不死者の滅竜魔導士
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第一話:訪問者:
———ギィィィ
扉を開けると、ガヤガヤと騒ぐ音が耳にグッ、と伝わって来た。
薄紫のマントを羽織った少女は足を進ませて、一つの机の上で酒を飲んでいる一人の老人に話しかける。
「マスターマカロフか?」
「ん?そうじゃが、一体誰かな?」
「依頼を頼みたい」
少女はマカロフの問いには答えず、淡々と自分の言葉を紡いだ。
「東の王国、ベルガリンを潰す手伝いをして欲しい」
そう言った瞬間、あたりの空気が一瞬で変わった。
凍り付いた空気の中、マカロフは少女に体をくるっと向けた。
「何故そのような依頼をなさる?」
「ベルガリンの野望を打ち砕く為」
「野望?」
「あぁ。そして、私自身の為に」
少女の言葉を耳にしながら、マカロフは目を伏せる。
目を伏せたと同時に、女の声が、少女の耳に届いた。
「貴様、どういうつもりだ」
「・・・どういうつもり、とは?」
少女は顔を後ろの方に向けて、赤い髪をした女を見やった。
すらりとした顔つき、体つき。鎧を体に帯びて、鋭いつり目をしている。
「貴様の言っている事は、国際問題を起こしかねない。それをわかっているのか?」
「もちろんだ、エルザ」
少女は女の、エルザの名を口にし、更に続けた。
「お前達は、ベルガリン王国の最悪の野望に気付いていない。このままあの国を放っておけば、ベルガリンは世界に災厄をもたらすだろう」
「災厄だと?」
「そうだ」
「あんまり信じられねぇな」
ガジルがそう呟く。だが、少女は再び言葉を紡いだ。
「ベルガリンを放っておけば、世界から自由は消える。どこにいようと、秩序と恐怖が人の体を蝕む。誰も信用出来ない、誰も理解出来ない、そんな世界になって行く」
少女の言葉を、その場にいた全員が静かに聞いていた。マスターマカロフは伏せていた目を開けると、口を開く。
「その依頼、受けよう」
「マスター!?」
エルザは驚いた様に声を上げる。他の団員も、全員があんぐりと口を開けていた。
「感謝する、マスターマカロフ」
「もし貴方の言う事が真実なら、このままではいけない。エルザ!」
マカロフはエルザの名を呼んだ後、更に別の者達の名も呼んだ。
「ナツ!ハッピー!ルーシィ!ウェンディ!シャルル!グレイ!エルフマン!ジュビア!ガジル!リリー!ラクサス!お前達が彼女につけ!」
名を呼ばれた者達は、戸惑った顔をしながら、少女の方を見た。
すると、少女はフードをぐいっと脱ぎ、自らの顔をあらわにした。
「———私の名は、エレン・ヴァルガーニだ」
黒と銀のオッドアイをした少女———エレンは、そう言ってゆっくりと頭を下げた。
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