
「それを行うのみで」
「遊興も贅沢も厳しく禁じている」
「そうした場所ですね」
「寂寥としていて簡素だ」
太子の見たところだ、修道院はそうした場所だ。
こう言いつつだ、太子は帝国の宮廷料理、帝国から連れて来たシェフに作らせたそれを食べつつだ。葡萄の美酒を飲み。
そしてだ、あらためてこう言った。
「こうしたものも口に出来ない」
「それではですね」
「そうした場所に長くいればですね」
「視野が狭くなる」
「そうなってしまいますね」
「その頭も硬くなる」
思考が硬直化するというのだ。
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