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身体は男でも

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3部分:第三章


第三章

 その決意、どうしても抑えられない感情故にそうしたことを顔に出してだ。そして言ったのである。
「絶対にね」
「言ったなあ。じゃあな」
「俺達はもう言えないな」
「御前がそこまで言うんだったらな」
「じゃあいいぜ」
 こうだ。彼等もだ。
 困った顔をしているがそれでもだった。彼等は認めた顔になってだ。そのうえでアッチャカラーンに対してだ。背中を押しはしないが見る声で告げた。
「頑張れよ」
「けれど何があっても落ち込むなよ」
「何がどうなってもな」
「後悔とかはするなよ」
「後悔しない為にすることだから」
 言わないよりも言う、そう考えてのことなのだ。
「だからするわ」
「告白な」
「そうするんだな」
「ええ、決めたから」
 こうしてだ。彼はまずはその青年を探した。しかしその必要はなかった。
 何と決意した次の日にだ。彼はアッチャカラーンの前に出て来たのだ。
 そしてだ。彼は笑顔でこう言ってきたのだ。
「ああ、また会ったね」
「あの、この前は」
「縁かな。実はね」
「実は?」
「今日もなんだ」
「バンコク駅にですね」
「うん。そこに行きたいんだけれど」
 こうだ。アッチャカラーンに対して穏やかな笑顔で告げたのである。
「いいかな」
「はい、それじゃあ」
「そういうことでね」
 こう話してだ。そのうえでだ。アッチャカラーンは青年を自分のタクシーに乗せてだ。そうしてだ。
 車を動かしバンコク駅に向かう。その中でだ。
 彼は運転しながらそのうえでだ。後部座席にいる彼に尋ねた。
「あのですね」
「うん。何かな」
「お勤め先は何処ですか?」
 何とかだ。胸の鼓動にはやる気持ちを抑えながら彼に尋ねる。
「サラリーマンって仰いましたけれど」
「うん。日系の企業でね」
「日本のですか」
「八条自動車だけれど」
「工場ですか?」
「いや、営業の方なんだ」
 そこにだ。彼は勤めているというのだ。
「そこに勤めているんだ」
「そうですか。そこにですか」
「勤めてるんだ。給料も待遇もいいしね。いい会社だよ」
「日系の企業は大体そうですよね」
 運転しながらだ。アッチャカラーンはこう青年に述べた、
「金払いも待遇もいいですよね」
「そうそう。いい会社に入ったよ」
「それはいいことですね」
 青年に応えながらだ。そのうえでだ。
 アッチャカラーンは心の中のメモ帳にだ。彼の勤めている企業をメモした。八条自動車、その企業の名前をだ。心の中に刻んだのである。
 そしてそのうえでだ。彼は青年にだ。さらに尋ねたのである。
「あの、それでよかったら」
「よかったらっていうと?」
「お名前は何というのですか?」
「僕の名前かい?」
「はい、何というのですか?」
「サワリットっていうんだ」
「サワリットさんですか」
「ハヌマー=サワリットっていうんだ」
 それがだ。彼の名前だというのだ。
 
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