魔女に乾杯!
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55部分:第五十四話
第五十四話
第五十四話 幻想の世界
「これって一体・・・・・・」
「うふふふふふふふ」
紫の魔女は笛を吹きながら笑っていた。
「どうかしら、私の今度の魔法は」
「な、何なのよこれ」
華奈子が戸惑いの声をあげた。
「まるで夢の世界にいるみたい」
「それも悪夢ね」
梨花がそれに合わせるようにして言った。五人の周りに得体の知れない者達が蠢いていたのである。
「この曲はね、幻想といっても綺麗なものじゃないのよ」
「どういうことなの?」
「ベルリオーズはね、自殺しようとしたの」
魔女は語った。
「その時の意識が朦朧とする中で見た夢を音楽にしたのがこれなのよ。だから不気味なのよ」
「そういうことだったの」
「ええ」
今度は梨花に対して答えた。
「そしてね、これだけじゃないわよ」
「梨花ちゃん、気をつけて」
「わかってるわ」
華奈子に言葉を返した。
「何をしてきても。油断はしないから」
「立派な心掛けね」
魔女はそれを聞いてまた笑った。
「けれどそれだけじゃこの魔法には勝てないわよ」
「それはどうだか」
梨花は魔女に対しても負けてはいなかった。
「私だって修業してきたんだから。あんたに勝つ為にね」
「それじゃあ見せて御覧なさい」
魔女は言った。
「私に勝つことをね」
「見せてあげるわよ、今ね」
「そうなの。じゃあ私も見せてあげるわ」
魔女の笛の音色が変わった。
「!?」
「とっておきの悪夢をね」
「とっておきの悪夢」
「それって一体」
「どっちにしろ碌なものじゃなさそうね」
「美樹ちゃん」
美樹が華奈子と赤音に対してそう言った。
「どんなのかまではわからないけれどね」
「梨花ちゃん、気を付けてね」
「春奈ちゃん」
「何かあったらすぐに私達が行くから」
「その時は貴女達も相手してあげるわ」
魔女は四人のその言葉を聞いてもやはり余裕であった。
「その時を楽しみにしておいてね。じゃあ行くわよ」
「むっ」
「幻想交響曲。ギロチン台への行進」
「ギロチン台!?」
「まさか」
ギロチンと聞いて五人の背に寒気が走った。そしてそこに死が迫って来た。
第五十四話 完
2005・10・11
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