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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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ドキドキしてきました

 
前書き
勝手にFAIRYTAIL週間!!
暑くて外に出たくないため、部屋の中で小説を書くことにしたら進むや進む。なのでお盆休み中は毎日更新しようと思います。
シリル「暇なんだ」
レオン「暇すぎだろ」
ソフィア「遊びいきなよ」
う・・・うるさいなぁ(汗) 

 
「わぁ・・・すごい人だね」

ここは屋内魔法練習場の指導者待合室。そこの扉を少し開き中の様子を伺っている私は思わずため息を漏らします。
たくさんの生徒が一度に練習できるようにと広々と作られたその場所を埋め尽くさんばかりに集まってくる魔導士の卵たち。アスカちゃんくらいの子からシェリアぐらいの子まで、幅広く集合しているその光景はまさしく圧巻のひと言です。

「魔法学校の全生徒が集まるんだもん、これくらいはなっちゃうよ」

私の上からわずかに開いた隙間の景色を見るシェリア。緊張しまくりな私とは違い、彼女は全然動じた様子がありません。

「ドキドキしてきました」

胸に手を当て、自分の鼓動を確認してみます。普段はゆっくりと脈を刻んでいるそれは、今はその面影など一切なく、周りに聞こえているのではないかと言うほどバクバクしています。

「もう!!しっかりしなさい!!」
「まだ始まってもいないんだよ~」

緊張で何がなんだかわからなくなりつつある私に、足元からシャルルとセシリーが檄を飛ばします。そうは言っても、この緊張は簡単にはほぐれないよ。

「大丈夫ウェンディ!!ウェンディのありのままを見せればいいんだよ!!」

すると、静かに扉を閉めながらシェリアがそう言います。シェリアは緊張しないのかな?羨ましいなぁ。

「それで?どっちが先に話するの?」

無邪気なシェリアを羨ましそうに眺めていると、シャルルが肝心な質問をぶつけてきます。実は今回の講話の順番は、私たちが自由に決めていいということになりました。ただ、どちらがいいのか、私には正直わかりません。

「先に話しちゃった方がいいんじゃない~?」
「え?なんで?」

私が悩んで唸っていると、セシリーが足にしがみつきながらそう言います。

「だって先に言っちゃえば早くに緊張から解放されるよ~」

なるほど!!って納得しちゃいそうになったけど・・・

「でも最初に話すのは緊張するなぁ・・・」

後から話すのもプレッシャーがあるけど、先に話すのもそれはそれでプレッシャー。やっぱりこの依頼、やめておけばよかったかな?でもレオンは絶対来たがらないし、シリルとシェリアが二人っきりっていうのはなんだかやきもきしそうだし・・・

「シェリアが最後に締めた方が、みんなも嬉しいんじゃない?」

必死に自分を納得させている私にシャルルがアドバイスします。それもそっか、シェリアはみんなの憧れだし、砦を勤めた方がいいよね。

「じゃあ私が先に話すね!!」
「うん!!わかった!!」

ようやく決まった講話の順番。それと時を同じくして全生徒が屋内魔法練習場に集まったみたいです。

「シェリア、ウェンディさん、準備は大丈夫かい?」

そして、部屋の扉をノックして顔を覗かせる校長先生。とうとうこの時が来たんだと思うと、収まってきた緊張が再び胸の底から沸き上がってきました。

「いこっ!!ウェンディ!!」

そんな私に手を差し伸べる天空の神。その彼女の笑顔を見て、私も思わず笑顔になっていました。

「うん!!」

差し出された少女の手を掴み、部屋から出ていく私たち。私とシェリアの姿を見た瞬間、会場中から拍手が巻き起こりました。






















シリルside

「オギャア!!」

レオンが普通の高い高いをしたり、俺がミルクを飲ませていると、突然大きな泣き声をあげる赤ちゃん。不意に泣き出した赤ちゃんに、お守りをしている俺たちは思わず体をビクッとさせる。

「わっ!!また泣き出した!!」
「今度は何?」

先程から何度も泣いては対応してを繰り返している俺とレオン。一緒に子守りをしていたラウルは、大急ぎでミルクを買いに行かせたこともあり、疲れてその場に座り込んでしまっている。

