ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜
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第五十七話 幕間2
前書き
今回は『影響』についての(何度目かの)おさらい+新情報と、久々にあの人が登場します。
後、これからの事を考えると投稿する暇が少なくなるので今のうちに更新ラッシュを行います。
「よくわからないなぁ……」
グランバニア城の自室で私は一人、そう呟いた。
今私は『影響』についてをノートに纏めてそれから自分なりの考察を展開していこうと思っていたけど、これが見事に行き詰まった。
何しろ私は『影響』について基本的な説明と、この世界で経験した事でぐらいしか知らない。だから、ヒントが少なすぎて十分に考える事が出来ない。
テストの問題を必死に考えているけど、でも勉強が足りなくて答えがでないような状況だ。
「……まずは『影響』についてわかっていることを見直すか」
ノートを捲り、『影響』についてを纏めたページを開いた。
『影響』についてわかっている事。
1 『影響』は本来死ぬはずがなかった私が交通事故で死んだ結果運命が狂い、私が元々いた世界を含む様々な世界に生じた歪み。
2 『影響』は私しか消せない。『影響』を消したら私を殺した神を見つけることもできるし私の運命自体も元に戻るから、元の世界に帰ることもできる。
3 『影響』を消す期限は私の寿命が尽きるまで。でもこの世界で寿命以外で死ぬと私は元の世界に帰れない。
4 『影響』は、(このドラクエ5の世界では)イベントの変化、敵が強化される、本来ないはずの装備品が追加される、本来いないはずの人が現れる。
主にこの4つが『影響』についてわかっていることだけど、肝心の『影響』を消す方法や神が何の為に交通事故を起こしたのかという事はいくら考えてもさっぱりわからなかった。
小池さんがサポートしてくれるという話だったけど、小池さんはラインハットのニセ太后事件の時以来私の所には来ていない。
(サポートするって言うならちゃんとサポートしなさいよあの死神)
心の中で悪態をついてから、私はノートを閉じた。
悔しいけどこれ以上は考えてもわからない。だからしばらくの間『影響』の事は忘れて光の教団との戦いに備えよう。
あのデモンズタワーでの戦いの後、私はマーリンに魔法の使い方を教えてもらって再び魔法の力を習得した。
特典の能力とは違って覚えられる魔法はドラクエ5のものだけだったし、ドラクエ5の魔法にしたって使えなくなったり覚えられなくなったものはあるけどそれでも私にとっては十分だった。
むしろ今までが恵まれすぎてたと言える。
また、魔法だけじゃなく武器での戦いにも力を入れる事にした。
もし何かあって再び魔法が使えなくなった時でも戦えるようになる為に、鞭での戦い方を何回も(実戦で)練習したり今まで使ってこなかった鞭以外の武器での訓練もするようになった。
ふと時計を見ると時間は午後1時半を指していた。
この後は時間が空いているし、『影響』の事での気晴らしも兼ねて訓練でもするか。
日本にいた頃はインドアだったのにすっかりアウトドアになった自分を変わったなと思いつつ、グリンガムの鞭と他に幾つか武器を持って部屋を出る。
そのまま廊下を歩くと、前から兵士さんが歩いてきた。
「今からお出掛けですか?」
はい、そうですと言おうとしたけど、その後に兵士さんは続けてある言葉を言った。
「小宮山さん」
「……小池さんですか。お久しぶりです」
噂をすればじゃないけど、まさか小池さんの事を考えた直後に本人と出くわすとは。
「あのラインハットでの時以来来てくれませんでしたけど、何でですか?」
「私も色々多忙だったんですよ。ですから小宮山さんの事について構う暇が殆ど無くてですね。ようやく仕事が落ち着いてこの世界に来れたというわけです」
多忙で3年も待たせるなんてどうにかしてると思ったけど、神の多忙と人間の多忙は違うんだなと割り切る事にして話を進めた。
「小池さん、『影響』の事について話があるんですが」
「ええ、私もその事について話があります。ですがその前に人気のないところに移動しましょう。どこか人気の無い所はありますか?」
「それでしたら私の部屋があるので、そこで話をしましょう」
「わかりました」
小池さんを部屋に案内し、部屋の鍵を閉めると小池さんに向き合った。
「では最初にミレイさんからどうぞ」
まず何から聞こうかと考え、色々思い浮かんだけどやっぱり最初に聞くべき事はあの事だった。
「もし『影響』が消えた場合、それによって起きた事、例えば本来いるはずの無い人がいるとかーー」
「ーーそれは貴女のご友人のデボラの事でいいですね?」
直ぐに当てられてしまった。
多忙だからと言っていたけど、私の前に姿を見せられなくても私が何をしていたかどうかをわかる程度の余裕はあったらしい。
「そのデボラの事ですけどやっぱり『影響』が消えると彼女も消えてしまうんでしょうか?」
小池さんが「いいえ」と言ってくれるのを祈っていたけど小池さんの口から出た言葉は。
「そうですね。『影響』が消えるという事は『影響』によって起きた事全てが消えるという事ですからきっと彼女も……」
それを聞いた時、私は思わず自分の手の甲が白くなるほど強く拳を握っていた。
「デボラを消さ無い方法はないんですか?」
震える声で聞いた。
何も私が友人を失うからという事だけじゃ無い。
『影響』でデボラが消えるということは、デボラという人間の人生そのものがなかったことになる。つまりデボラは消えても、誰にも覚えてもらえ無いのだ。妹のフローラにも父親のルドマンさんにも、誰にも。
……こんなに悲しいことはない。
私は前以上に元凶の神に怒りを抱いた。
「ですが、安心してください。彼女が消え無い方法は無いわけでは無いですよ」
……えっ!?
