八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十話 午前の練習その十三
「贅沢って一族の中で怒られてるから」
「義和のお父さんって稼いだお金で遊んでるだけでしょ」
「それでも言われてるんだ」
「贅沢って」
「そうなんだ」
「そんなに贅沢かしら」
「一族から見たらね」
だから家長さんも怒るのだ。
「もっと質素にしろって」
「何か無駄遣いを怒られてる感じね」
「実際そんなところあるね」
僕は美沙さんの今の指摘を否定しなかった。
「親父は家長さんから見たらずっと悪ガキだから」
「中年の悪ガキね」
「うん、一族の不良息子って言われてるよ」
「それで贅沢はなのね」
「するなって言われてるんだ」
「成程ね」
「その親父もフォアグラよりあん肝派なんだ」
よく買って来て自分で調理してお酒の肴にしていた。
「イクラとかだしね」
「キャビアよりも」
「そうなんだ」
「ふうん、それじゃあ義和も」
「僕もそういうのの方が好きだね」
あん肝やイクラの方がだ。
「やっぱり」
「そういうのフランス料理じゃ食べないわよね」
「どっちもね、というかあんこうはね」
あの独特の外見を思い出してだ、僕はついついくすりと笑って言った。
「普通食べないよね」
「まあね、外見だけ見たらね」
美沙さんもあんこうの外見を思い出したのか笑って僕に応えた。
「食べないわね」
「そうだよね」
「不細工って言ったらあれだけれど」
「美味しそうじゃないね」
「あまりね」
その外見だとだ。
「調理も難しいっていうし」
「吊ってね」
これは小野さんは出来る、本当に料理の達人だ。鉄人と言うべきか。
「それで切ってなんだよね」
「調理するのよね」
「そのあんこうの肝の方がね」
「義和としてもいいのね」
「夏は季節じゃないけれど」
あんこうは冬だ、栃木の方の名産だったと思うけれどやっぱり寒い時に食べるお魚だと思う。従って夏はだ。
「冬になったらね」
「また食べたいのね」
「そう思うよ」
美沙さんとあんこうのそうした話もしながらだ、僕達はお肉やお野菜を焼いた。そして調理が出来て来た時にだった。その皆が来た。
第八十話 完
2016・2・17
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