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第四章

 一月前と同じくだ。津上はこの患者の手術をした。そうしてだ。
 今回も手術は成功し患者は入院となった。それから暫くしてだ。
 津上は看護士達を呼びそのうえでだ。患者の病室に入った。そしてそこでだ。
 彼は患者に対してだ。こう問うたのである。
「これで二度目の入院ですね」
「はい」
 その通りだとだ。患者は病院のベッドに半身を起こしたうえで答える。見れば実に整った顔である。美人と言っていい。
「その通りです」
「しかしです。ここで問題なのは病院に通報したのは誰か」
 ここで津上はこう言った。
「それは誰ですか?」
「あっ、そういえば確かに」
「二度も誰が通報したんだ?」
「この患者さんがそんなのできるかっていうと」
「無理だしな」
「そうよね」
 看護士達もだ。このことに気付いたのだった。
 そして津上はこのことをだ。患者に対して問うたのである。
「貴女ではないことは間違いないですね」
「それは」
「貴女は二度共通報出来る状態ではなかった。なら他の誰かが病院に知らせてきた」
 患者を見据えてだ。彼は問うていく。
「そしてそれが誰かというと」
「それ誰ですか?」
「先生、それで誰が病院に通報したんでしょうか」
「一体誰が」
「誰がそうしたんですか?」
「貴女の状態もです」 
 病院に担ぎ込まれたその状態についてもだ。彼は言った。
「誰かがそうしないと無理なものです」
「確かに。あんなのはとても」
「一人で出来るものじゃない」
「誰かがしたのは間違いない」
「じゃあ一体誰が?」
「誰が通報して誰があんなことをしたんだろう」
「一体」
 看護士達もいぶかしむ。ここでだ。
 津上はだ。患者に対して言ったのだった。
「しかも貴女は常に快感を感じておられましたね。あのとんでもない状態の中で」
「それは」
「それは何故かというとです」
 さらに言う津上だった。
「貴女にその趣味があったからこそです」
「趣味!?というとまさか」
「この人はそうなんですか」
「そっちの趣味のある人」
「そうだったんですか」
「おい、皆今頃気付いたのか」
 看護士達の驚いた声にだ。津上は。
 彼等に対して呆れた顔を向けてだ。こう言ったのだった。
「すぐにわからなかったのか。誰も」
「まあ幾ら何でもって思いましたから」
「尋常ではない状態でしたから」
「ですからとても」
「そうは思いませんでした」
「俺は最初でわかったがな」
 最初に担ぎ込まれて来た、その時にだというのだ。
「しかし誰もわからなかったのか」
「すいません、ちょっと」
「わかりかねました」
「まあいい。とにかくだ」
 誰もわからなかかったことは今の話の本題ではなかった。それでだ。
 彼はあらためて患者に顔を向けてだ。こう言ったのだった。
「貴女は重度のマゾヒズムで相手とそうしたことをして愉しんでいてその中で危険な状態になり相手が恐怖を覚えて通報してきた。そういうことですね」
「そこまでおわかりなのですか」
「簡単な推理です。しかしその通りですね」
「はい・・・・・・」
 苦い顔でだ。患者も頷く。
「そうです」
「ですね。では二度とこうしたことがないようにです」
 その為にだというのだ。
「貴女の詳しい経歴等をお話下さい。病院の外には漏らしませんので」
「わかりました」
 こうしてだ。美女はようやく自分のことを話すのだった。その結果わかったことは。 
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