「トイレか?」

食事は与えたので、もしかしてとレオンがそう言う。だが、それなら鼻のいい俺が気付かないわけがないから、おそらく違うと思う。

「ビエーーーー!!!」

そうこうしている間も泣き続ける赤ちゃん。俺は目に見えて慌ててるし、レオンもなぜこの子が泣いているのかわからず頭をかいている。

「あら?どうしたんですの?」

そんな俺たちの元に一人の救世主が現れる。猫耳のカチューシャをし、肌を大きく露出させた黒地の服を身に纏った、シェリアと同じ髪色の女性、シェリー・ブレンディさんその人である。

「シェリーさん!!助けて!!」
「なんでか泣き止まなくて」

通りがかりの彼女に事情を説明し、抱っこしていた赤ちゃんを渡します。受け取ったシェリーさんは、赤ちゃんを泣き止ませようとユサユサとしてみますが、一向に泣き止む気配がありません。

「もっかい投げるか?」
「それは絶対ダメェ!!」

最初のあの超高い高いをまたやろうと提案するレオン。しかし、あんなので泣き止むはずもないだろうし、仮に泣き止んだとすればそれは悪い意味でのこととしか思えないのだが・・・

「なんだ、そういうことですか」

俺がレオンの暴走を止めていると、シェリーさんが何かに気付き、赤ちゃんを縦に抱きます。

トントンッ

彼女はその赤ちゃんの背中を数回軽く叩くと、抱き抱えられていたその子は、ゲップをしてみせました。
そしてそれと同時に、泣き止んでいた彼女は静かになり、スヤスヤと目を閉じていきます。

「え?結局今のって・・・」
「なんだったの?」

なぜ泣き止み、眠りについたのかさっぱりな俺たちは顔を見合わせ肩をすくめる。赤ちゃんを起こさないようにとそっと彼女をこちらに手渡したシェリーさんが、説明をしてくれた。

「二人とも、ミルク飲ませた後ゲップさせなかったんないですの?」
「ゲップ?」
「させる?」

彼女が何を言っているのかさっぱりな俺たちは、ただ次に続く言葉を待つしかない。シェリーさんはため息をついた後、話の続きを話し始める。

「赤ちゃんはまだゲップをすることが難しいから、背中を叩いてそれを促さなければならないんですわ。それを忘れると、苦しくなって泣き出してしまうんですよ」

その説明でようやく理解した俺たちは納得してうなずく。そういうことだったのか、言われてみると納得だな。

「次からは気をつけるんですのよ?」
「「は~い」」

シェリーさんの指導に手を挙げて返事をする。赤ちゃんのお守りなんか初めてだから、知らないことばかりだ。

「そういえば、なんでお守りの依頼なんか引き受けたんですの?」

俺の腕の中にいる赤ちゃんの頬をつつきながら、素朴な疑問を投げ掛けるシェリーさん。

「なんで選んだの?」

俺はその質問を受け、隣にいる金髪の少年に問いかける。だが・・・

「え?なんで俺に聞くの?」
「え?」
「え?」

両者ともに相手の顔を見て?マークを浮かべている。まさかこの依頼選んだのレオンじゃないのか?でも俺もこの依頼を受けた記憶なんかないんだが・・・

「ラウルが選んだの?」

一緒に赤ちゃんのお守りをしていたラウルに聞いてみる。彼はミルク探しがよほど疲れたらしく、口では答えずに首をフルフルと横に振って否定する。

「まさか・・・適当にこれ選んだんですの?」
「そうみたいだね」
「その可能性が高いです」

信じられないといった表情で俺たち三人の顔を見るシェリーさん。それには俺も同感だ。だってウェンディやシェリアがいてくれるならまだしも、このメンツでお守りなんか、うまく行く可能性の方が低いんじゃないだろうか?

「私が変わりましょうか?」

心配してなのか、シェリーさんがそんな提案をしてくれる。確かにありがたい提案ではある。だけど・・・

「いや、大丈夫です!!」
「俺たちでなんとかするんで」

引き受けたからには最後までちゃんとやりたい。それに、シェリーさんにそんな目で見られたのはなんかムカつくから、ちゃんと依頼を完遂してびっくりさせてやりたいと思った。

