Blue Rose
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第十八話 新幹線の中でその八
「ここがだよ」
「九州ですね」
「そう、まずは北九州と福岡で」
「それからですね」
「君は長崎に行ってね」
「おじさんは鹿児島ですね」
優花も言う。
「そちらですね」
「また縁が会ったら会おうね」
「はい、今日は有り難うございます」
優花はここで男に礼を述べた。
「本当に」
「あれっ、有り難うって」
「はい、色々とお話してくれて」
「いや、これはね」
「これは、ですか」
「何でもないよ、というかこうしたことを話すのは」
それこそというのだ。
「普通だよ」
「普通ですか」
「こうして会ったのも何かの縁」
「だからですか」
「うん、わしも君に話せて楽しかったし」
「そうなんですか」
「うん、見たところ君は」
男は今度は優花のその少女の様な顔を見て言った。
「随分奇麗な顔をしているから」
「そうですか?」
「タレントさんかその卵かな」
「いえ、違います」
すぐにだ、優花はそのことは否定した。しかも真面目な顔で。
「僕そんなのじゃないです」
「そうなのか」
「はい、そうしたことはないです」
「随分奇麗な、女の子みたいな顔だから」
優花のことに気付かないままだ、男はこうも言った。
「そう思ったけれどね」
「そうですか」
「いや、わしも君みたいな顔だったら」
笑ってだ、男はこうも言った。
「随分もてていただろうな」
「女の子にですか」
「ああ、生憎この顔だからもてたのは女房に対してだけさ」
「奥さんにはですか」
「今ももてもてだがな」
笑ったままさらに言う。
「他の娘にはもてたことはないな、けれどな」
「奥さんには好かれてるからですね」
「それでいいがな、こう言ったらもてない男のやっかみだが」
前置きを入れて言うことはというと。
「何人からも同時にもてたらな」
「それはそれで、ですか」
「厄介かもな」
「何かドラマとかでありそうな話ですね」
「そうだな、三角関係とか痴情のもつれとかな」
二時間ものの推理ドラマや昼のドラマの様な話だった、今度の話は。
「それでぶすりと」
「それは怖いですね」
「全くだ、だから一人からだけもてる方がいいかも知れないな」
「そうしたトラブルになるよりは」
「やっぱり生きてこそだからな」
またこの話になるが今回は冗談混じりだった。
「そんなことで死にたくないな」
「そうですね、確かに」
「そんなアニメがあったか」
「アニメで、ですか」
「三角関係、挙句は女の子に片っ端から手を出して」
さながらドン=ファンの様にだ、そうした行為に耽った結果として。
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