FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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お別れ
前書き
アクマゲームみたいなゲーム大会を個人的にやってみたい。
ほぼパクりになりそうだからどうしようか迷いますが・・・
太陽が上り、暗かった街を照らしている。ゼレフ書の悪魔たちとの激しい戦いを繰り広げた冥府の門の本部。星霊王の一撃によって粉々にされたその中で、俺たち妖精の尻尾の魔導士と三大竜、そして、14年前に姿を消したヴァッサボーネやグランディーネといったドラゴンたちが集まっている。
「グランディーネ・・・ヴァッサボーネ・・・」
両手を胸の前で握り合わせ、目に涙を浮かべた少女。彼女は大好きだった親を目の前にし、嬉しそうな表情を見せている。
「みんなの勇気とイグニールが、アクノロギアを退けた」
そう言ったのは、ウェンディに滅竜魔法を教えた天竜。その優しげな目を見て、俺とウェンディは懐かしくて、思わず笑みを浮かべる。
「ドラゴンが味方って、すげぇ優越感!!」
「だな!!」
以前は敵として戦った種族。しかし、今は力強い味方になったからなのか、ジェットさんとドロイさんがそう言う。
「何千機もあったって話だけど・・・」
「フェイスを全部壊したのか?」
「すげぇなぁ」
人間の魔導士ではほとんどが傷一つつけることが出来なかったという話のフェイス。しかし、ヴァッサボーネたちはそれを短時間で全て破壊したとあって、ロメオたちは驚きながらも感心しているといったように見える。
「フェイスの破壊、よく頑張ったわね」
「シャルルが一緒だったから」
涙を拭いながらグランディーネに答えるウェンディ。その姿に笑みを浮かべていると、白き竜の隣にいる水色の竜が、こちらをじっと見ているのに気付く。
「何?ヴァッサボーネ」
こちらをずっと見ているのは、俺の育ての親であるヴァッサボーネ。彼がじっとこちらを見ているのは、もしかしたらグランディーネがウェンディを褒めたみたいに、俺のことを褒めてくれるのかと少しドキドキしている。
「ハァ・・・」
だが、彼は突然ため息をつく。なんだ?今のため息。
「それに比べてお前は・・・睡眠薬が混ぜられた紅茶を飲んで捕まり」
「うっ!!」
「服を脱がされ妙な実験をされ」
「くっ!!」
「敵一人倒すのにものすごく時間がかかり」
「ぐっ!!」
「ウェンディが死んだと勘違いして暴走して」
「っ・・・」
「それを止めようとした仲間を半殺しにし」
「・・・」
「最後には大号泣か」
「あの・・・すっごいグサグサ来てるんだけど・・・」
マルド・ギールを倒したことを褒めてもらえるのではないかと期待していたのだが、その前に色々とチョンボしていたことを蒸し返され、かなり精神的に落ち込んでしまう。
「ヴァッサボーネ!!あなたねぇ・・・」
「おおっと、ごめんよぉ」ニヤニヤ
子供の心を抉り取ろうとしている父の姿に、グランディーネが睨み付けている。だが、ヴァッサボーネは舌を出してそう言うと、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべており、全く反省してないのが見て取れる。
「相変わらずだね、ヴァッサボーネ」
「俺にはすごく厳しいよね・・・」
天狼島で頭撃ち抜かれて海に落ちた時も、ヴァッサボーネ全然心配してくれなかったもんなぁ・・・挙げ句の果てには早く行けとまで言われる始末だったし。
「「・・・」」
俺が心の傷を抉られているその隣では、ガジルさんと彼の父、メタリカーナが互いを見つめあ・・・いや、睨み合ってるようにしか見えないな、二人とも目付きが悪くて。
「これが・・・メタリカーナ」
「ガジル」
親子の感動の再会だと思っているリリーとレビィさん。しかし、メタリカーナの次の言葉により、その感動の時間は簡単に打ち砕かれる。
「相変わらず目付きが悪いのぅ」
「うるせぇ!!」
俺が思っていたことと全く同じことを言うメタリカーナ。それにガジルさんは怒りながら突っ込んでいる。
