FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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やればできる
前書き
午後から雨降るとか言ってたのに!!降ってないじゃん!!おでかけできたじゃん!!うわあああああああ!!
シリル「あれ?暑くて家出れないとか言ってたよね?」
レオン「ガセ?」
・・・
「「黙秘権使うな!!」」
・・・テヘッ♪
レオン「絶対零度」
ゴハッ・・・←山神失神
レオン「シリル」
シリル「御意」←顔に水かける
プハッ!!気持c・・・死ぬかと思った。
レオン「これ拷問にならないかも・・・」
シリル「暑いもんね」
いやいや!!作者に拷問するなよお前らぁ!!
「「・・・テヘッ♪」」
・・・←鼻血出して倒れている
シリル「キモいわ」
レオン「今のはシリル見たからでオケ?」
ガタガタと揺れる馬車。凸凹している山道を走っていることもあり、ゆっくりと進んでいるはずのそれは左右に大きく揺れている。だが、生憎とそれは俺にダメージを与えることはない。その理由はもちろん、目の前にいる少女のおかげだ。
「やっぱり乗り物って楽なんだね」
ずいぶんと久しぶりにそんな感情を抱いた気がする。最近はことあるごとに乗り物酔いに襲われていたこともあり、正直馬車や船に乗るのは避けたかったところがある。だが今回は違う。ウェンディに忘れずにトロイアをかけてもらったことと、目的地までの距離が短いことが大きな要因だろう。
「フフッ、乗り物でシリルとしゃべるの久しぶりかもね」
「そういえばそうかも・・・」
クスクスと笑っている天竜。彼女の言う通り、乗り物でこうやってまともに話すのは超久しぶりなんじゃないだろうか?なんせ真の滅竜魔導士になったことで、乗り物に弱くなってしまったのだから。
「なんでウェンディは平気なのかな?」
「う~ん・・・なんでだろうね?」
俺が知っている滅竜魔導士の中で唯一乗り物に酔わないのがウェンディなのである。最初の頃は俺もガジルさんも大丈夫だったんだけど、滅竜魔法の魔水晶と七年のブランクを埋めるための修行のせいか、乗り物にめっぽう弱くなってしまった。そういえばナツさんやガジルさんは生きてるかな?交通手段が徒歩しかないと厳しいと思うけど。
「あ!!港が見えてきたよ!!」
外の景色を覗いていたウェンディが遠くを指さす。俺も彼女の隣に移動すると、そちらの方角へと視線を向ける。
「あれ?ハルジオン港じゃないんだね?」
てっきり港というからハルジオン港だと思っていたけど違った。ハルジオン港よりもずっと小さい、小さな船が出入りするだけのような港がウェンディの指さす先にあるのが見える。
「今船がある場所に一番近いのはこの港なんだって。ここからハルジオン港まで私たちが移動させるんだよ」
外に出していた手を引っ込めてこちらに目をやる少女。よく考えたらマーガレットからハルジオン港まで二十分でつくはずないのか。それにハルジオン港周辺まで来てたらもう少し頑張れよって話だもんね。
「ところでウェンディ」
「??何?シリル」
「その船まではどうやって行くの?」
今更そんなこと聞くなよと思った人も多いことだろう。だが、今はシャルルもセシリーもいないため、空を飛んで行くことはできない。船を手配しているような気配もなかったし、果たしてどうするつもりなのだろか?
「え?シリルの魔法で行くつもりだよ?」
「え?俺の魔法?」
こちらから質問を受けた少女は不思議そうな顔で首を傾げる。しかし俺の魔法って、そんな便利なのあったかな?
