八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七十八話 赤い海と紫の道その二
「そうなるのよ」
「そうなんだね」
「ただ、海はね」
ダオさんは僕達のすぐそこの海の方を見た、海は道と同じく赤い夕陽を浴びていた。それで青から完全に赤になっていた。
赤い海が白銀の波を一緒に輝いている、その海を見てだった。
ダオさんは微笑んでだ、こう僕に言った。
「この海はなかったわ」
「ベトナムにはだね」
「というかこんな海ってね」
それこそという言葉だった。
「他にないわね」
「ここだけだっていうんだね」
「そうじゃないの?」
実際にというのだ。
「神戸にもないでしょ」
「海は夕方には夕陽を浴びるけれどね」
「それで赤くなるけれど」
ダオさんはその海を見つつまた言った。
「ここまで奇麗な赤はないわよ」
「ここだけだっていうんだね」
「そう思うわ」
「確かにね、僕もそう思うよ」
「義和は前もこの海見てるのよね」
夕方の江田島の海をというのだ。
「そうよね」
「去年も見たし」
僕もこう答えた。
「それにその前からね」
「江田島に来てたわよね」
「何度かね」
実際にそうだとだ、僕はダオさんに答えた。
「来てるよ」
「やっぱりそうなのね」88
「それでここに来る度にね」
「この海見てるのね」
「そうなんだ、ただ江田島でもね」
この島に来てもとだ、僕はダオさんにこうも話した。
「この夕方の海は夏だけだよ」
「夏だけの海なのね」
「夏の夕方のね」
まさにその時だけだとだ、僕は話した。
「その時だけのことなんだ」
「そうなのね」
「夏の強い日差しがね」
「夕方になって」
「それでこうなるんだ」
その夏の日差しを受けてだ、夕方にそれを。
「奇麗な赤にね」
「そうなのね」
「春や秋は違うんだ」
「日差しがそこまで強くないから」
「うん、それに江田島は晴れが多いから」
とにかく雨の日が少ない、瀬戸内気候というけれどその気候の中にあるから雨の日が少ないのだ。
「日差しも強いけれど」
「夏は特に強くて」
「それが弱まった夕陽がね」
まさにその日差しがだ。
「この赤い海を作ってくれるんだ」
「江田島ならではってことね」
「この辺り独特だよ」
ダオさんにその海を見ながら話していった、勿論香織さんにも。
「伊勢にも和歌山にもないね」
「そうなのね」
「赤い、本当にここまで赤い海はね」
「赤はね」
この色についてだ、ダオさんはこんなことを言った。
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