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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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外伝~新教授の依頼~前篇

ベルガード門を去ったロイド達は残りの緊急要請を出した依頼者がいるウルスラ病院に向かい、到着した。



~ウルスラ病院~



「……ロイド……!?」

ロイド達が病院の敷地内をある程度進むと聞き覚えのある女性の声が聞こえ

「あ……!」

声を聞いたロイドが明るい表情で声のした方向を見つめたその時、そこにはセシルがいて、セシルはロイド達に近づいてきた。

「セシル姉……はは、いきなり会えたな。」

「ふふ……お帰りなさい、ロイド。エリィさん、ランディ君、エルファティシアさんやノエルさんも……みんな、元気にしてたかしら?」

「ふふ、ご無沙汰してます。」

「お久しぶりッス、セシルさん!」

「そちらは相変わらずの様子ね。」

「ふふっ、本当に久しぶりですね。あたしとは教団事件で病院が襲撃された時にお会いして以来でしたっけ。」

セシルに視線を向けられたエリィは会釈をし、ランディは嬉しそう表情で返事をし、エルファティシアは口元に笑みを浮かべてセシルを見つめ、ノエルは笑顔で答えた後言い

「ふふ……そうだったわね。」

ノエルの言葉にセシルは微笑みながら答えた。

「へえ、この人が噂のお姉さんかい?」

その時ワジは興味深そうな表情でセシルを見つめ

「あら、見かけない子達もいるみたいだけど……もしかして、ノエルさんと貴方達が噂の新メンバーになるのかしら?」

見つめられたセシルはワジやリィン、ノエルに視線を向けて尋ねた。

「フフ、そういうことになるかな。僕はワジ・ヘミスフィア。今後ともよろしくお願いするよ。」

「俺はリィン・シュバルツァーと申します!今後ともお見知りおきを、セシル様!」

尋ねられたワジは答え、リィンは姿勢をただして答えた。

「ふふ、よろしくね。それとリィン君だったかしら?私に対してそんな丁寧な態度で接してもらわなくてもいいわよ?」

「し、しかしセシル様はリウイ陛下の側室の一人であり、あのパリエ家の方でもあるのですし……」

セシルに言われたリィンは戸惑いながら答え

「あら……私とリウイさんの関係を知っているなんて……もしかしてロイド達が話したのかしら?」

リィンの答えを聞いたセシルは意外そうな表情をした後尋ね

「いえ。俺はメンフィル軍の訓練部隊に所属している者でして、この度リウイ陛下の命により、支援課に出向という形で一定期間、支援課に所属させて頂いているのです。勿論、陛下の側室の一人である貴女の事は俺達メンフィル軍の全員にも周知済みですので。」

「そうだったの…………メンフィル軍に所属している貴方がリウイさんの側室の一人である私の事を敬うのは仕方ないとは思うけど、もう少し気軽な態度で接してもらってもいいかしら?一応、私とリウイさんの関係は世間の人達には秘密にしているし。”様”付けとかで呼ばれたりしたら、何事かと事情を知らない人達が思ってしまうわ。」

リィンの話を聞いて頷いた後苦笑しながら言い

「……わかりました。……それでは普通に年上の方と接する形の口調で話させてもらいます、セシルさん。」

「ええ、よろしくね。」

リィンの答えを聞いて微笑んだ。

「へえ……あの”英雄王”の側室の一人である事は未だに秘密にされているんだ?エリィのお姉さん―――”聖皇妃”の事は世間に周知済みなのに。」

2人の会話を聞いていたワジは意外そうな表情をしてロイド達に尋ね

「ああ……リウイ陛下の配慮のおかげだよ。もしセシル姉が陛下の側室の一人だって世間に周知されたら、セシル姉、今まで通りの仕事も出来なくなる可能性が出て来る上、陛下の弱みを握る為にセシル姉の事を狙う人達が出て来てもおかしくないからな……」