「バイスロギア・・・俺は確かに、あんたを殺した」
「俺もスキアドラムが死んだのを、この目で見た」
「ハルジールは俺が体を貫いたはずだ」
自分の親であるドラゴンを倒したと思っていたスティングさんたち。しかし、今目の前に、殺してしまったはずのドラゴンがいることに動揺を隠しきれない様子。
「人間の記憶などいくらでも改竄できるわい」
「イグニールには反対されたんだがな」
「あの時は滅竜魔導士にドラゴンを殺したという記憶と実績を与えるつもりだった」
どうやら、彼らが死んだというのはスティングさんたちの記憶違い・・・というより、ドラゴンたちの手によって記憶を書き換えられてしまっていたらしい。その結果が昔の彼らに繋がったのではないかと少し不安を感じるのですが・・・
「と言っても、死んだというのは半分正解だな」
「??」
真実を話した後、バイスロギアが意味深な発言をする。それがどういうことなのか、俺たちはわけがわからずにいる。
「私たちは、すでに死んでいるのよ」
「「え?」」
グランディーネが続け様にそう言う。でも、今俺たちの目の前には彼女たちがいる。それじゃあ矛盾が生じている気がするんだが。
「その昔、アクノロギアの滅竜魔法によって、俺たちは全員魂を抜き取られたんだ」
「だから、あなたたちの体内にいたのは、“竜化を防ぐ”“アクノロギアを倒す”という目的の他に、私たちの延命の目的もあった」
「ウソ・・・」
「そんな・・・」
ヴァッサボーネとグランディーネの説明され、信じられないといった顔をする俺とウェンディ。
「一度体から出てしまえば、二度と体内には戻れぬ。今日がお前たちに見せる、最初で最後の力」
「だから今まで、姿を見せなかったことを理解してくれ」
スキアドラムとハルジールがそう言う。天狼島でアクノロギアに襲われた際も、クロッカスにエクリプスからやってきたドラゴンが来た時も姿を現さなかったのは、アクノロギアを倒すチャンスのタイミングを図っていたからだったのか。
「イグニールでさえ、アクノロギアは倒せなかった。だが、イグニールもまた、死せる前の最後の力だった。人間たちよ、どうか炎竜王の尊厳に傷をつけることなかれ」
メタリカーナがそう言った後、いまだに煙が立ち込めている方向へと目をやる俺やガジルさん。そこにいるのは、大きく口を開き息絶えているドラゴンと、彼の前でガッカリと膝をつく青年。
「イグニールほど勇敢で、人間を愛したドラゴンはいなかった」
アクノロギアと互角に戦っていたイグニール。しかし、彼は暗黒の翼に勝つことはできず、圧倒的なその力の前に破れ去った。
ナツさんはようやく再会することができた父のその姿に、涙が止まらなくなっている。
「まだ全てを伝えきれたわけではないけれど、時間が来たわ。お別れの時よ」
すると、俺たちの体内にいたことでギリギリ生きていたドラゴンたちも、限界を迎えたようであった。
「やだ・・・」
グランディーネの言葉を聞いて、一度拭った涙をまた溢しそうになりながらウェンディが呟く。
「この先も数々の困難があるだろうけど、あなたたちならきっと大丈夫」
「やだよグランディーネ!!行かないで!!」
身を小さくしてウェンディに優しく語りかけるグランディーネ。それでも、少女は大好きな彼女がいなくなってしまうことを受け入れられず、首を振り涙を流している。
俺は、そんな彼女をギュッと抱き締めた。
「大丈夫!!俺がついてるから!!」
「シリル・・・」
本当は、俺もヴァッサボーネたちとの別れに泣き出したい。でも、俺にはウェンディもセシリーもシャルルも、ギルドのみんなもいる。だから・・・
「ウェンディは俺が守るから!!二人が守ってくれたみたいに!!」
ヴァッサボーネとグランディーネの方を見て、無理矢理作った笑顔を見せる。それを見た二人は、視線を交わした後小さく微笑んでみせた。
「成長したわね、シリル」
「小さいままなのにな」
「お前貶す以外の言葉かけれないの!?」
素直に誉めてくれるグランディーネと違い、なおも厳しい言葉をかけてくるヴァッサボーネ。だけど、彼らしいその言葉を聞いて、俺もウェンディも思わず笑ってしまった。
「シリルがいてくれるなら、私も大丈夫」
