善意の裏
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第一章
善意の裏
ハワイ王国にだ。ある者達がやって来た。当時のハワイ王はカメハメハといった。
カメハメハ王は玉座からだ。その彼等とは全く違う服に白い肌の彼等の話を聞いてだ。こう言った。
「我が国を助けてくれるのか」
「はい、そうです」
「そうさせて頂きたいのです」
その襟まで締めた如何にも暑そうな服の彼等がだ。こう王に答える。
恭しく王の前に片膝をつき礼儀正しい。そして温和な笑みを浮かべている。
その彼等がだ。王に対して言うのだった。
「王がこのハワイを一つにされたいのなら」
「微力ながら我々にも手助けさせて下さい」
「ハワイはこれまで多くの国に分かれてきた」
所謂部族にだ。そうなっていたと言う王だった。
「だが私はこのハワイを一つにしたいのだ」
「そうすればお互いに対立することはなくなりますね」
「ハワイは平和になりますね」
「野心があることは否定しない」
王は自らだ。己の野心の存在を言ってみせた。
「ハワイを統一し治めたい」
「それはありますか」
「王も」
「だがそれでもだ」
「このハワイに平和をもたらしたいのですね」
「左様ですね」
「そうだ。そう考えている」
統一と平和、それが第一だというのだ。
「だからだ。諸君等の協力の申し出に感謝する」
「では我々は王に協力していいのですね」
「そうなのですね」
「そうだ。頼む」
王自らだ。彼等に申し出た。
「このハワイの為に」
「わかりました。ではアメリカ合衆国は王の友人としてです」
「これから協力させてもらいます」
「友か」
この言葉にだ。王は笑顔になった。そのうえでこうも言った。
「有り難い。それではな」
「はい、ハワイの為に」
「共に進みましょう」
こうしてだった。王はアメリカの協力を受けることになった。すぐにだ。
軍にアメリカ人の顧問がつき武器が供給された。そうして近代化された己の国の軍を見てだ。王は満足した顔になりだ。大臣達に述べた。
「よし、この戦力ならばな」
「はい、他の国に勝てますね」
「ハワイを統一できますね」
「できる。全てはあの国のお陰だ」
アメリカの。その国のだというのだ。
「いい国だな、アメリカは」
「そうですね。進んでこうして協力を申し出てくれて」
「顧問を派遣してくれて」
「武器もくれました」
「いい国です」
大臣達もそう思った。アメリカに対して。
そしてそのうえでだ。彼等はアメリカ軍の顧問の指導を受けその武器を使って戦い。見事ハワイを統一した。王はこのことをいたく喜びだ。
己の前にいるアメリカ人達にだ。満面の笑顔で言った。
「全てはそなた達のお陰だ」
「いえ、王が立派だからです」
「それ故に統一できたのです」
「我等の力ではありません」
アメリカ人達はそのにこやかな笑顔で王にこう応えた。
「我等はただ己の良心に従っただけです」
「ハワイを統一され平和をもたらされようという王のお心に打たれ」
「そのうえで王に協力させてもらっただけです」
「それだけです」
こう言うのだった。だが、だった。
王は彼等への感謝の気持ちを忘れなかった。むしろ彼等の謙虚な姿勢により一層の感銘を受けてだ。こう彼等に対して言ったのである。
「これからハワイ王国はアメリカの友人となりたい」
「何と、我が国のですか」
「我が国の友人となって頂けるのですか」
「そうして頂けるのですか」
「アメリカがあるからこそハワイは一つになれたのだ」
まさにだ。それ故にだというのだ。
「だからこそ。ハワイはアメリカに感謝してだ」
「友人にですか」
「なって頂けますか」
「そうなりたいのだがいいだろうか」
今度は王が謙遜を見せた。ただし彼は本心からそうした。
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