尋ねられたロイドは答えた後真剣な表情で言った。

「ちなみにさっきリィンは”あのパリエ家”と言ってたけど、やっぱり第一側室の家系はメンフィルではそんなに有名なのかしら?確かティナ様……だったかしら?その方がお義兄様の前第一側室にしてセシルさんの前世なんですよね?」

「ええ。…………私の前世――――ティナ・パリエがマーシルン家の長女にして最初の子供であるティアを産んだ時点で平民だったパリエ家が第一側室の家系として皇家と直接的な縁がある貴族として認められたのよ。……まあ、本人はそんな凄い身分は欲しくなかったのだけど、本来なら”庶子”であるティアを守る為や明るい未来を示してあげる為、そしてリウイさんの強い希望もあったから悩みぬいた末、仕方なく身分を受け取ったのよ。」

エリィの疑問を聞いたセシルは頷いた後苦笑しながら言い

「ちなみに現当主のティア様は母親であるティナ様の意向によって皇位継承権は早々に辞退しているんだ。まあ、それでも皇家の一員である事には間違いないから、親衛隊は設立されているし、最近ではセシルさんの親衛隊も設立されたんだ。」

リィンはセシルの説明を補足した。

「ええっ!?セ、セシル姉にメンフィル兵の親衛隊が……!?」

「た、確かに皇家の一員ならいてもおかしくはないですけど……」

リィンの説明を聞いたロイドは驚き、エリィは驚きの表情でロイドと共にセシルを見つめ

「フフ……私も必要ないって言ったのだけど、側室の一人になったからには設立する必要があるって押し切られちゃって…………」

見つめられたセシルは苦笑しながら答えた。

「も、もしかしてもう既にクロスベルにセシルさんの親衛隊の方がいるのですか!?」

セシルの言葉を聞いたノエルは真剣な表情で尋ね

「ううん。さすがにそれはしないように言っておいたから。……まあ、私がリウイさん達と一緒に暮らし始めたら、私の護衛として配属されるのでしょうけどね……」

尋ねられたセシルは苦笑しながら答え

「…………………………」

それを聞いたロイドは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「そう言えばずっと気になっていたのだけど、どうして今もクロスベルで看護婦なんてしているのかしら?普通、側室の一人になったら嫁いだ”王”の傍にいるのが通例でしょう?」

その時エルファティシアは疑問に思っていた事を口にしたが

「フフ、それは秘密♪………さてと……わたしの方も改めて自己紹介させてもらおうかしら。こほん……このウルスラ病院に勤める、看護師のセシル・ノイエスです。ふふ、私の可愛い弟のロイドを、どうかよろしくお願いしますね。」

セシルは答えを誤魔化した後改めて名乗った。



「セシル姉ってば……厳密には姉弟じゃないだろ?コホン、えっと……子供のころから何かとお世話になっている人なんだ。」

セシルの言葉を聞いたロイドは呆れた後ワジ達を見回して説明した。

「もう、ロイドったら照れちゃって。」

「て、照れてるわけじゃないって。」

「うーん、それにしても……ワジ君もノエルさんもとっても美人よねえ。ロイド、エリィさんと付き合っているとはいえ、次々と手を出して肝心のエリィさんに愛想を尽かされちゃ駄目よ?」

「……そうね。セシルさんの言う通りね。」

「な、なんでそうなるんだよ!?って、エリィもそこで何でセシル姉の言う事に頷くんだよ!?」

そして真剣な表情のセシルとジト目のエリィに見つめられたロイドは慌てた後指摘したが

「あら……”まだ”自覚していなかったの?」

「うっ…………」

すざましい威圧を纏った笑顔のエリィに微笑まれて言葉を無くし

(くかかかかっ!このままだと将来は尻に敷かれるぞ、ロイド!)

