Three Roses
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第七話 子をもうけぬままその十
「全て王の下に」
「そして私が意のままに動かす」
「そうあるべきなのです」
「これからは」
「はい、権力は一つであるべきです」
「王が権力であるべきですか」
「その通りです」
大公は王にはっきりと答えた。
「議会の言うことも聞くべきですが」
「議会以上にですね」
「王の権力は強くあるべきです」
諸侯、そして議会よりもというのだ。
「ですから」
「軍もですね」
「王の下に」
「まずはこの軍がですか」
「王の下に。一万います」
歩兵と騎兵合わせてというのだ。
「この軍でいざとなればです」
「戦うのですね」
「その時は王が率いられます」
他ならぬ彼がというのだ。
「そうなっていきます、若しくは」
「然るべき将軍が率いる」
「王の忠実な臣である」
「そうしたことも全てですね」
「王の下に」
将軍も然りというのだ。
「そうなります、これからは」
「これまでの国家とは大きく違いますね」
「さもなければ生き残れません」
国、それとしてというのだ。
「これからは」
「国のあり方を変えていく」
「そうしてです」
「それが今大公がされていることですか」
「そうです、軍も強くしていきますので」
こう言ってだ、そしてだった。
その話をしてからだった、大公は王に微笑んでだ。こう言ったのだった。
「もう政務は終わりですね」
「午前は」
「では暫くぶりに中庭に行きますか」
王宮の中のその場所にというのだ。
「そうされますか」
「中庭の薔薇達をですね」
「はい、観にいかれますか」
「それでは」
大公は王の言葉に微笑んだ、そのうえで。
二人で王宮の中庭に出た、その中庭は今も様々な色の薔薇が咲き誇っている。その薔薇達の中でもだ。
紫の薔薇達を見つつだ、王は自身の傍らにいる大公に言った。
「この紫の薔薇達がです」
「王は最もお好きですね」
「以前から」
「先王が最初に王に贈られた薔薇でしたね」
「はい」
大公の言葉にこくりと頷いて答える。
「そのこともありますし」
「その時先王に言われましたね」
「紫は高貴の色、そして」
「王の色と」
「言われましたので」
それ故にというのだ。
「今もです」
「薔薇達の中で、ですね」
「この薔薇が最も好きです」
紫の薔薇がというのだ。
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