ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~正式メンバー版
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二の刻・青年期前半
第二十九話「悲しみの過去。歩みだす未来」
前書き
(`・ω・)話の繋がり方が悪くなる為、前話のラストを書き直しました。
何時もの日常を送っていた村に突如やって来た鎧を着込んだ兵士達。
何事だと道を塞ごうとした門番のエーを一刀の下に切り捨て、大挙して攻め込んで来た。
『この村よりやって来たパパスなる者がわがラインハットの王子ヘンリー様を拐かした。お前達が匿っているのであろう、大人しく差し出せ!』
『ば、馬鹿な!パパスさんがそんな事をする訳が無い!』
『『『そうだ、そうだ!』』』
『でたらめを言うんじゃねえ!』
『そうか、あくまでも庇い立てすると言うのならば貴様等も同罪だ』
隊長格であろう者が掲げた手を振り下ろすと残りの兵士達は怒涛の勢いで攻め込んで来た。
逃げ待とう村人達を容赦なく切り殺し、家は打ち壊した後で火を放ち、畑も荒らした後で塩を撒き、井戸や川には毒を流し、そして全てを蹂躙し尽すと高笑いをしながら去って行ったのだという。
―◇◆◇―
「後でスラリンに聞いたんじゃが村を襲ったのはラインハットの正式な兵士じゃなく、人間の姿に擬態した魔物らしい」
「だが、それでも……ラインハットがやった事には変わりない」
ヘンリーは悲痛な表情を緩める事無くそう呟いた。
「お主、ラインハットと何か関わり合いがあるのか?」
その表情から何かを感じ取ったのか、長老は目線を強めながらヘンリーに尋ねる。
「ちょ、ちょっと待ってよ!彼は…」
「いいんだリュカ。これはハッキリと言っておかなきゃいけない事なんだ。…俺の名はヘンリー。ラインハットの王子だ」
「「「「なっ!?」」」」
ヘンリーの告白に驚き、一瞬言葉を失った村人達だったが直ぐにその目は怒りの炎に染まった。
「お、お前がラインハットの王子だと!」
「攫われたっていうお前が何で此処に居るんだ!?」
「やはり、パパスさんが王子を攫ったって言うのは出鱈目だったんだな!」
「ちきしょう!お前の、お前達ラインハットのせいで俺達は、この村はこんな目に!」
一度は折り合いをつけた村人達だったがラインハットの、それも当の王子本人とあって胸の中にずっと燻っていた怒りが爆発したのだ。
「皆、止めてくれ!」
「何故止めるんだリュカ、お前も見ただろうこの村の惨状を。コイツにだって責任が…」
「ヘンリーに責任なんか無い!ヘンリーだって俺と…、俺達と同じ奴等の被害者なんだ!」
「被害者?」
そうして彼は語り出す、ラインハット城での事、そして古代遺跡での戦いの事を。
―◇◆◇―
ラインハット城での出会い、ひょんな事から起こった決闘、そして和解。
城の中に戻ろうとした時に襲って来た盗賊達に攫われたヘンリーを助け出す為に父とリンクスと一緒に古代遺跡に潜り込む。
「そこで盗賊達が笑いながら言っていたんだ。ヘンリーを攫わせたのは王妃だって」
「王妃が?そんな、母親が自分の息子を攫わせるだなんてそんな馬鹿な」
「俺は王位を弟に譲って旅に出た王兄の息子で王妃は俺の母じゃ無いし王妃には実の息子が居る。旅の途中で城に立ち寄った時に襲って来た魔族との戦いで父は死に、俺は王子として城に残された。王妃は自分の息子に王位を継がせるのに俺が邪魔だったんだろうな」
そんな彼の独白に村人達の怒りも徐々に収まっていく。
「何とかヘンリーを救い出して遺跡の外に出ようとした時に俺達の前にアイツが現われたんだ。…ゲマが!」
「くそぅ!」
二人は拳を握り締めながらそう語り、爪が掌に食い込んだのかその手からは血が滲み出し、シーザーとスラリンが心配そうに擦り寄る。
「あっけなく倒されて、人質になった俺達のせいで親父は抵抗らしい抵抗が出来すら出来ずに…」
「ま、まさか」
「そして親父、いや父は……死んだ。俺達を守って…」
リュカの言葉に村人達は皆、一様に言葉を失った。
「ま、まさか…。あのパパス殿が、信じられん」
「う、嘘だろ、パパスが…。なあリュカ、嘘だと言ってくれよ!」
長老が目を覆って俯き、武器屋の親父はリュカに詰め寄り、その両肩を掴んで揺さぶる。
「クオーンッ!クオオーーーンッ!」
シーザーはリュカを苛めるなとばかりに武器屋の親父を威嚇する。
「その手を離せ!」
「止めてよ、おじさん!」
「それ以上リュカ殿を責めるのなら例え親父殿と言えども見過ごす事は出来ぬぞ」
「リュカヲキズツケルナラ、ユルサナイ」
「ブルルルーーンッ、ヒヒーーンッ!」
ヘンリーにスラリンとピエール、ブラウンとパトリシアの声に親父も漸く落ち着いたのか掴んでいた手を離し、申し訳なさそうに俯いて謝罪を口にする。
「す、すまねえリュカ、少しうろたえちまった。お前の方がずっと辛いって言うのによ」
「いや、いいんだ。気にしないでよ」
素直に謝った親父に納得したのか、仲間達も落ち着いて座り直し、そしてピエールはさっきから気になっていた事をリュカに尋ねる。
「それでリュカ殿。先程からリンクスの姿が見えないのだがまさかリンクスもその時に?」
「いや、あの後気絶した俺達はゲマに連れ去られたんだが、リンクスは魔物だからあのままほって置かれたんだろう。だから行方は解らないけどきっと無事で居てくれる筈だ、きっと探し出す」
「さ、攫われたって、何処に?」
「セントベレスだよ。其処で光の教団の大神殿を作る為の奴隷として働かされていたんだ、10年もの間ずっと。そして教団の悪事に気付いた兵士の協力で何とか脱出する事が出来たんだ」
村人達は自分達と同じ位に…否、年齢を考えれば自分達よりも遥かに悲惨で厳しい日々を送って来た語り終え、俯いている二人に何も言う事が出来なかった。
「さて、暗い話はここまでにしよう。あーー、お腹が減った。ご飯、ご飯」
そんな空気を吹き飛ばす様にリュカは明るい口調で叫ぶ。
すっかりと冷めてしまったが、食事を再開しようするリュカの膝にシーザーが飛び乗り、そして同じ様に彼の膝に座ろうとしていたスラリンがシーザーを睨みつける。
「何だよ、リュカの膝には僕が座るんだぞ」
「クオンクオン、クオオ~ン」
いいえ、私よと言っているのか、シーザーは首を振りながらスラリンを無視しつつリュカの膝を独占する。
「どいてよーー!10年ぶりに会ったんだ、もっとリュカに甘えたいんだよ!」
「クオーン、クオン」
嫌よ、退かないわとシーザーはしがみ付いて膝に頬を摺り寄せ、そんな小競り合いを見ながらも村人達、そしてヘンリーも笑い声を上げていた。
確かにこの10年間は辛い日々の連続だった、しかし嘆いてばかりもいられない。
過去を無かった事には出来ないが、自分達にはまだ未来がある。
その未来を明るい物とする為にも歩き出さなければならないのだから。
=冒険の書に記録します=
後書き
(`・ω・)と、言うわけでシーザーは女の子でした。
前回、はしょった場面を書き足してみたんですが、どうでしょう。
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