(フウ………この子の無意識に女性を惹きこむ性格だけは対処できないのよね……おかげでメヒーシャと将軍からよく苦情を言われるし……)

(……段々と姉に似てきているな……まあ、姉妹共々同類の存在を好きになったようなものだしな…………)

それを見ていたギレゼルは笑い、ルファディエルは溜息を吐き、メヒーシャは呆れた表情になっていた。

「フフ……ちなみにエリィさん、ロイドとの関係はどこまで進んだのかしら?結婚はいつするのかしら?」

「ええっ!?そ、それは……」

「ちょ、セシル姉……!」

そしてセシルに尋ねられたエリィは顔を真っ赤にし、セシルの言葉を聞いたロイドも顔を真っ赤にし

「はっ……!そうよね、私とした事が配慮が足りなかったわ。エリィさん、妊娠の傾向があったらすぐに私に相談して。私、病院の個室にエリィさんが入院できるよう、頑張って病院側と交渉して手配するから!2人とも、結婚式は子供が産まれてからにしましょうね♪」

「「セシルさん(姉)っ!!」」

さらにある事に気付いて真剣な表情で自分を見つめた後微笑んだセシルの言葉を聞いたエリィはロイドと共に顔を真っ赤にして大声で叫んだ。

「フフ、相変わらずの様子ね。」

「天然ぶりは相変わらず健在みたいだしな。やっぱりセシルさんはこうでなくっちゃ!」

その様子を見ていたエルファティシアは微笑み、ランディは嬉しそう表情でセシルを見つめていた。

「ツッコむ側の身にもなってくれ……」

「ハア……何で私まで……」

2人の言葉を聞いたロイドとエリィは疲れた表情で溜息を吐いた。

「ふふ……それにしても、そんなに長い間離れていないのに随分と懐かしい気がするわね。ちょうど私も休憩時間なの。よかったら一緒にお茶でもどうかしら?」

「それじゃあ、せっかくだし……みんな、お言葉に甘えさせてもらおうか。」

「はい、ご一緒させてください!」

その後ロイド達は看護師寮の食堂でセシルと共にお茶をし、現在の支援課の状況を説明した。



「……それじゃあ、ティオちゃんとセティちゃん達はもう少しの間帰ってこれないのね。」

「ああ、色々と忙しいみたいでさ。きっと今頃、レマン自治州や故郷のユイドラでがんばってるんじゃないかな。」

「そっかあ……それじゃ、会えるのが楽しみねえ。ふふ、帰ってきたら色々と土産話を聞かせてもらわないと。」

「はは……そうだね。ティオ達もきっと、セシル姉に会えたら喜ぶと思うよ。」

微笑みながら言ったセシルの言葉にロイドは笑顔で頷き

「へえ……」

「ふぅん……」

「なるほどな……」

話を聞いていたノエルやワジ、リィンはそれぞれ頷いていた。

「な、なんだよ3人とも。」

その様子を見たロイドは戸惑った様子で尋ね

「い、いやあ……噂には聞いてましたけど、本当に仲がいいんですね。」

「なかなか間に入れなくてちょっと妬けるねぇ。」

「陛下から話には聞いていたけど、セシルさんにかなり甘やかされているんだな……」

「あ、あのなあ……」

3人の言葉を聞いたロイドは呆れて溜息を吐き

「ちっ、コイツはこれだからよ~。普通、こんなお姉さんと子供の頃から知り合いってだけでもとんだラッキー野郎だっつのに。」

ランディは舌打ちをしてロイドを睨み

「ほんと、その通りよね……それが当然だと思ってたらいつかバチがあたるわよ。」

「うふっ♪ヴァイスハイトみたいに上手くやらないと、いつか本当に女性関係で酷い目にあうわよ♪」

ランディの言葉にエリィは頷いた後ジト目でロイドを見つめ、エルファティシアはからかいの表情でロイドを見つめた。

「い、意味わかんないから………それとエルファティシアさん、不穏な事を言わないくださいよ……」

エリィとエルファティシアの言葉を聞いたロイドは溜息を吐いて言った。

「ふふ……あ、そういえばつい話し込んじゃったけど……今日は何の用で病院に来たんだったかしら?」

「あ……そうだった……コホン、実は……セイランド教授っていう人から支援課に依頼が来てたんだ。」

「確か、薬学・神経科の後任の方が来られたんでしたね。」

「ええ、そうなの。ヨアヒム先生が得体のしれない薬を作っていた事が公表されて、病院は一時騒然としていたわ。教授達はしばらく、仕事の傍らアフターケアに奔走していたけど……最近になって、ようやく患者さんの信頼を取り戻せてきたの。」