「それならいいんですけど・・・」

俺たちの説得が通じたらしく、ギルドへと戻っていくシェリーさん。

「オギャア!!」
「わぁ!!また泣き出した!!」
「今度は何?」
「赤ちゃん泣きすぎぃ」

彼女が立ち去ったと同時に泣き叫ぶ赤ちゃん。今度はなんだと俺とレオン、そして復活したラウルで原因解明を行っている。

「大丈夫なんですの?あれ」
「やると言ったからには、任せるしかないだろ」
「オオーン」
「手遅れになる前に止めた方がいいと思うがな」

そんな俺たちの様子をギルドの入り口から見守っていたシェリーさん、リオンさん、トビーさん、ユウカさんはバタバタしているその姿をハラハラしながら見ていたのだった。





















ウェンディside

「以上です!!ありがとうございました!!」

ぺこりと一礼してステージから降りていく。その私に向かって、たくさんの温かい拍手が送られ、顔を赤くさせながら壇上へと降りていきます。

「お疲れ様」
「うん!!シェリアも頑張ってね」
「もちろん!!」

入れ替わるように壇上へと駆けるように上がっていくシェリアを見送ります。彼女は全然緊張している様子もなく、むしろみんなの前で話すのが楽し――――

ガッ

「あぅ!!」

楽しそうだと思っていたのも束の間、彼女はステージに登りきる段差で足が引っ掛かり転倒してしまいます。それを見た会場は、心配の声と失笑が聞こえてきました。

「大丈夫?シェリア」
「えへへ、またやっちゃった」

彼女の元まで戻っていき、手を貸す私。シェリアはその手を握り立ち上がると、照れ隠しなのか舌を出して笑っていました。
天神はスカートの裾を直すと講話のためにステージに再度登っていきます。今度は無事にみんなの前についたシェリアを見てひと安心した後、階段を降りてシャルルとセシリーの元へといきます。

ガッ

「きゃう!!」

降りてる際、足がもつれてしまい倒れる私。一番最後の段だったこともありケガはしなかったけど、みんな見ているところで転んだからすごく恥ずかしいです・・・

「あんた、大丈夫?」
「痛くない~?」

転んだ私の元にやってきたのはシャルルとセシリー。心配する彼女たちに「大丈夫」と答えながら、立ちあがり、生徒たちの横にある椅子へと座ります。

「こんにちわ!!シェリア・ブレンディです!!」

私が席についたタイミングでシェリアが自己紹介を始めます。カミカミだった私と違って堂々とした雰囲気で話すシェリアの姿は大変凛々しいです。最初に転ばなければ、もっとかっこ良かったと思います。

「あたしが大切だと思うのは、やっぱり“愛”だと思うの!!」

両手を大きく広げて彼女の口癖である愛を強調するシェリア。彼女のいとこのシェリーさんも愛をよく強調するけど、ブレンディ家って愛が好きな血筋なのかな?それとも二人が特殊なだけなのかな?

「お疲れ様、ウェンディさん」

壇上の少女に視線を向け、耳を傾けていると、横からお茶が差し出されます。

「校長先生」

校長先生が出してくれたお茶を小さく会釈して受け取ります。彼は私の隣に座ると、もう一本持っていたお茶を一口口に含みます。

「いいお話だったよ、ウェンディさん」
「あ・・・ありがとうございます」

誉められて思わずハニカミながら一礼します。だけど、緊張しすぎてて何を話していたのか、あまり覚えてないんですよね。

「ウェンディさんの仲間への強い想いが、ひしひしと伝わってきましたよ」

そう言われて、何を話していたのか少しだけ思い出してきました。
私が大事だと思っているのは、ギルドの仲間や大切な人。ナツさんやエルザさんに影響されたのか、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってから仲間を大切にするという考えがすごく増したと思います。
私もシリルも、そのおかげで強くなれたと思ってますし、精神的にも成長できたと思います。

「そういえば、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)にはシェリアたちが誘ったのかな?」
「あ!!はい!!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)が解散したというのは色んな人に広まっているみたいです。フィオーレ一になったギルドですし、みんな気にしている人が大勢いたみたい。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の件は残念だったが、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)もいいギルドだ。シェリアやレオンと切磋琢磨していってもらいたいのぅ」
「はい!!頑張ります!!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはあまり同世代の人がいませんでした。私とシリル、それにロメオくんの三人だけ。カナさんはそれを気にして自分が小さい頃にいた教会に連れていってくれたけど、蛇姫の鱗(ここ)にはシェリアとレオンの他にも、彼女たちのお友だちがたくさんいます。それを踏まえて、校長先生はそう言ってくれたんだと思いました。

