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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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三つの楔

 
前書き
RAVE無事に読破しました。
ニーベルちっちゃいな!!もしかしたらシリルとかウェンディよりも小さいんじゃないかと思ってしまう。 

 
シリルとグレイ、二人の腕に刻まれた黒い模様。それは浮かび上がったのと同時に、風と冷気、互いの属性の魔力をその腕に纏っていく。

滅悪魔導士(デビルスレイヤー)だと?」
「なんだそりゃ?」

突然の変貌を遂げたシリルとグレイ。彼らのその姿に、その周りにいるものたちはただただ立ち尽くしている。

「滅竜が竜を討ち、滅神が神を討つ」
「となると滅悪は・・・」
「「悪魔を倒す魔法です(だ)」」

相手に見せている手のひらを強く握る二人の男。彼らが動き出すと同時に、マルド・ギールは戦闘体勢へと入る。

「ハッ!!」

最初に攻撃を放ったのは、胸にギルドの紋章を入れた青年。彼は魔力を帯びた腕を振るうと、目の前の敵は一瞬のうちに凍り漬けにされる。

「これは・・・シルバーの・・・」

グレイが操る氷の滅悪魔法。それは、十鬼門の一人であるシルバーから授けられたもの。マルド・ギールは覚えのあるその魔法に少々戸惑っているようだった。

パリンッ

凍り漬けにされた悪魔は自らの力でそれを砕く。しかし、そんな彼の懐に、小さな影が入り込んでいた。

「竜魔の・・・鉄拳!!」
「グッ!!」

水と風を纏った少年の拳が、彼の腹部を抉る。地面に着地する直前でそれを受けた悪魔は、後方へと押し込まれていた。

「それはノーランが手に入れた書物に載っていた・・・」

シリルの天空の滅悪魔法。それは、ノーランが実験台として彼に埋め込んだ魔法。以前から彼の行動を黙認してきたマルド・ギールは、それを使いこなすシリルを見て不敵な笑みを見せる。

「まさかあれを使いこなせるものがいたとは・・・それにシルバーの魔法も・・・奴が裏切ることはわかっていた。それがこんな形になろうとはな」

ノーランがダメ元で、遊び半分で実行した滅悪魔法の植え付け。それが実を結んだことに彼は驚いている。
さらにはグレイとシルバーの関係も、彼はすぐに見破った。シルバーは冥府の門(タルタロス)に所属していながら、各地の悪魔を葬っていた。そして、いずれその手が自分たちに及ぶことも想定していた冥府の王。だが、それは予想とは少し違う形で実現したことに、何やら悦を感じているように見える。

「運命とは、実に面白い」

そう言って悪魔は大量の荊でグレイとシリルを攻撃しようとする。しかしそれは、グレイに一瞬で凍らされ、さらにはシリルによって跡形もなく粉砕されていた。

「あの荊を一瞬で!!」
「マジかよ!!」
「すげぇ!!」

自分たちでは歯が立たなかった荊の呪法。それをものともしない二人の妖精に、三頭の虎は感嘆の声をあげる。

「フンッ」

しかし、マルド・ギールもそれで諦めることはしない。続けて荊を繰り出し敵を抑えようとする悪魔。だが、それはまたしても、全く同じ形で打ち破られてしまう。

「運命は実に面白いだぁ?こっちは面白くも何ともねぇよ!!親父の願いのために・・・」
「親父?」
「お前たちを滅ぼす!!」

シルバーの意志を受け継ぎ、家族を奪った悪魔たちを倒そうと決意したグレイ。彼の氷がマルド・ギールの腹部に突き刺さる。

「シリル!!」
「はい!!」

隣にいる、自分と同じ魔法を持った少年に声をかける。シリルはそれにうなずくと、二人は同時に地面を蹴り、マルド・ギールに迫る。

「くたばりやがれ!!」
「喰らえ!!」

互いの背中を合わせ、悪魔の上から襲い掛かるグレイとシリル。だがその時、一つの影が交差しようとする三人に迫っていた。

「氷魔・零ノ太刀!!」
「水中天嵐舞・改!!」

トドメの一撃を放ったグレイとシリル。だが、その攻撃は、間に入った大柄な男に受け止められてしまった。

「「!!」」

突然割って入った男。その男が手のひらを向けると、グレイとシリルは吹き飛ばされる。

「うおっ!!」
「うわっ!!」
「グレイさん!!」
「シリル!!」

地面を転がる二人の妖精。マルド・ギールは己を救った男を見て、ニヤリと笑みを浮かべている。

「間に合ったか」
「一人増えた。つーか、この匂い・・・」
「そんな・・・」
「あぁ・・・」
「ウソだろ・・・」

鼻をヒクヒクとさせたナツ。彼はたった今現れた男を知っていた。そして、彼よりもその男と関わりのある三人は、その姿を見て冷や汗を浮かべている。

「人間たちのギルドの頂点にいたもの。さすがに、良き悪魔へと転生した」

胸につけられた巨大な傷。長く伸びた真っ白な髭。そして、首にかけられた赤い巨大な数珠。

「ジエンマ」

その男は、かつて最強だった頃の剣咬の虎(セイバートゥース)のマスターだった、ジエンマだった。

「マスター・・・」
「「・・・」」

彼に恐怖によって支配されてきた三大竜は、その姿を見て背筋を凍らせている。

「あいつ・・・あの時の・・・」
剣咬の虎(セイバートゥース)のマスターなんですか?」

ユキノの一件で剣咬の虎(セイバートゥース)に殴り込んだナツと、大魔闘演武のスタンドから異様な雰囲気を醸し出していたことをよく覚えているシリルはそういう。

「ミネルバと一緒に、悪魔にされてたのか」
「されてた?違うぞ。自ら望んでこの力を手に入れた。すべては、最強に至るために」

キョウカに捕まって悪魔へと転生させられたミネルバ。だがジエンマは、自ら望んで悪魔になったという。それを聞いた三大竜は、皆正気とは思えぬ行動に驚くしかできなかった。

