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機動戦士ガンダムSEED 終わらない戦争

作者:伊10
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第零話 終わりの日

『………番機、補給と修理急げ!』

『敵艦隊、第一次防衛線突破!なおも前進中……陽電子砲、来ます!』

『ネオ・ジェネシス発射準備。展開中の各機、射線から退避せよ。』

レクイエム、そして機動要塞メサイアを巡る戦闘は、その激しさを刻一刻と増していた。ステーション・ワンにはゴンドワナがいるからそうそう抜かれる事はないだろう。だが、こちらは…………

『クロセ機、発進準備完了。いつでもどうぞ。』

俺の不吉な考えをオペレーターの声が打ち消した。そうだ、考えるな。ここは戦場だ。余計なことを考えていたら死ぬ。

「カムイ・クロセ、グフ!出るぞ!!」

一瞬強いGがかかり、次いで、慣れた浮遊感が体を包み込む。素早く愛機の頭部を左右に巡らせ、周囲の状況を確認する。この辺りはまだ静かなものだが、この広大な宇宙に於いては目と鼻の先、と形容してもいいような距離では熾烈な戦闘が行われている。光条が飛び交い、爆光が閃く様子は、無数の命が失われているという事実さえ無ければ、魅とれてしまうほどに幻想的だった。

「やっぱり押されてるか。」

冷静に観察すると、若干劣勢なのが分かる。

「………急ごう。」

誰にともなく呟くと、スラスターの推力を上げた。





―――――――――――――――――――――





戦闘宙域に入ると、早速ムラサメが襲い掛かってきた。

「邪魔ァ!!」

ビームサーベルを振り上げた腕をすれ違い様に切り落とし、背中にドラウプニルを2秒程浴びせかける。爆散したムラサメを尻目に、前後から挟撃を掛けてくる2機に集中する。

前の機にスレイヤーウィップを巻き付け、思いっきり振り回す。狙い通り後ろの機と激突し、動きが止まる。

「ハアァァァァ!!!」

2機重なった所を手にしたテンペストで纏めて両断する。爆光の陰から、今の2機の僚機らしいオオツキガタがレール砲を放つ。複雑な機動で回避しつつ、ドラウプニルで牽制、接近の隙を窺う。

埒が開かないと判断して、レール砲の一撃をシールドを上手く当てて弾いて、そのまま突進する。オオツキガタもただ接近を許す筈もなく、ビームライフルで弾幕を張るが、全てギリギリの機体制御でかわす。間合いに入ると同時にレール砲を切断しながら背後に回り込む。なおも振り向き、ライフルを撃とうとするオオツキガタだが、その時にはもう攻撃体勢に入っていた。コックピットを貫き、オオツキガタが沈黙する。

「次は………っ!?」

次の敵を探そうとした瞬間、コックピットに警報が鳴り響く。艦載用と思われる大型のミサイルが数発、こちらに突進していた。咄嗟に今しがた貫いたオオツキガタを盾にして距離をとる。

爆炎の向こうには白亜の船体が浮かんでいた。

「あれは!?」

前方に突き出した足のような艦首、翼を生やした天子のような外観。間違いようもない。

大天使(アークエンジェル)!!」

不沈艦と呼ばれ、無数の戦場を駆け抜けてきた名艦。その奥にはエターナルやイズモ級の姿も見える。

「今日こそ沈め……『チェストオォォォ!!!』っ!?」

雄叫びを上げながら突進、いや、特攻を掛けてくるムラサメ。

「チィィ!?無駄だぁ!!」

停止状態から一気に最速へ加速する。交錯する直前でスラスター推力を下方に集中し、無理矢理軌道を変える。通常、こんな真似をすればパイロットにも機体にも絶大な負荷がかかる。だが、このグフはそれを見越して間接の強度を強化している。俺自身については、元々Gには強いように“調整”されて生まれてきた。自慢ではないが、生身の肉体の強さは、ザフトでも一、二位を争える自信がある。

