Society Unusual talent
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code7 旧友
前書き
後半かなり雑になっているかも知れません、おかしい部分があったらご指摘お願いします。
街の路地裏。
一人の黒髪の男が立っている。
赤神の絶命後、雄大は地面に無造作に腰を下ろす。
それはくつろぎではなく、片腕を失ったことでの身体の限界であった。
「答えなんてあるのか?赤流…大丞…」
自問自答。聴くものがいない今、無意味な行為だということはわかっていながらも呟いてしまう。
やけに視界がぼやける、身体に力を入れることが困難であり、吐き気がする。
携帯が鳴ったのを感じ、咄嗟に懐の携帯を残った左手で取り出すが、切り離された右腕を持っていたことにより自身の血で滑ってしまい、床に落ちた携帯は滑って離れていく。
落ちた携帯を目で追うものも、拾うことが出来ない。
とうとう身体も自由に動かなくなってきた。
「…一張羅が台無しだな…」
見えなくなってきた視界の内に僅かに入った尖った鉄の棒を無理やり左腕に力を入れて何本か拾い、痛覚が麻痺してきている傷口に無理やり刺し込んで痛覚を戻しながら切れた手を無理やり接合する。
血で濡れ、土が付いてしまったスーツを口で破き、細長い布を作って接合させた箇所に巻き、そこをベルトでキツく結ぶ。
何故かはわからないがしなくてはならないと思った。
一瞬感じた痛覚によって視界がほんの少しだけ開く。
脚に力を入れて踏ん張り、携帯を回収しようとするも伸ばす手を途中で止めてしまう。
視界が開けたことによって、
最悪の敵意を察知したのだ。
途端、銀の流線が携帯を真っ二つに割る。
同時に雄大は力を振り絞り、後退しながら立ち上がる。
視界の先にいたのは、最悪の相手。
「また会ったな、強き男よ」
歯を噛み締め、獰猛な笑みを浮かべた葵い髪の男、須佐之男であった。
身体の不自由、出血多量、吐き気やめまい、神玉の死体の回収、須佐之男の登場。
雄大の頭の中で様々な問題が渦巻くが、立つだけでもやっとの雄大は真っ白な頭で須佐之男を睨む。
それを見た須佐之男は失望、と言うように肩をすくめ、その意を込めた言葉を放つ。
「追い詰められた獣の目…ではないな、ただ死を待つ、そんな目だ」
須佐之男が視界を落として雄大と足元を見る、そこで初めて雄大の近くに落ちている死体に気づいたようだ。
「ナンバーエイト…?…なるほど、こいつほどの男をやったということか…」
「ふぅ」と小さく息を吐き、須佐之男が目を閉じる、雄大はその光景を集点の合わない目で見ていた。
「…じゃあ、見逃してくれよ…最高のコンディションで…やりたいんだろ…?」
呼吸が調わなくなり、そろそろ本当に死んでしまうと一歩ずつ後退しながら提案する
「…我は戦闘の為に奴に魂を売った、異能者だけの世界を作ることによって、無限に戦闘が楽しめる、とな。…貴様は強い、貴様のような異能者とは本気で闘いたいと思う…だがな」
「日本武尊も武御雷も天照さえも、駒に過ぎないが、貴様が殺したのはゼロのお気に入りの虐殺マシーン。貴様の行動は既に許容範囲内を超え、その実力は規格外だ」
須佐之男は目を見開き、蒼い瞳で雄大を睨む。
「芽は摘むべきだと判断した、惜しいが貴様を殺す」
周りの家についた、水道のバイプが暴発し、中から数本の水流の鞭が現れる。
「…我等ナンバーズの戦闘員達のすべき事は、この街の刃向かってくる異能者を屈服させることだったが、赤玉が死んだことでゼロは強行手段に走ってしまうかもしれないな」
須佐之男が牙を剥き、くくっと笑みを浮かべる。
四面楚歌、万事休す、絶体絶命。
全てを感じ、雄大は笑った。
詰みだと感じながらもこのまま終われない、死ぬとわかっていても、なんとか生き抜こう。
窮地の中、希望が絶たれた雄大は、感じるがまま行動することに決めた。
『異能の行使、脚力三倍』
小細工はいらない、間髪いれずに神玉の遺体を担ぎ、須佐之男から遠ざかるように後ろに、大通りの方に走った。
須佐之男は呆気にとられたのか、瀕死の雄大の行動に一瞬遅れ、水流の鞭を雄大に目掛けて跳ばす。
水流は雄大が走るよりも早く動き、雄大を捉え尖端を突き刺すように突撃する。
しかし、雄大は跳躍して水流を避け、ビルの側面を走り抜ける。
水流の量は徐々に増え、雄大を捉えて突撃していく。
雄大は更に一段階倍率を上げ、スピードを上回り引き離す。
「小細工はおしまいだ…」
須佐之男の周りの水が収縮し、大きな柱となった。
「落ちろ」
柱は一直線に雄大に向かっていく。
雄大は避けようと壁から跳躍し、地面に降りていく。
瞬間、柱は弾け、大量の水流の鞭に分散して雄大を空中で囲い込む。
須佐之男が拳を握ると共に雄大は水の球体に閉じ込められる。
雄大はその衝撃に為す術無く意識を手放した。
「…くだらん」
水の球体に向かい、手を前に出すと、周りの水が集まり、一本の水流の槍が現われる。
「さらばだ」
言葉と共に雄大に向かって勢いよく槍を飛ばす。