「以上です!!ご静聴ありがとうございました!!」

私と校長先生がお話していると、シェリアの講話が終わったらしく、彼女は壇上でペコリと頭を下げる。それと同時に、一斉に大きな拍手が会場中に響き渡る。

「さて、それじゃあ行こうかね」
「え?」

みんなと一緒になって拍手をしていると、不意に校長先生に壇上に上がるように指示されます。私はよくわからないまま、言われるがままにステージへと上りました。

「今日は蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のシェリアとウェンディにお話をしてもらったわけですが、みんなから何か質問はないかな?」
「!!」

シェリアと並ぶように立っている私たちを指さしながら全生徒に校長先生がそう言います。予想していなかった展開に、心臓がドキッと大きく跳ねたのがわかりました。

「「「「「はいっ!!」」」」」

先生が言い終わると、たくさんの生徒たちが肘をピンッと伸ばし手を挙げます。想像を遥かに上回る人数に、心拍数がさらに上がっていきます。

「じゃあ、はいそこ」

全員を見回した上で、一番前に座っている生徒を指名する校長先生。指された生徒は小さくガッツポーズした後、その場に立ち上がります。

「二人はどっちの方が強いんですか?」

まだまだ幼い感じの生徒さん。たぶん一番下の学年の子なのかな?その子の質問は、なんとも子供らしい質問でした。

「シェリアの方が強いですよ。大魔闘演武では引き分けでしたけど、時間制限がなかったら私なんかやられちゃってましたよ」

あの時は勝ちたい一心でシェリアに挑んでいたけど、魔力もダメージも彼女には遠く及びませんでした。私が自分の考えを述べると、それを受けてシェリアが口を開きます。

「ううん。あたしたちは同じくらいかな」

私の頭を撫でながら笑顔でそう言う少女を見て、首を傾げます。シェリアの方が絶対強いと思うけど、なんで同じくらいだと思うのかな?

「魔力とか技術とかはあたしの方が上だけど、ウェンディは仲間想いだからね。その考えは、自分の力を何倍にも跳ね上がらせてくれるよ」

さっきの私の講話ともリンクさせて話してくれるシェリア。その機転のよさは、本当に彼女らしいと思いました。

「強くなるにはどんなことをすればいいですか!!」

続いての質問。次は真ん中くらいに座っている子からの質問だから、たぶん5、6年生くらいかな?元気な女の子がそう言いました。

「あたしは戦うのが好きだから、ギルドのみんなと手合わせしたりしてるよ」

実践は大事だからね、と付け加えるシェリア。すると、その答えに対してさらに質問がぶつけられました。

「もしかしてジュラさんやリオンさんとも戦ってるんですか?」
「うん!!ジュラさんは手加減してるけど、リオンとは本気でやってるよ。勝ったことはないけどね」

今は評議院再生のためにギルドを抜けているジュラさんと、エースであるリオンさん。シェリアは彼らとも手合わせしているらしいです。だからあそこまで戦い慣れているんだ。

「もしかして・・・レオンくんとも?」

恐る恐るといった感じで手を挙げる生徒。一番後ろの生徒だったから、レオンと同い年って話の学年かな?

「レオンは右手しか使わないようにしてもらってるよ。熱くなると足とか勝手に出しちゃうけどね」

人とは思えない力を持っているレオン。彼には一応ハンデをつけてもらっているらしいけど、彼の雑な性格からしてあまり意味はないみたいですね。

「え?レオンくん右利きなのに右で戦ってるんですか?」

さっき質問した子がきょとんとした顔でそう言います。あれ?レオンって左利きじゃないのかな?シリルからはそう聞いてたんだけど・・・

「レオンは右手ケガしないように左手で戦うからね。右だと力加減も上手にできるから安心だよ」

言われてみると、レオンは右手でフォークやスプーンを持っていた気がします。戦う時に左だったのは、意識してのことだったんですね。あれ?それって利き手だともっと強くなるってことかな?考えただけで怖くなってきました。

「はい!!ウェンディさんにも教えてほしいです!!」
「!!」

そして、やはりというべきでしょうか、私にも話題が振られてきました。強くなるためにするべきことか・・・

「私は、自分より強い人をよく見ることだと思います」

そう言うと、聞いていたみんなは意味が分からなかったのか、変な空気が流れます。それを見て慌てそうになる気持ちを深呼吸で落ち着けます。

「えっと・・・私が最初に入っていたギルドには強い人がいなくて・・・シリル・・・友達もみんなと一緒にいるのが楽しいって感じで、あまり戦うのは得意じゃありませんでした。
だけど、妖精の尻尾(フェアリーテイル)には強い人がたくさんいて、みんなと一緒にいるには、強くならなくちゃと思って・・・
ナツさんやエルザさんはすごく強くて、シリルもみんなの姿を見てどんどん成長してて、私も負けてられないなって、みんなと同じくらい強くなりたいなって思ったんです」