「本当ですか!?」
思わず大声を出して小池さんに詰め寄った。
「え、ええ。正確には『影響』が消えた時点で『影響』発生前の世界に戻りますが、『影響』によって改変された世界はパラレルワールドとして残るというわけです」
少しわかりづらかったけど、有名な青い猫型ロボットの映画に置き換えて考えるとわかりやすかった。
あの映画では主人公が魔法のある世界から元の世界に戻そうとしたけど、そうなると魔法の世界の方はパラレルワールドとして残る……という話だった。
『影響』もそういう感じだろう。
取り敢えず、デボラの事が片付いてホッとした……ってちょっと待てよ。
「小池さん」
「はい、なんでしょうか」
「何でそういう事を知っているんですか?」
「それは、前にも『影響』が発生した事があったからです。『影響』が消えた時に改変された世界がパラレルワールドとして残ったのを観測しました」
「一回『影響』が発生した事があるなら、『影響』を消す方法もわかるんじゃないですか?」
私がそれを聞くと、小池さんは困ったような顔をした。
「それは…………、『影響』を消す方法が毎回変わるからです。転生者達が『影響』を消すとしても彼らはそれぞれ別の世界に転生していますし、『影響』によってどんな形で世界に歪みが生じるかで自ずと変わってきてしまうわけです。ですから過去の『影響』の事例を聞いたところであまり役には立たないと思います」
小池さんの話はその通りだったと思ったけど、でも役に立たないからって何にも情報を与えないというのはどうかと思った。
だって少なくとも『これは違う』という確証を得る事が出来るんだから。
「では、そろそろこの辺で失礼します。頑張ってくださいね」
「ちょっと待って下さ……」
私が言い終わる前に小池さんの姿は消えてしまった。 きっと今頃はあの黒一色の空間にいるはずだ。
「本当に小池さんは私のサポートをする気があるんだろうか……?」
小池さんが久々に来た時は、とても期待したけどそれに反して得られた情報は少なかった。デボラが消えない(正確には少し違うけど)事は良かったけど、神についての手掛かりとかを得られなかったのは残念だった。
さて、わかった事をノートに纏めてから訓練に行くか。
私はノートを開き、情報を書き込み始めた。
*
どことも知れぬ場所で元凶は薄く笑んでいた。
元々彼の目的は暇潰しだったのだ。
無限の時間に存在する元凶にとっては、世界も『影響』も小宮山ミレイもゲームのボードであり、ルールであり、駒でしかない。
だが小宮山ミレイを駒としてゲームは思いの外楽しめる事になった。
特典の力が奪われるというイレギュラーな事態もあったし、何よりも所詮いいように弄ばれるだけの少女の姿に笑いが止まらなかった。
元の世界に帰るためにも、自分が今いる世界の大切な人のためにも戦おうとする意思。
どんな絶望があっても乗り越えようと固めた決意。
しかし彼女は気づいてはいない。
自分がやっていることは元凶の暇潰しであり、遊戯であり、茶番である事を。
小池の無能さもまた役に立った。お陰で彼女は真相から遠ざかった。
自分を殺したのが誰なのか、『影響』を消すにはどうすればいいのか。
「ーー精々楽しませてくれ」
元凶は一人そう呟いた。
彼の声は黒一色の空間に吸い込まれ、静かに消えてゆく。
「でないと折角の暇潰しがつまらないものになるからな」
後書き
ついに元凶が登場しました。
彼の目的は暇潰しという事ですね。
当初こそは『影響』を利用して世界をどうたらこうたらと考えていたのですが、扱いにくいと感じたのでボツにしました。
それで色々考えた結果暇潰しということになりました。
後ミレイですが、彼女はなんだかんだで魔法を再習得しました。
しかし特典能力があった頃と比べると、結構弱体化してます。
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