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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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リオンvs.レオン

 
前書き
明日からお盆休みだぁ!!ヤッホー!!
シリル「テンション高ッ」
レオン「うるさいね」
何言ってる!!騒げる時に騒がないとリフレッシュできないぞ!!
シリル「じゃあ騒ぐ予定はあるの?」
・・・ない
「「おい!!」」 

 
蛇姫の鱗(ラミアスケイル)へ加入した次の日、このギルドでの初めて仕事を何しようかと楽しみにギルドに行くと、俺たちは入った瞬間戦慄した。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ギルドの中央で睨み合う金髪の少年と銀髪の青年。彼らの周囲には誰も立ち入ろうとせず、離れた場所から彼らの様子を見守っている。

「レオン・・・お前は自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「リオンくんこそ・・・ちゃんと考えていってるの?」

わずかにでも音を立てた瞬間、それを合図に戦闘を初めてしまうのではないかというほどの殺気を放つ二人。なぜ彼らがこのようになっているのか、たった今ギルドに来たばかりの俺たちにはわかるはずもなかった。






















遡ること数分前・・・

「いやぁ、疲れたねぇ」

先頭でシェリアが大きく背伸びをする。その後ろにいるのは、俺、ウェンディ、シャルル、セシリーのお決まりのメンバー。

「ごめんね、シェリア」
「引っ越しの手伝いしてもらっちゃって」

現在の時刻は正午前。なぜこんな時間に俺たちは街の中を歩いているのかと言うと、今日は朝から引っ越しの荷ほどきをしていたからだ。
マーガレットの街で住む場所を探そうとしていた俺たちだったけど、シェリアとレオンが「部屋いっぱい余ってるから」と言うことで、彼女たちの家に居候することになった。

「ううん!!全然大丈夫だよ!!」

住む場所を提供してもらった上に引っ越しの手伝いまでさせてしまい申し訳なく思っていると、シェリアは気にした様子もなくそう言う。

「それにしても、シェリアたちの部屋広いわね」
「ルーシィさんの部屋より全然大きかったよ~!!」

一番後ろをチョコチョコとついてきているシャルルとセシリーがそう感想を述べる。シェリアたちの住んでいる家は三階建てのアパートなのだが、一フロアに一軒ずつ住民が住んでいるのである。
シェリアとレオンは三階に住んでいるが、一フロア分もあるので部屋数もあるしそれぞれの部屋もなかなか広い。俺たちが入っても、普通に生活できるほどの広さなのである。

「リオンがあの部屋取ってくれてね、あの広さで10万J(ジュエル)だよ!!」
「「「「えぇ!?」」」」

部屋の値段を聞いて思わず驚愕する。俺がマグノリアで住んでた部屋より遥かにいい部屋なのに、値段が2万J(ジュエル)しか変わらないなんて・・・

「騙されてたのかな?」

土地の値段にもよるだろうけど、なんだか損をしていた気がする。まぁ、別段不満があったわけではないからいいんだけど。

「それにしてもレオン・・・途中で逃げるなんて」

俺が前のアパートの家賃のことで悩んでいると、シェリアが突然怒り始める。その理由は、彼女と一緒に住んでいる少年にあった。

「仕方ないよ、シェリア」
「リオンさんに呼ばれたら行かなきゃいけないよね」

ただ、今回彼が引っ越しの手伝いから抜けたのにもちゃんと理由がある。それは、急用が入ったらしく、リオンさんからすぐにギルドに来いと呼ばれたからである。それなら仕方ないと想うのだが、シェリアはまだ納得できていないようである。

「でもラウルまで連れていくことないじゃん?あの二人だとサボってそうな気がするんだよねぇ」
「「「「あ~」」」」

彼女にそう言われ、納得してしまう。レオンとラウルはずる賢いところがありそうだし、リオンさんから呼ばれたってウソついて逃げ出すなんてやりかねない気がする。

「別にいいんじゃない?あの子たちらしくて」
「僕もそう思うよ~」

シャルルとセシリーは気にしている様子は一切ない。でも、シェリアはせっかく俺たちが来たのにと思ってくれているようで、少し怒っているみたいだった。

「これでギルドにいなかったら夕飯なしだね」
「それされたらレオン死んじゃうんじゃない?」

ギルドの扉を開く前に恐ろしいことをいう赤紫髪の少女。彼女は幼なじみである少年の弱点を知っている。レオンは大食いなため、一食抜かれただけでも大ダメージなのではないだろうか?
ただ、服の中にたくさん食べ物を入れてるようだし、問題ないといえば問題ないかもだけど。