しかし、須佐之男は舌を打ち、槍を飛ばすことを途中でやめ、槍は形を崩し須佐之男の元に戻る。
須佐之男はそれと共に水で自分の周りに障壁を作る。
瞬間、何者かが障壁に弾かれ、同時に雄大を捕らえていた水の球体は真っ赤な鎌によって破裂した。
「…素晴らしい反応、そして察知能力だ。もし俺一人だったらあの人を救出出来なかっただろう」
須佐之男は突然現れた彼を忌々しいというように睨みつける。
「異能警察か」
その男、速水風真はニヤッと笑う。
「ご名答」
「貴様は…速水風真、そしてもう一人は操血鬼の神成樹星雅だな」
「おや、俺達の事を知っていたのか」
「…貴様等の相手をするのは魅力的だが、奴を殺すことの邪魔をするのはやめてもらいたい…もっとも」
「関係ない。あいつらのどちらかは今、死ぬ」
須佐之男の言葉に速水はそちらに視線を向ける。
雄大達の周りに渦巻く水は姿を変え、数体の竜の姿を象る。
「…物量に状況だ。操血鬼の選択次第で両方死ぬ」
星雅が攻撃を弾くだけなら簡単だ、しかし二人がいるのは空中。雄大は気を失い、落下している。それに加え、雄大の背には神玉の死体があり、星雅が急落下する二人より地上につくことは不可能だ。
それに、星雅が一瞬でも迷えば水竜は星雅を狙い討ち、両方死ぬことになるだろう。
「…なるほど、確かに、高さが高さだ。あんなんじゃ死なないにしても手遅れになる。だけど、少し浅いんじゃないか?」
速水の不敵な笑みに「何?」と須佐之男が振り向く。
星雅は雄大達を一切眼下から外し、血液の鎌を竜の首に掻き立てる。雄大が落ちることを全く考慮せずにただ目の前の敵だけを斬る。
「…馬鹿が、奴のタフさにでも賭けたのか?既に致死量の血を流失しているんだ。仮に赤玉をクッションにしたとしても衝撃は免れない」
急降下して行く雄大を見ながらも速水の笑みは尚消えない。
「…一人だったら救出は無理だった、その為に二人…そして」
雄大の最期を見ていた須佐之男は目を見開き、驚嘆の声をあげる。
「地面が開いて…!?まさか…!」
「三人目でようやく…ここから逃がす事が出来る」
笑みと共に、速水は携帯していたナイフを抜いて須佐之男に走った。
雄大が地面に直撃する寸前、突然地面に現れた扉。雄大と神玉が入ると同時に閉じ、何も無かったかのように元通りになる。
「…我は…」
須佐之男の張った障壁は大きく歪み、壊れながらも速水を弾いた。
速水は飛ばされながら足で地面に急ブレーキをかける。
同時に、星雅も空中から着地し、並んだ二人は須佐之男の方へと向く。
「我は…建速須佐之男也…」
須佐之男はゆっくりと顔をあげる、その顔に獲物を逃したことへの落胆はない。
寧ろその顔は新しい獲物を見つけ、獰猛な笑みを浮かべていた
「貴様等の命試させてもらおう!!」
須佐之男の叫びと共に周りの水全てが須佐之男の周りを廻る。
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真っ暗な空間、二人の男と一つの死体が横たわる。
一つは手術台のような物にのせられており、もう一人はその姿を見ている。もう一人は座り込んでいる。
気を取り戻した雄大はその男を見て驚きながらも冷淡に言った。
「そうか…お前だったか」
「…えぇ、私です」
返事をした男は身長が高く、二m七十cm程の身長で頭にペストマスクと大きなハットを被った黒衣の医者である。
「…大丞…」
座り込んでいた黒髪の男が名前を呼ぶと大丞と呼ばれた男は手術台の神玉の死体を見たまま振り向きもせずに
「やめてください」
と静止の声をあげる。
やがて雄大に向きかえり、
「私は世捨て人だ。…名前を名乗る権利などない」
「Dr.D、とでもお呼びください」
「…そうかい」
Dはかなりの長さを持ったメスを持って雄大の目の前でしゃがむ。
「腕は固定してきたようですね、かなり荒いですが」
「…ん、あぁ。…赤流の事、話した方がいいか?」
Dは顎に手を当てて唸り応えた。
「…ん〜そうですね、興味が無いわけではありませんね、では、気を楽に」
雄大は横たわり、しゃがんだDのメスがキラリと光る。
「では、手術でもしながらゆっくり話を聞きましょうか」
後書き
Dr.D(大丞)
性別:男
年齢:22歳
髪:?
目の色:?
身長:270cm
カヴァー:闇医者
ワークス:闇医者
異能名:『?』
ランク:A
霊遥葵雄大と神玉赤流の親友であった男。
ペストマスクに大きなハットを被っていて全身黒を基調としたカラーの医者。
顔を隠していたのは学生からずっとで、雄大や神玉でさえ素顔を知らない。
治癒系の異能であり、自分以外のメスで刺したものが治癒する。
また、医学もちゃんと学んでいるため、普通の診察もできるらしい。
空間に扉を作り、行き来できるらしいが原理はまだ謎である。
気分でたまに頭に黒いポストを被っているらしい。(おちゃめさんだ)
黒いポストの時に見かけたらラッキー!
人と異能者も分け隔てなく助けておるが、大体の人が怖がってそのことを話さないらしい。
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