八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七十七話 江田島その十四
「白いつなぎの作業服着てるらしいな」
「その作業服って」
僕の同級生の子が言って来た。
「海軍のですよね」
「ああ、昔の海軍の作業服だ」
「ってことは」
「海軍の軍人さんの幽霊らしい」
「その幽霊が出てですか」
「手旗を振っていてな」
海軍、今も海上自衛隊でもしているそれだというのだ。
「見たら死ね、死ねって言ってきていたらしいな」
「手旗で」
「その幽霊もいるからな」
江田島の海にはというのだ。
「一人では絶対に入るなよ」
「その幽霊に引き込まれるとか」
「そんなことがあるかも知れないですが」
「俺はそうしたことは信じる」
幽霊の話はというのだ。
「だからだ」
「幽霊にも気をつけて」
「近寄るな、ですか」
「ついでに言うと旧兵学校はスポットだぞ」
こうした話の、というのだ。
「日本屈指のな」
「幽霊が一杯出るんでしたね」
「そういう話が多いんですね」
「ひょっとしたら海軍の軍服着た人見るかも知れないがな」
夜にそうした人を見た人もいるらしい。
「気にするなよ」
「若し声をかけたりしたらですね」
「やばいんですね」
「そうかも知れないからな」
若し怨霊だったりしたらというのだ。
「気をつけろよ」
「わかりました」
「そうします」
一年の子達はいささか引きながら先生に応えた、そしてだった。
僕達は夕食まで自由時間となった、僕はこの時はお風呂でも入ってゆっくりと思っていたがそうはならかった。
部屋に入ろうとするとだった、部屋のあるフロアに向かおうとエレベーターに入ろうとしたその時にだった。
香織さんがだ、私服姿で僕に声をかけてきた。
「あっ、義和」
「あっ、香織さん」
「これからどうするの?」
「一旦部屋まで戻ってね」
僕はまだエレベーターのボタンを押していない、その手を止めて香織さんに返した。
「それからお風呂にってね」
「考えてるの」
「そうだけれど」
「そうなの」
「香織さんは?」
「私はお外に」
「出ようとなんだ、けれど」
僕はその美沙さんに言った。
「あまりここは一人ではね」
「出ない方がいいわね」
「見知らぬ場所だから」
「それでよね」
「うん、何かあったらいけないからね」
「雅楽部でも言われたわ」
その部活の合宿に来ているというのだ、琴部も今来ているけれど香織さjんが話に出したのはこちらだった。
「一人では出歩かない様に」
「それじゃあ」
「けれど雅楽部も琴部も皆お風呂に入るって言ってて」
「外出の人がいないから」
「それだったら」
僕は香織さんの言葉を聞いてすぐにこう申し出た。
「一緒に行く?」
「義和と」
「うん、どうかな」
こう申し出た。
「これから」
「義和はそれでいいの」
「構わないよ」
微笑んで答えた。
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