ガチャッ

そんなことを話しながらギルドへ入った瞬間、俺たちは今まで話していたことなど吹き飛んでしまった。
なぜなら、リオンさんとレオンが中央で殺気を放ちながら睨み合っているのだから。

「レオン・・・お前は自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「リオンくんこそ・・・ちゃんと考えて言ってるの?」

彼らから大きく距離を取る蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の面々・・・その中の一人、オレンジ色の髪をした少年のところに彼らを刺激しないように音を立てずに歩いていく。

「ラウル、これどうしたの?」

後ろから肩を叩きレオンの相棒であるラウルに声をかける。彼は俺たちがやって来たことにすぐに気付き、一触即発の氷の魔導士たちから視線を外さないようにしつつ、小声で話し始める。

「リオンさんがね、レオンにやってほしいって依頼があるから呼び出したんだけど・・・それがレオンがやりたくないらしくて・・・」

どうやら先程レオンが呼ばれたといって家を出たのは本当だったらしい。でも呼び出してまでお願いするってことは、相当緊急の依頼なのかな?

「それって緊急の依頼なの?」
「ううん。明日だけのちょっとした依頼だよ」

ウェンディも同じことを考えたらしく確認するが、どうも違うらしい。だったらなぜ今日呼び出したのか気になるな。

「どんな依頼だったの?」
「それによって状況が変わるよね~」

レオンがリオンさんとケンカしてでもやりたくない仕事・・・果たしてどのようなものなのか、非常に気になるね。

「ラウは見てないよ。リオンさんが二人で話したいからって言うから、引っ越しの手伝いに戻ろうとしたんだけど・・・」
「こんな風になったから戻ってこれなくなったんだ」
「うん」

依頼の内容も不明。しかもその依頼書は今はリオンさんの手にあるみたいだ。彼はその紙を目の前のいとこに見せると怒声をあげる。

「イヤだやりたくないなどとワガママが許されると思うな!!これはお前がやるべきことなんだ!!」
「ふざけんなよ!!俺じゃなくリオンくんの方が適任じゃないか!!」
「なんだと!?」

珍しく冷静さを欠いているリオンさんと普段の飄々とした佇まいなど微塵も感じられないレオン。彼らは平行線を辿る言い争いを経て、ある一つの考えに及んでいた。

「レオン・・・どうやらお前には一度お灸を据えなければならないようだな」
「俺がリオンくんに負けると思ってるの?」

次第に魔力を高めていく二人のバスティア。二人とも、口でわからないのならと実力行使に出ようとしていた。

「え・・・あの・・・二人とも?」
「ちょっと!!落ち着きなよ!!」

彼らの魔力によりギルド全体の温度が次第に下がっていく。危険を感じたウェンディとシェリアがそう叫ぶが、二人とも耳に届いていないのか、高まる魔力を押さえようとしない。

「あんたたち!!暴れるなら外でやりな!!」
「ギルド壊れんだろ!!」
「キレんなよ」

オババ様やトビーさん、ユウカさんも止めようとするが二人は戦う意志を引っ込めようとはしない。

「「ハアアアアアアアア!!」」

己の持てる魔力を高めきったレオンとリオン。二人は拳を強く握りしめ、それを相手めがけて振り翳す。

「「じゃんけんポンッ!!」」

掛け声と共に握り締めた拳が相手の拳の前で止まる。両者の手はグーのまま・・・って・・・え?

「やるな、レオン」
「リオンくんこそ」

あいこだからなのか、一度姿勢を崩し互いを誉め合うリオンさんとレオン。しかし、彼らのその行動に周囲のものは目を点にしている。

「あの・・・え!?」
「じゃ・・・じゃんけん・・・なの・・・?」
「ならなんで魔力高めたの!?」
「意味わかんないわ・・・」
「バカなんじゃないの~!?」

てっきりバトルをし合うのだと思い心配していた俺たち。なのに、その予想を裏切られたことと、無駄に魔力を高めていたことに突っ込む。彼らを昔から知っている蛇姫の鱗(ラミアスケイル)の皆さんでさえも、彼らの行動にズッコケていた。

「あいこでしょ!!」

しかし、そんなことなど気にすることなくじゃんけんを再開する二人。二人ともいとこだからなのか出す手出す手が同じものばかりでなかなか決着がつかない。そして、五分後・・・

「「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・」」

両膝に手をつき呼吸を乱す金髪の少年と銀髪の青年。たかがじゃんけんなのに、何この盛り上がりよう・・・

「次こそ決着をつけてやる」
「来い!!」

相手を見据え、気合いを入れ直す。だからなんでじゃんけんでそんなに熱いバトル感出してるんだよ!?ここから見始めた人何してたのかわかんないよ絶対!!

