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オズのボタン=ブライト

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第十幕その六

「皆でね」
「このお菓子を食べて」
「そうして皆で笑顔になるんだね」
「甘くて美味しいお菓子を」
「たっぷりと食べて」
「そうじゃ、ただ悩むであろう」
 こんなことも言った王様でした。
「最初に何を食べればいいか」
「実際にここに来たらいつも悩むんだよね」
 王子は王様の横で少し笑って言いました。
「どうしても」
「最初に何を食べるべきか」
「考えてしまってね」
 こうカルロスにもお話します。
「どうしてもね」
「そういうことなんですね」
「そう、だから君達も悩むよ」
「確かに、言われてみますと」
 カルロスは王子の言葉にその通りだと頷くのでした。
「最初は何を食べましょう」
「ジュースもね」
 オズマは右手の人差し指を自分の唇に当てて言いました。
「どれも美味しそうね」
「そうですね、ですから余計に」
 ジュリアは困ったお顔になっています。
「悩みますね」
「食べないと悩まないけれどね」
「うん、皆が見て楽しむ方はね」
 つぎはぎ娘と木挽の馬はこうです。
「早く皆の笑顔が見たい」
「それだけだよ」
「何でもいいんじゃない?」
 皆があれこれ考えている時にです、ボタンはといいますと。
 普通に自分の傍を通った苺のキャンデーを取ってです、包装しているビニールをはがしてからその赤が強いピンクのキャンデーをお口の中に入れました。
 そしてです、こう言うのでした。
「目に入ったものをね」
「すぐにだね」
「食べればいいんじゃない?」
 こうカルロス達にも言うのでした。
「こうしてね」
「考えないでなんだ」
「僕考えてないよ、今」
「ただ目にあるものをなんだ」
「うん、キャンデーをお口の中に入れたんだ」
 そのキャンデーを舐めながらの言葉です。
「そうしたし、それに」
「美味しいんだね」
「うん、とてもね」
「そうだね、一杯あるしどれを食べてもいいのなら」 
 カルロスもボタンの言葉を受けて言いました。
 そしてです、傍にあったスーパーで売っている様なケーキを手に取ってです、箱から開けて食べて言うのでした。
「うん、美味しいよ」
「そうじゃ、考えることはないのじゃ」
 王様もここで気付きました。
「そこにあるものを考えずに手に取ってな」
「ボタンみたいにですね」
「すぐに食べればいい」
「どのお菓子も好きなだけ食べていいですから」
「迷うことはない」
 最初に何を食べるかと、です。
「いいと思ったものを食べればいいのじゃ」
「それじゃあ王様も」
「わしはこれじゃ」
 王様は傍にあったアイスクリームを取りました、そしてそれを食べて言うのでした。 
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