Blue Rose
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第十八話 新幹線の中でその二
「車のセールスをね、八条自動車の販売店にいて」
「あっ、八条自動車の」
「そうそう、そっちの広島の店にいるんだ」
「それで広島からですか」
「時々鹿児島の支店にも行ってるんだ」
「どうして広島から」
「いや、元々は本社にいたけれど」
八条自動車の販売部門のというのだ。
「そこからね」
「鹿児島支店にもいたことがあって」
「それで、なんですね」
「今も時々広島から行くことがあるんだよ」
「そうだったんですか」
「いや、時々でも行き来が楽だと」
それこそとだ、男は優花に笑ってこうも話した。
「有り難いね」
「やっぱりそうですよね」
「うん、行き来が楽に越したことはないよ」
「それも速かったら」
「余計にね、まあ鹿児島はね」
男は彼がこれから行くその場所のことをだ、優花に話をはじめた。
「面白い場所だよ、あそこもね」
「確か桜島があって」
「そうそう、いつも噴火していてね」
「しょちゅう噴火するんですよね」
「それで火山灰を出してそれを掃除しないと大変なんだ」
「何か迷惑そうですね」
「ははは、その掃除は確かに厄介だけれどね」
鹿児島は火山灰を入れる為の専用のビニール袋がある程だ、とにかく桜島とこの地は切っても切れない縁がある。
「あれが鹿児島のシンボルだしね」
「桜島が」
「その桜島のお陰で温泉もあるしね」
「あっ、温泉あるんですか」
「いい温泉が一杯ね」
「それいいですね」
「お風呂が好きだとね」
それこそというのだ。
「いいよ」
「僕もお風呂好きで」
「だったら一回行ってみるといいよ」
「そうですよね」
「それに食べものもいいんだ」
男は今度はこちらの話をした。
「薩摩芋とそれを使った料理ね」
「薩摩芋のソフトクリームとかもありますよね」
「うん、あるよ」
実際にという返事だった。
「ピンク色でね」
「それも美味しいんですよね」
「かなりね、アイスクリームもあるよ」
ソフトクリームだけでなくだ。
「そちらもね」
「何か食べたくなりますね」
「事実美味しいよ、それにラーメンとか豚肉とか」
「鹿児島ラーメンと黒豚ですね」
「こっちもいいしかるかんにきびなご、薩摩揚げ」
「それと焼酎ですね」
「そうそう、それは忘れたらいけない」
男は広島訛りの言葉で笑って応えた。
「鹿児島はね」
「そうですよね」
「飲むもすぐに酔ってね」
「焼酎って強いですからね」
「そうなんだよね、ただ君まだ学生さんだね」
ここでだ、男は優花の顔をじっと見て言った。
「高校生かい?まだ若いみたいだけれど」
「はい、そうです」
優花もその通りと答えた。
「一年です」
「そうか、やっぱりな」
男は優花の返答を聞いて納得した顔で頷いた。そして頷いてから優花に対してあらためてこう尋ねたのだった。
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