「「じゃんけんポンッ!!」」

何度目かもわからなくなってきたじゃんけん。その手はようやく二人とも別々の手を出した。レオンがグー、リオンさんがチョキ。レオンの勝利でこのおかしな戦いも終了!!かと思ったら・・・

「ほうら凍れ!!」

人差し指を立て右方向を差すレオンと上を見上げるリオンさん。ここまできてようやく気付いた。このじゃんけん・・・あっち向いてホイッだったのか・・・

「「じゃんけんポンッ!!」」
「お前が凍れ!!」
「「じゃんけんポンッ!!」」
「そっちが凍れ!!」

常人では捉えられないほどの速度で繰り返されるあっち向いてホイッ。ウェンディやシェリアはあまりの高速勝負に驚き見入っているが、俺は呆れてしまっている。
なぜならこの二人・・・時おりじゃんけんとあっち向いてホイッの攻守が間違っているのだ。
レオンがグーでリオンさんがチョキなのにリオンさんが指を差したりあいこなのにレオンがやったり・・・たぶんじゃんけんはおまけで交互に攻めているような気がするけど・・・じゃあさっきまでのあいこの意味は何?

「ちょっと待って」

すると、いつになっても終わりそうにない戦いを繰り広げていた少年が、目の前の青年に待ったをかける。

「なんだ?レオン」
「これ、直接本人に聞いた方がよくない?」

リオンさんの片手に握られている依頼書を指差し、そんな提案をするレオン。それを聞いたリオンさんも、なるほどって感じでうなずくと、二人がこちらに視線を向ける。

「「シェリア!!」」
「は!!はい!!」

あまりにも突然名前を呼ばれたためにシェリアの返事が丁寧なものになっていた。彼らは少女に歩み寄ると、持っていた依頼書を手渡す。

「「この依頼、どっちと行きたい?」」
「え!?/////」

本人というのは、どうやらシェリアのことらしい。もしかしてシェリア指名の依頼で、どちらが付いていくか争ってたってことなのかな?

「えぇ/////二人とももしかして・・・」

すると、依頼書を手に取ったシェリアは顔を赤らめながらある妄想を繰り広げているみたいだ。たぶん、二人が自分をめぐって戦っていたと思っているんだろうな。
実際にはどちらも行きたくないって感じの会話してたのだけど、シェリアはそんなことなど頭から抜け落ちているらしい。

「あら、よかったわねシェリア」
「もしかしてモテ期到来?」
「ニヤニヤしすぎじゃない~?」
「ちょっ!!からかわないでよ!!」

しかし、勘違いしているのは彼女だけではない。シャルル、ウェンディ、セシリーも二人がシェリアのために争っていたのだと思い込んでいる。これ、違うとわかった時のこいつらの反応が怖いな。

「やっぱりレオンがいいか・・・な・・・」

シェリアはリオンさんとレオン、二人の間で恋心が揺れ動いている。だが、やはり彼女的には年齢も近く、小さい頃からずっと一緒にいるレオンの方に気があるらしく、彼と依頼に行きたいと思っていた。それなのに、彼女は依頼書に視線を落とすと、固まってしまった。

「どうしたの?シェリア」
「どんな依頼だったの?」

なぜ彼女が固まったのかわからない俺たちは脇からその依頼書を覗き込む。すると、すぐに彼女がそうなった理由と、レオンたちが争っていた理由がわかった。

【特別講師依頼!!
明日の授業参観で生徒たちに魔導士としての経験や心構えの講習をしてほしい。
魔法学校より】

それを見た瞬間、俺とウェンディは顔を見合わせていた。おそらく、シェリアをこの依頼に選出しようと考えたのは、彼女が魔法学校出身者だからだろう。しかも、飛び級で卒業するという偉業を達成していることから、彼女は憧れの存在なのだとすぐに理解できる。
そしてリオンさんが彼女ともう一人、レオンを出そうと考えたのは、彼も魔法学校に所属していたからだろう。
だけど、レオンは魔法学校を途中でやめているわけだし、彼にとっては嫌な思い出ばかりのその場所に行くのが嫌なのははっきり言って当たり前。その考えを払拭させようとしているのかもしれないけど、レオンからしたら余計なお世話なのかもしれない。

