魔女に乾杯!
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29部分:第二十八話
第二十八話
第二十八話 跳ねる光
「赤音ちゃん」
ハリーは赤音にあらためて声をかけてきた。
「何?」
「もう一回魔法を撃ってみて」
「いいの?」
「ああ。是非やって」
ハリーは彼女を急かした。
「何回もね。続けて撃つんだ。けれどそれは床に向けて」
「床に?」
「そうだよ。まとめて撃つんだ。それも広範囲に」
「わかったわ。それじゃ」
赤音はそれを受けてステッキを下に向けた。そして魔法を続けて放った。
「えいっ!」
光が床に撃ちつけられる。それは床を撃って跳ねた。
そして次に鏡にぶつかった。それはまた跳ねた。
「赤音ちゃん、よけて!」
「いや、よける必要はないよ!」
ジップが叫んだところでハリーがそれを制止した。
「えっ!?」
「光の魔法を自分にかけるんだ!そして光を中和するんだ!」
「うん!」
赤音はそれに頷いた。すぐに光の壁が彼女を包んだ。
「これでいいの?」
「うん」
ハリーはそれを見て頷いた。
「そうさ。それで自分の光の魔法は怖くはない。問題はバウンドする魔法なんだ」
「これが一体どうしたんだよ」
ジップはその魔法を避けながらハリーに問うた。
「よけにくいだろ?普通に相手に目掛けて一直線に放つより」
「まあね」
実はハリーも必死に避けていた。
「だからさ。今までの魔法よりもずっと効果があるよ。だからお姉さんもここに連れて来たんだ」
「そうだったんだ」
赤音もそれを聞いてよくやく理解した。
「今度はお姉ちゃんに感謝しなくちゃね」
「ただ赤音ちゃんの鈍臭さを考えるとね。危険な賭けだったけど」
「けれどそれで光の壁も身に着けたんだしいいんじゃないかな」
「それもそうね」
赤音もそれに頷いた。
「けれど、今回は苦労したわ」
「どうしてだい?」
「だって魔法が跳ねるんだもの。よけられないかと思ったわ」
「そこがいいんじゃない」
「えっ!?」
「赤音ちゃんがよけにくいってことは相手だってそうなんだよ。だから効果があるんじゃないか」
「そういえばそうか」
「そうかって・・・・・・。赤音ちゃんって本当に呑気なんだから」
「私は別に呑気じゃないよ。ただドジなのは認めるけれど」
「やれやれ」
「赤音ーーーーーーっ」
ここで姉の葵の声がミラーハウスの外から聞こえてきた。
「もう帰るつもりだけどいい?」
「あ、お姉ちゃん」
「デートも終わったのかな」
「そうみたいだね」
二匹の使い魔はそれを聞いて囁き合った。
「そろそろ帰らない?そっちの修業次第だけれど」
「うん、こっちはもういいよ」
「じゃあ帰りましょ。アイスクリーム奢ろうか?」
「うん!」
「最後はものでつる、か」
「中々頭のいいお姉さんだね。魔女の姉だけはあるよ」
二匹の囁きはシニカルさを増した。だがそれは二人には聞こえなかった。
第二十八話 完
2005・7・31
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