涙を拭って、二人に微笑みかける天竜。その姿を見たドラゴンたちは、閉じていた翼を大きく広げ、空へと飛び上がる。
「人間たちよ。争い、憎しみ合っていた記憶は遠い過去のもの」
「今、我々はこうして手を取り合うことができた」
「我々ドラゴンの時代は、一つの終焉を迎えた」
「これからの未来を作るのは、人間の力」
「400年前、人間とドラゴンの間で交わされた盟約、大憲章にのっとり、我々ドラゴンは人間を見守り続けよう!!永遠に!!」
天から赤い一筋の光がドラゴンたちを包み込む。その光に包まれたみんなは、その姿を少しずつ消していく。
「グランディーネェ!!」
「愛してるわ、ウェンディ」
耐えきれなくなって大声で母の名前を叫ぶ天竜。母はそれに、優しい口調でそう返す。
「じゃあね、ヴァッサボーネ」
「元気でな、シリル」
溢れそうになる涙を必死に堪え、天に消え行く父に片手を上げる。ヴァッサボーネはそれに、同じように手をあげて答えてくれた。
「目付きが悪いのぅ」
「最後の言葉がそれかよ!!・・・ちくしょお・・・」
メタリカーナからお別れとは思えぬような言葉を残された鉄竜。消えていくその姿を、彼は目に涙を溜めて見送っていた。
「ありがとう、バイスロギア」
「スキアドラム」
「ハルジール」
静かにドラゴンたちが天に還るのを見送る三大竜。彼らに見送られた三頭は、成長した子の姿に笑顔を見せながら消えていった。
「うっ・・・うぅ・・・」
その姿を消したドラゴン。ウェンディはいなくなった母のことを思い出し、目から流れる雫が地面へと落ちていく。
「俺がずっとそばにいるから。泣かないで」
「うん・・・」
泣きじゃくる少女を抱き寄せ慰める。彼女は相棒の猫を抱き締めたまま、俺の胸の中でいつまでも泣いていた。
ずっと探していた親との別れ・・・そして、それから一週間が流れた・・・
「わぁ!!髪の毛が元に戻りました!!」
建物を直す音が響き渡るマグノリアの街。その片隅では、腰元まである藍色の髪を嬉しそうに見ているウェンディの姿があった。
「お安いご用、エビ」
彼女の髪の毛を元に戻してくれたのは、ルーシィさんの星霊キャンサーさん。さすがはカットのプロ、ウェンディの髪の毛も元通りです。
「ありがとうございます、ルーシィさん」
「うん!!やっぱりウェンディは、こっちの方が似合ってる!!」
お礼を言う少女を見てルーシィさんも嬉しそう。やっぱりウェンディはこの髪の長さが一番可愛い。ショートも良かったけど、こっちの方が可愛さ四割増しだよね!!
「どう?シリル」
「食べちゃいたい」
「え!?」
「ごめん、こっちの話」
実は彼女、カミューニさんに変と言われたのをすごく気にしてたらしく、かなり落ち込んでいた。決意して切ったものをあんなズバッとダメ出しされたら、誰だって気にするよね。
「ルーシィももう少し伸ばしてみるか?エビ」
「う~ん・・・どうしようかなぁ?」
自分のブロンドの髪を手に取りじっくりと思案しているルーシィさん。彼女も長い髪をしているが、ロングというよりセミロングといった感じの印象を受ける。
「きっと似合いますよ」
「俺もそう思います」
「任せとけエビ」
今の長さに見慣れてはいるものの、彼女なら長いのもきっと似合うと思う。ウェンディほどじゃないだろうけど。
「ウェンディとシリルの様子はどうだ?」
俺たちが髪のことで盛り上がっていると、影からこちらをじっと見ていたシャルルとセシリーのところにリリーがやってくる。
「あの通り~」
「いつも通りよ」
「そうか」
彼女たちは、ヴァッサボーネやグランディーネとお別れした俺たちのことを心配していたらしく、ここ最近ずっと様子を見守っていたらしい。そんなことなど知りもしない俺たちは、いつも通り騒がしく会話をしている。
「あんなことの後なのに、強がっちゃって」
「号泣だったのにね~」
お父さんたちとお別れをした後は、なかなか気持ちの切り替えが出来なかった。でも、みんながいるなら大丈夫と思うことができ、今では気にすることなく、普段通りにいられる。
「ガジルは?」
「うむ、あいつも見ての通り」
「む~?」