「ほら!!大魔闘演武でルーシィさんを囲ってた」
「もしかして水竜の球体のこと?」
「うん!!それそれ!!」
初日のタッグバトルで使った水竜の球体。妖精の球体からヒントを得てやってみた技だったけど、使いどころがなくてお蔵入りしそうになってた魔法だ。それがまさかこんなところで役に立つなんて夢にも思わなかったから、少し困惑している。
「お客さんたち、着きましたよ」
そうこうしているうちに、馬車が目的地へと着いたため料金を払って地上へと降りる。その場から去っていく馬車を見送った後、海に行こうと考え港へと降りていった。
「わぁ!!綺麗なところだね!!」
水がどこまでも続いているような景色が広がるその場所を見て、気持ちを高ぶらせているのはもちろん俺の恋人。俺もテンションMAXになりそうだったが、二人とも興奮しちゃうと収集がつかなくなるのでグッとこらえ、一つ息をついた後海上を見渡す。
「船全然見えないね」
「うん。ずいぶん離れたところで止まっちゃったみたいだから」
救援要請を出している船は俺たちの視界の届く場所にはいない。かなり沖の方でエンジンが壊れたようで、陸からはその姿を確認するのは難しそうだ。
「あれ?そういえばどうやって船の場所を探すの?」
ささやかな疑問。陸からは見えないんじゃどうやってあちらを見つけて救助すればいいのか、そう問いかけるとウェンディがウサギのカバンから手の平サイズの魔水晶を取り出す。
「これに向こうの船の位置が映し出されるんだって。オババ様が評議院から預かったらしいよ」
それを聞いて一安心。まさかこの広い海のどこかにある船を探さなければならないとなると気が遠くなるけど、場所が把握できるなら何も問題はないよね。
「じゃあ!!さっそく行ってみよ!!」
「オッケー!!」
テンションアゲアゲのウェンディが握り締めた右手を上に掲げたので俺も同じようにやる気をあげる。それから、久々に水竜の球体を出し、中にウェンディと一緒に入っていく。
「あ!!中は空っぽなんだね」
「じゃないと息できないじゃん!!」
ちょっと厚めの水の膜を張った玉は、中で呼吸ができるように空気が入っている。俺は水の中でも呼吸はできるけど、普通の人はできないからこうするのが一番得策なんだよね。
「よし!!どっちにいけばいいの!?」
「う~んと・・・」
水晶の点の位置を見ながら方角を確認する。一応俺たちのいる現在地が中央に来る仕組みになっているらしく、位置の把握はできそうかな?
「わかった!!しばらく真っ直ぐ!!」
「了解!!」
進む方角が決まったため、そちらに進むように魔法で波を起こしていく。その波に乗った水竜の球体は、ゆっくりと沖に向かっていく。
「ねぇ、シリル」
「何?」
揺れる玉の中で座って休んでいると、不意にウェンディに声をかけられる。
「地味だね、なんか」
「言わないで」
魔法なんたからもっと高速で移動できるかと思っていたら、こんなゆっくりと、しかも波の力で進んでいることで夢が崩されたウェンディがそう言う。はっきり言うと俺もそう思う。だけど、他に移動手段もないわけだし、ここは我慢するしかないよな。
「でも・・・ちょっとドキドキする」
「え?」
体育座りで水の壁にもたれかかっているウェンディがポソリと呟く。
「だって、こんなところで二人っきりなんて・・・」
徐々に顔を赤くしている天竜のか細くなっていく声に耳を傾ける。俺が体を近づけていることに気付いていないウェンディは、何かをブツブツと呟いていると・・・
グラッ
球体が波によって大きく揺れた。
「キャッ!!」
「うわっ!!」
さっきまでは小さく揺れていたのに、今回は大きく揺れたためバランスを崩すウェンディと俺。その際、こちらにウェンディが覆い被さるように倒れてくる。
「うぅ・・・すごい揺れた・・・」
俺に被さりながら呻き声をあげているウェンディ。しかし、彼女は目を開いた時気付いてしまった。自分の頬が俺の頬に合わさっていることに。
「キャッ!!」
頬に柔らかい感触を感じて驚いたウェンディは飛び上がるように離れていく。予想外のアクシデントだったため、こちらは反応することすらできていなかったが、今思えば勿体無いことをしたような気がする。
「あ・・・ごめんね?シリル/////」
「ううん。むしろありがと」
「え?」
「ごめん、なんでもない」
当たっていた頬を抑えながら顔をトマトのようにしているウェンディ。直接感触を味わえなかったのは残念だけど、頬からでもウェンディの柔らかさが伝わってきたので、ちょっと興奮していたりする。
「あ!!もしかしてあの船じゃない!?」
恥ずかしさを吹き飛ばそうとしてか、声をいつもよりも大きめにして前方を指さす天竜。その先には、確かに波の力でしか進んでいるようにしか見えない一隻の船があった。
「レーダーの反応は?」
「うん!!あれであってるみたいだよ!!」