最初は治癒魔法と付加魔法しか使えなかった。だけど、ギルドを守るために技を覚え、同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の人の技を見て、真似して・・・

「強い人を見ると自分もそうなりたいと思えますし、努力もできると思います。だから、強い人をよく見ることが大切だと思ったんです」

私だけだったらここまで強くはなれなかった。フェイスを破壊することも、シャルルを守ることもできなかった。みんなと一緒にいれたことが、私にとって最高の財産なんです。


パチパチパチパチパチパチ

私が話し終えると、一斉に拍手が送られます。それを聞いて、安心した私はホッと一息つきました。

「シェリア、ウェンディ、ありがとうございました!!みんなも二人のように、逞しい魔導士になれるように頑張りましょう」

大きな返事で答える魔法学校の生徒たち。彼らの拍手に包まれながら、私たちは会場を後にしました。























「ただいまぁ!!」
「ただいま帰りました」

退場した後、校長先生から依頼料をいただいて帰ろうとしたところ、部屋から出た瞬間外で待っていたみんなに捕まり、握手やサインを求められました。サインなんかしたことなかったから、どう書けばいいのかわからず、すごく手間取っちゃって、ギルドに報告に来るのが遅くなってしまいました。

「あ・・・おかえり」
「お・・・遅かったね・・・」

ギルドに着くと真っ先に迎えてくれた・・・というか、入り口付近のテーブルで突っ伏していた二人の少年が顔をあげます。二人ともすごく疲れた顔してるけど、どうしたのかな?

「あんたたち、どうしたの?」
「顔死んでるよ~」
「うん・・・なんか疲れちゃって・・・」

変身する気力もなく、猫の姿でソファに倒れていたラウルにシャルルとセシリーが声をかけています。疲労しすぎじゃないかな?私たちがいない間にどんなことしてたんだろ。

「おっ、戻ったか、シェリア、ウェンディ」

私たちが心配していると、奥からリオンさんが姿を現しました。彼はいつも通りだし、疲れているのはシリルとレオンだけみたいですね。

「どうだった、学校は」
「全然変わってなかったよ」
「大きくてびっくりしました」

彼の質問に嬉々として答える私たち。すると、その後ろで疲労感満載だった少年の一人が勢いよく立ち上がります。

「そうだ!!ウェンディは何話したの?」

疲れなどどこかに吹き飛んだらしく、興味津々といった様子で私の方を見ているシリル。その瞳は学校の生徒たちを思わせるほどキラキラしていました。

「内緒」
「えぇ!?なんで!?」

びっくりした様子で詰め寄ってくる水竜。よほど興味があるらしく、逃げられないようにと両手を掴む彼は、びっくりするほど顔を近づけてきます。

「ねぇ、気になるから教えて」
「シリルなら同じことを話しただろうし、言わなくてもわかるよ」

長い睫毛の目をパチパチさせてきょとんとしているシリル。私が話したことは、彼から学んだこともたくさんありました。突然言われると思い付かないかもしれないけど、その時になれば彼は同じことを話すはず。だから、私はあえて教えません。

「ねぇってば!!」
「フフッ。ダ~メ」

そう言うとガックリと項垂れるシリル。そんな彼の頭を撫でながら、私も彼に並べるくらい強くならなきゃなと決意を新たにしました。














第三者side

ウェンディに話した内容を教えてもらえず膨れているシリル。彼女たちの後ろでは、天神が氷神に話しかけていた。

「レオンはあたしが何話したか気にならないの?」
「どうせ“愛”がどうのこうのっていったんでしょ?」
「えぇ!?なんでわかったの!?」
「やっぱりか」

予想通りだったため、興味の欠片もないといった表情のレオン。興味津々の水竜を焦らす天竜と、興味ゼロの氷神の意識を引こうとする天神。幼い彼らのやり取りを眺めていたギルドの魔導士たちは、楽しそうな彼らに笑みを浮かべていた。







 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ところどころ文章が思い付かず、誤った使い方をしているかも・・・その時は笑ってごまかしてね♪
次はシリルとウェンディにラブラブしてもらおうかと考えています。さて、うまくできるかな? 
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