「そりゃあ……大変だったッスね。」

「ふふ……おかげさまで何とかなったわね。あの事件の傷跡も癒えて来て、ようやくウルスラ病院は新しい一歩を踏み出したわ。その一環として、新しくレミフェリアから呼ばれたのがセイランド教授なの。」

「あの有名な医療機器メーカー、セイランド社の関係者……ですね?」

「ええ、創業者の親戚筋にあたるはずよ。女性の方なんだけど、雰囲気が凛としていてとってもかっこいいんだから。」

「おお、女医センセイッつか!こりゃあ期待大だぜェ!」

セシルの話を聞いたランディは興奮し

「ふ、雰囲気はともかく……なるほど、今度は身元もばっちり保証されてるわけだね。」

「フム、教授というからには、腕も確かなのかな?」

ロイドは頷いた後安心した表情になり、ワジは尋ねた。

「レミフェリアでも有名な薬学・神経科の研究者みたい。ついこの間も、重い病気で入院していたミハイル君の手術も見事に成功させたのよ。今は、シズクちゃんの視力を完全に戻す手術に向けて準備を進めているのよね。」

「シズクちゃんの……!」

「そうか……確かに凄い先生みたいだね。そのセイランド教授だけど……今、どこにいるかわかるかな?」

セシルの話を聞いたエリィは驚き、ロイドは頷いた後尋ねた。

「ええ、たいてい研究棟の研究室にこもってるわ。受付でセラさんに言えば、取り次いでもらえると思う。ふふ、せっかくだからそこまで一緒に行きましょう。」

「ああ、助かるよ。……それじゃあ行くとしようか。」

その後ロイド達はセシルと共に受付に向かった後受付に依頼者であるセイランド教授に面会を頼んだ。



「……はい………はい、そうです。……それでは、よろしくお願いします。セイランド教授にも確認がとれました。すぐに、研究棟の部屋に来るようにとのことです。」

通信を終えた受付は元の位置に戻ってロイド達に伝えた。

「ありがとう、セラさん。」

「助かります。」

「……それじゃあみんな。休憩もそろそろ終わるし、私はこれで失礼するわね。」

「ああ、色々ありがとう。」

「お世話になりました。」

「ううん、どういたしまして。それじゃ、これからも色々と大変だと思うけど……がんばってね、ロイド。」

「ああ、そっちもね。」

そしてセシルはロイド達から去って行った。

「……く~っ、常々憎たらしいやつだなお前は!『がんばってね、ロイド笙・』……だってよ、だってよ!」

「べ、別にハートマークはついてなかっただろ……」

セシルが去った後ランディに言われたロイドは溜息を吐いて言った。

「フフ、そんなことを言って少し残念なんじゃないのかい?噂の熱~い抱擁(ハグ)も今回は見られなかったみたいだし。」

「ああ、そういえば……」

「うふっ♪そういえばそんな話を聞いた事があったわね♪」

「えっ、そんなことをっ……!?」

「お、おいおい……下手したらリウイ陛下も嫉妬するぞ?」

そして静かな笑みを浮かべて言ったワジの言葉を聞いたエリィはある事を思い出し、エルファティシアはからかいの表情でロイドを見つめ、ノエルは驚き、リィンは冷や汗をかいてロイドを見つめた。

「ああ、もう!いいからさっさと教授のところに行こう!研究棟は病院の屋上から、薬学研究室は研究棟の4階!さあ、行くぞ!」

一方ロイドは無理やり話を終わらせた。

(やれやれ、勢いでごまかしちまってまあ。)

(ふふ、これだからからかい甲斐があるよね。)

(そうね♪)

その様子を見たランディとワジ、エルファティシアは小声で会話し

「……聞こえてるぞ、そこっ!」

ロイドは振り向いてランディ達を睨んで指摘した。



その後ロイド達は研究棟に向かい、依頼者がいる部屋に入った………… 
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