どうやら評議院から渡された魔水晶もあの船を指していたらしい。そうと分かれば・・・
「あの船に向かって全速前進!!」
「オオッ!!」
船長みたいに前を指さし声掛けすると、ウェンディがはりきって返事をしてくれる。まぁ、言うほど速度は上がっていない気もするけど、そんなことを気にすることなく救援を求める船へと接近していったのであった。
レオンside
ギルドを出てから早数時間、俺たちは依頼主から家出をしたお子さんの情報を聞いている。のはいいんだけど・・・
「なぁ、何この豪邸」
「やっぱり思った?」
依頼主に聞こえないように口元を隠しながら隣に座るラウルに話しかける。俺たちが座っているフカフカのソファに無駄にピカピカしている机、その上には落ちてきたら即死ものだろうと思われるほどの大きさのシャンデリアが吊るしてある。
「ちょっとあなたたち!?ちゃんと聞いてる!?」
そしてその家の家主はこちらのおばさん。漫画に出てくるような厚化粧にその手には大きな宝石がついている指輪をこれでもかと付けている。
「えぇ、もちろん」
「聞いてますよ」
俺とラウルが話しているのを見て激怒しているおばさんにニコッと営業スマイルをする俺とラウル。以前人魚の踵に留学で行った時、無愛想だったことをどこからか聞き付けたリオンくんに注意されたので習得した技である。これを使ってから、リオンくんにそのことで注意されることはなくなったし、いい方向に向かっているのではないのだろうか。
「それならいいんだけど・・・」
今回の依頼主も俺たちの笑顔にうまく騙されてくれたようで、家出をしたという子供の話を再開する。
聞いているところによると、この依頼主はその子のことを溺愛しているらしい。本人はなぜいなくなったのかわからないと言っていたけど、たぶん俺の予想だとあまりにもこの人の愛が重たくて逃げてしまったといったところだろうか?
(こりゃあ見つけた後が一番面倒臭そうだな)
見つけて連れてくるだけなら簡単な依頼だろう。しかし、恐らくその子は戻りたくないと言うだろうから、説得という行程が入ってくる。おまけのそのあとはこのおばさんが子供を叱るのを宥めなきゃいけないし、やることが多いな。
(今日中に戻るのは無理だろうな)
あらかじめシリルたちには戻れないかもとは伝えていたが、まず間違いなく今日中に戻るのは無理だ。それどころかしばらく家に帰れないかもしれない。
その方がシリルとウェンディにとっては新たな経験ができそうだからいいだろうけど、問題はこっちだよな。
「大丈夫!!すぐに見つけてきますから!!」
「私たちに任せなさい!!」
「全力出しちゃうよ~!!」
一刻も早くシリルたちの様子を見たいシェリアたちはやる気満々だ。本来こんな依頼俺たちが引き受けることはないんだろうけど、依頼主が『フィオーレで一番優秀な魔導士』を所望したらしく、俺とシェリアに声がかかったらしい。
依頼主の親バカぶりには呆れるが、こいつらがこんなにノリノリなら俺も頑張らなければならないだろうな。
「ありがとうございます!!皆さんよろしくお願いします!!」
深々と頭を下げ、家の外まで見送ってくれる依頼主。お金持ちの人は性格悪いって印象があったけど、あの人はそうでもないのかな?校長やグラン・ドマのせいで、そんな印象を持ってるだけなんだけど。
「レオン!!はりきっていっちゃうよ!!」
「ラウルもセシリーも準備はいい!?」
「オッケ~!!」
「バッチリだよ!!」
気がつけばすぐにでも離陸する準備のできている四人。あまりのハイテンションにため息が出たが、早く帰れるならその方が楽なため、何も言わずに彼女たちに付き合うことにした。
シリルside
「皆さんお待たせしました!!」
「救援依頼を受けてきました!!」
水竜の球体から船の上へと飛び乗り船員の皆さんに挨拶をする。やっと助けが来てくれたと皆さん大喜びだったが・・・
「うっ・・・」
船に上がった瞬間、顔を真っ青にしている俺を見て全員固まっていた。
「大丈夫?シリル」
「ごめん・・・ありがとう・・・」
さっきまでは自分の魔法だったため酔わなかったが、今回は乗り物の上。あっさりと弱点を露呈した俺にウェンディがトロイアをかけてくれてなんとか助かる。
「お・・・おい」
「大丈夫なのか?こんな子供二人で」
「もっとちゃんとした助けを求めた方がいいんじゃ・・・」
沸き立っていた先程までとは対照的に、船内を不安な空気が駆け巡る。その原因は間違いなく俺なんだろうな、もっと気をつけて行動するべきだったか。
「安心してください!!皆さん!!」
「私たちが港まで送りますから!!」
ザワザワとしている空気の中、大きな声でそう叫び不安を取り除こうとするが、一向に納まる気配はない。
「仕方ない。ここは・・・」
隣の少女と視線を合わせ、コクンッとうなずく。ここは行動で信頼を獲得するしかないよね!!