シリルとウェンディと同じように大切なものを失ったガジル。彼はレビィに注意されながら、花壇の縁でうつ伏せに眠っていた。
「みんな、辛い別れがあった」
「ナツも心配ね」
「だよね~」
一番辛い想いをしたと思われる青年。彼のことを思うと、シャルルもセシリーも心配で仕方がない。
「あいつは、きっと大丈夫だ」
「「え?」」
だが、リリーだけは彼のことを心配していなかった。なぜそう思うのかわからない二匹の猫は、リリーの方に視線を向ける。
「ハッピーがついてるからな」
「そうだね~」
ナツの相棒であり一番の理解者であるハッピー。彼がついているなら、ナツは大丈夫。そう考えた三匹は、空を流れる雲を眺めていた。
翌日・・・
ザワザワザワザワ
「ん?」
ウェンディの髪の毛を元に戻してもらった次の日、そろそろ壊れたギルドの後片付けでもしないとなぁ、とか思いながらギルドがあったところへ向かっていると、その場所で妖精の尻尾の紋章を刻んだ皆さんが集まっているのに気付く。
「なんだ?」
現在マグノリアは冥府の門との戦いによって半壊状態。そのため、家が壊れてしまった人なども多くおり、そう言う人たちはギルドの周辺にテントを建てるなどして対応している。
俺は運よく住んでいるアパートが残っており(といってもボロボロだったけど)、そこから通っているから近くに集まっている人よりもギルドに来るのは遅れてしまうこともある。でも、それでもこの人数の集まり方、そして全員が同じ方向を向いているのはあまりにも不自然だ。
「ウェンディ」
「あ、シリル!!」
俺は一番後ろで、ピョンピョンと飛び跳ねている少女へと声をかける。彼女がスカートで飛び跳ねているものだから、見えてしまうのではと思い声をかけたのも一つの要因ではあるが・・・
「どうしたの?これ」
「わかんない」
「私たちも朝来たらこんな状態だったわ」
「さっき来たばっかりなんだけどね~」
どうやら彼女たちもつい先程来たばかりらしく、事情を把握していないらしい。仕方ないので、俺たちは人混みを掻き分け、先頭へと進んでいく。
「すみませ~ん」
「ごめんなさい」
人の間を通りながら前へと進む俺とウェンディ。シャルルとセシリーは小さいから、難なく抜けることができていて少し羨ましい。
そして、やっとの思いで先頭に来ると、そこには木材の上に腕を組んで座っているマスターがいた。
「来たか、シリル、ウェンディ」
「グレイさん」
俺たちに声をかけたのは氷の造形魔導士。彼の隣には、ジュビアさんやエルザさんたちもおり、何やら雑談しているようである。
「どうしたんですか?これ」
「さぁな、朝来たら全員集められてたんだ」
「だからジュビアたちもよくわからないんです」
どうやら、この状況を理解できていないのは俺だけではないらしい。他の皆さんもさっぱりなようで、周囲にいる人たちとそれぞれの憶測を話し合っていた。
「全員、揃ったようじゃな」
すると、わずかに目を開きギルドの全員が集まったのを確認すると、マスターはその場で腰を上げる。
「あれ?ナツさんは?」
「そういえば見てないわね」
「ハッピーもいないよ~」
キョロキョロと周りを見ているウェンディが気付いたこと、それはナツさんとハッピーだけがまだ姿を見せていないということだ。
しかし、マスターはそれを事前に把握していたのか、気にする様子もなく閉ざされていた口を開く。
「今日集まってもらったのは他でもない。これから重要な報告をする。心して聞け」
いつだかのS級魔導士昇格試験のことを思い出す。でも、その時とは違い、真剣な表情を彼はしていたため、全員話すのをやめ、彼に視線を集中させていた。
「今日、この時を持って、妖精の尻尾を解散する」
「「「「「・・・え?」」」」」
マスターのその一言で、全員の思考が停止した。
後書き
いかがだったでしょうか。
これにて冥府の門編無事に終了です。
次からは完全なオリジナルシリーズ蛇姫の鱗編に入っていきます。
やりたいことがたくさんあるので、長くなると思いますが、お付き合いのほどよろしくお願いします。
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