「う・・・う~ん・・・」

レオンの気持ちをわかっているシェリアは、彼と一緒に行きたいけど気が引けるといった感じらしく、依頼書をじっと見つめ頭を悩ましていた。

「ほら!!シェリア困っちゃったじゃん!!リオンくんが行くって言わないから!!」
「何を言っている。お前が行くといえばシェリアも悩まずに済んだんだ」

レオンと行きたい・・・でも彼のことを考えるならリオンさんと行く方が無難・・・でも彼を選ぶとレオンに勘違いされそう・・・様々な考えが頭を過る天神はなかなか答えを決められない。その彼女の様子を見たレオンたちは、またしてもケンカになりそうだった。

「どうしよう・・・ウェンディ・・・シリル・・・」

ついに耐えられなくなった少女は傍観者になっていた俺たちへと助けを求める。しかし、これは本当に難題・・・どっちを選ぶのがいいのかな?

「自分の気持ちに素直になった方がいいんじゃない?」
「シェリアが選んでいいんだから、好きな方取っちゃいなよ」

悩みに悩んで彼女にかけた言葉はそれ。だってどうしようもないんだもん、この究極の選択。

「そうなんだけどさぁ・・・」

しかし、シェリアは睨み合う二人の蛇姫に視線を向けると、ますます困ってしまう。なぜなら彼女にレオンが向けた視線が明らかにこういっていたからだ。

【まさか俺のこと選ばないよね?】

レオンはシェリアに好意を寄せられていることに気付いていない。しかも、彼はシェリアがリオンさんに憧れているのを、好きと勘違いしているところがある。そういうのも相まって、そのような視線を送っているのかもしれない。

「これは間を取るしかないわね」
「うん、それが一番だよね~」

すると、近くのテーブルの上に腰かけていたシャルルとセシリーがそんなことを言い出す。
彼女たちのいう間が何なのかわからない俺たち。彼女たちは近づくように指示をすると、コソコソと耳打ちをする。

「あ・・・なるほど」
「それなら大丈夫かも」
「シャルル頭いいね」
「フンッ、そうでしょ?」
「セシリーも意外といけるね」
「意外とって何~!?」

彼女たちの案を聞いて納得する。確かにそれなら、この選択しようがない状況から逃れることができそうだな。

「決めたよ、リオン、レオン」

満を持して掴み合いに発展しつつある少年と青年に声をかけるシェリア。それを聞いた二人は、互いの胸ぐらを離し少女に向き直る。

「で?どっちにしたの?」
「お前が好きな方を選べよ」

ここだけ見るとレオンとリオンさんが告白して、シェリアが解答する展開に見えるから不思議だ。実際は二人ともシェリアを押し付けあってるだけなのに。

「あたし、ウェンディと行く!!」
「「・・・え?」」

予想外の答えにリオンさんとレオンは目を点にしていた。シャルルとセシリーの考えた答え、それは両方とも選ばないというもの。
別にシェリアが行きたい人を選べばいいんだし、元々彼らしか選択肢がなかったのが問題なため、文句は言えないだろう。

「俺は行かなくていいなら何でもいいよ」

真っ先に正気を取り戻したレオンが彼女の選択にそう言う。もとの飄々とした佇まいになっているようだが、魔法学校に行かなくていいとなったことで、拳を握り小さくガッツポーズしているその姿は印象的だった。

「待て!!ならレオンとシリルも連れていけば万事解k――――」
「「「「「ややこしくなるから黙ってて!!」」」」」

しかし、リオンさんはどうしてもレオンを行かせたかったらしく俺まで巻き沿いを食らわそうとしてきた。だが、オババ様やユウカさんたちも加わり、彼の意見を一蹴してくれたのでこの不毛な戦いも終わったのであった。












 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
当初イメージしてた話と違くなっちゃったな。
本当は最後はシェリアが二人をパンチして終わる予定だったんだけど、よく考えたらそれは矛盾が生じると気付きこのような形になりました。
次はウェンディとシェリアが講師をするお話です。たぶん・・・ 
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