「そぉれ!!」
ザバァッと大きな音を立て、船の帆と同じくらいの高さの波を作り出す。そしてその出来上がった波に、俺とウェンディは飛び乗り船を見据える。
「何やってんだ嬢ちゃん!!」
「そんなとこにいたら危ねぇぞ!!」
水の上に立つなんて普通ならありえない。だから彼らは大慌てだが、水を操る魔導士としてはこのくらいできて当たり前。そして・・・
「天竜の・・・咆哮!!」
風を操る彼女なら、帆に直接魔法をぶつけて動かすことが可能なわけだ。
「うおおっ!?」
「船が動いてる!?」
「すげぇ!!」
小さな体から風速数メートルは下らない風を生み出す少女を見て驚きを隠せない漁師さんたち。俺は船とウェンディとの距離を一定に保ちつつ、ハルジオン港目指して一直線に進んでいく。
十分ほど経っただろうか、沖合いで身動きが取れなくなっていたその船は、フィオーレでもっとも大きな港へと無事にたどり着いていた。
「やった!!着いた!!」
「久しぶりの陸だぁ!!」
「助かったぁ!!」
長いこと船の上にいたこともあり、港に着いたことに大盛り上がりの皆さん。俺とウェンディはそれを見て、彼らの前に着地する。
「やったねウェンディ!!」
「私たちもやればできるんだね!!」
いつもいるシャルルとセシリー抜きで達成した今回の依頼。自分たちだけでもできるのだと自信をつけた俺たちは、手をあげてハイタッチする。
「ありがとう!!お嬢ちゃんたち!!」
「助かったよ!!」
「食料もギリギリだったからなぁ」
喜んでいる俺たちを取り囲むようにお礼を言いに来るおじさんたち。初めて二人だけで依頼を達成した気がするので、その嬉しさと皆さんから褒められた喜びで俺もウェンディも頬を赤く染めていた。
「小さいのに大したもんだ!!」
「女の子二人だから心配だったけど」
「信じてよかったなぁ!!」
よほど助かったことで気持ちが盛り上がっていたのだろう。彼らは口々にそう言うが、それを聞いた俺とウェンディは心にグサグサきていることに彼らは気付いていない。
「小さいって・・・」
「また間違えられた・・・」
自分の胸を擦りながら遠くに見える街の女性たちを見ている天竜と、性別を間違えられたことにガックリと項垂れている水竜。たぶん悪気はないんだろうけど、それでもやっぱりこれは気にしちゃうよね・・・
「本当にありがとな!!」
「次も君たちに頼むようにしようかな!!」
「応援するから頑張れよ!!」
落ち込んでいる俺たちの頭を撫でながら声を掛けてくれる漁師さんたち。それを聞いた俺とウェンディは、ま、いいかな、という気分になり、目を合わせ、小さく笑い合っていた。
後書き
いかがだったでしょうか?
おかしいなぁ・・・二人をもっとラブラブさせる予定だったのに、全然ラブラブしてない・・・
次は家でのところに入っていきます。今度こそ二人をイチャイチャさせてみせる・・・!!
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