向こうはそれに無理矢理でもついていこうとしたのだろう。機体に過剰な負荷がかかり、四肢が分解している。

止めを刺そうと左手のドラウプニルを向けた瞬間、左腕毎吹き飛んだ。

「なっ!?っ………フリーダムか!」

現れたのは蒼い死の天使。フリーダム。正確には強化発展型だろうが、フリーダムの系列にいる事は間違いない。

パイロットはキラ・ヤマト。世界最高のスーパーコーディネーターだ。

スーパーコーディネーター。その単語は、個人的に相当不快だ。奴さえ居なければ、俺はこんな形では生まれてこなかった。

「お前個人に恨みはねぇし、なんの事かも知らんだろうが………俺はお前を墜とす!!」

左腕は肘から下が既に無いが、右腕のテンペストが有れば充分だ。スラスターを全開にし、一直線にフリーダムに向かう。フリーダムもサーベル二刀に持ち替え、近接戦に入る。

「オオオォォォ!!」

大上段から一気に振り下ろす。阻まれたと分かった瞬間に下がる、一瞬後には反対のビームサーベルがそこを通過していた。

「この!!」

そのままフリーダムと高速で打ち合う。がほんの数合で理解した。『手加減されている』

「ふざ……けんな!!」

苛立ちに任せてサーベルを振るうも、簡単に防がれる。

『通してくれ!』

唐突に通信が来た。発信源はフリーダム。キラ・ヤマトだ。

『早くしないと、オーブが!』

「うるせぇ!!」

『!?』

「議長は……やり方はどうあれ、平和を作ろうとしている!お前らは!それに!余計な波風をたてて何がしたい!!」

『デスティニープランは人の明日を縛る計画だ!見過ごす訳にはいかない!』

「例えそうだとしても!戦争するより遥かにマシだ!そんなに戦争が好きか!お前らは!!」

『違う!』

「違わない!お前らにしても、アルザッヘルにしても、交渉の余地はあった!先に仕掛けたのはお前らだ!!」

『カムイ!』

「っ!?レイか!?」

『フリーダムは俺に任せろ!片腕のMSじゃ無理だ!』

「………クソッ、任せた。」

割り込んで来たレイのレジェンドに任せ、一度撤退した。





――――――――――――――――――――――





「チッ、とうとうここまで……。」

左腕の交換と応急処置を終えた俺は再び出撃した、が、もうメサイアその物が戦場と化していた。

目の前の敵をただただ屠りながら戦場を移動していくと、ほとんど大破している友軍のMSがいた。損傷が酷く、ほとんど機種の判別が出来ない。

「そこの機体、無事か?」

『カムイ……か?』

「レイ!?大丈夫か!?」

『俺は……いい。メサイアには…戻れる。……それより、シンを……。』

「シン?シンがどうかしたのか!?」

『カムイ……、シンを、シンを……頼む。』

俺にはそれが遺言のように聞こえた。

「分かった………レイ、死ぬなよ。」

それだけ言って、俺はスラスターを吹かした。不安は消えないままだった。





「退けぇぇぇぇ!!」

何機目ともしれないムラサメを斬り飛ばす。

『なんだ!?あのグフは!?』

『あの機体、あの機動……間違いない!奴は“黒き亡竜”だ!』

オープン回線からそんなやりとりが聞こえる。黒き亡竜。この戦争でついた俺の渾名だ。

「邪魔なんだよォォォ!!」

俺は何かよく分からない焦燥に駆られ、ひたすらに敵機を屠り続けた。

その時だった。

「………え?」

メサイアが、堕ちたのは




「…………負けたのか、俺達は………。」

悔しさは無かった。ただ諦めにも似た何かが、静かに俺の心を支配していった。


















メサイア攻防戦(仮称)戦闘結果報告

カムイ・クロセ (16)
乗機:ZGMF―X2000 グフイグナイテッド
撃墜数39機
艦艇3隻
なお、本人に退役の意思あり。 
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