「十鬼門を遥かに凌ぐ力を持つ悪魔。我が新しき下僕だ」
「下僕?この天下に轟く我が力を、下僕と申すか!?」

マルド・ギールに下っ端扱いをされたジエンマは、怒りで己の力を解放していく。

「冥王!!小僧どもを片付けたら、次はうぬの番ぞ!!」

全身を魔力のオーラで包み、その存在を知らしめるジエンマ。かつてのマスターにしてその力を知る三人は、青ざめ、動けなくなっていた。

「ビビるなぁ!!」
「「「!!」」」

その三人を見て、ナツは大声で叫ぶと、ジエンマ目掛けて突進する。

「こんな奴にビビるこたぁねぇぞ!!進めぇ!!」

ぶつかり合う拳と拳。だが、悪魔に転生した男の方が、明らかに押しているように見える。

「うぬに用はない」

みるみる押されていく火竜(サラマンダー)。彼は歯を食い縛り必死に耐えていたが、やがて押し負け、壁へとぶちこまれる。

「ナツさん!!」
「弱者が!!弱弱!!」

己の力が最強と考えているジエンマは、簡単に飛んでいったナツを見下しそう言う。その男に、ローグとグラシアン、そしてスティングが向かっていく。

「いくぜ!!」
「はぁぁぁぁぁ!!」
「俺はあんたを!!」

果敢に向かっていく三大竜。しかし、三人はジエンマに魔力をぶつけられると、なす統べなく吹き飛ばされる。

「「「うわぁぁぁ!!」」」
「弱弱!!弱者よのぉ三大竜。ドラゴンの子というよりは、トカゲの子よのぉ」
「テメェ・・・」

地面に叩き付けられた三人の方へとゆっくり歩いていくジエンマ。スティングたちは彼の言葉に怒りを覚えていた。

「スティング、ローグ、グラシアン。貴様らをこの手で始末できる日を待ちわびておったぞ」

ジエンマはそう言うと、彼らの周囲を爆発させる。それにより、三人の姿は煙に包まれ、確認できなくなっていた。

「スティング!!」
「ローグさん!!」
「グラシアン!!」

普通に喰らったら一溜りもない攻撃。ナツとシリル、そしてグレイは心配し彼らの名前を叫ぶ。

「大丈夫だ」
「ビビるこたぁねぇ」
「俺たちは・・・」
「!!」

辺りに広がる黒煙。その中で、三つの人影が動いているのがシリルたちの目に見える。そしてその影は、大男目掛けて地面を蹴り、煙の中から飛び出すと、かつてのマスターの顔面を殴り付ける。

「「「進むんだ!!」」」

息のあった連携で敵の顔に攻撃を押し込む三大竜。ジエンマはそれを予測できておらず、もろに喰らっていた。

「こっちは任せろ!!」
「こいつは絶対!!」
「俺たちが倒す!!」

忌々しい記憶。それを清算するために、三大竜はジエンマを打倒することを決めた。

「弱者の自惚れはみっともないものだ!!来い!!三大竜!!」
「いけるな?スティング、グラシアン」
「もちろん」
「きっちり片付けて、お嬢をギルドに連れて帰ろうぜ!!」

なおも強者の余裕を見せるジエンマ。それに対し三大竜は、臆することなく向かっていく。

「やれやれ、まだ感情面の調整が不完全だな」

怒りにも似た感情を見せ、スティングたちと互角に渡り合うジエンマを見て、マルド・ギールはため息をついていた。その悪魔の前に、三人の妖精が立ちふさがる。

「もう守ってくれる兵もいねぇ」
「お前は俺たちが――――」
「自惚れるのはまだ早い」

悪魔に対して絶対的な力を誇る滅悪魔法。それを駆使しマルド・ギールを圧倒していたグレイとシリル。だが、マルド・ギールは彼らを倒すために、ついに本気を見せる。

「その力、マルド・ギールの真の姿の前でも、通用すると思っているのか?」

自身の力をみるみる高めていくマルド・ギール。それと同時に、彼の体につけられた傷が、次第に癒えていく。

「傷が・・・」

完全にダメージを修復させたマルド・ギール。次第に彼の体にも変化が起こる。手が、腕が、足が・・・人間と同じ姿だった彼の体は、翼の生えた悪魔へと変化した。

「400年ぶりにENDが目覚めるのだ。マルド・ギールも目を覚まそうではないか」

エーテリアスフォームへと変化したマルド・ギール。その目は、正面にいる三人の妖精へと向けられる。

「我が名は、マルド・ギール・タルタロス。冥府の王にして、絶対の悪魔)

先程までよりもさらにプレッシャーを上げる敵に、シリルたちは飲み込まれそうになる。

「ナツ、シリル」
「はい」
「わかってる」

腕に氷、炎、水と風、それぞれの属性を纏わせ、敵の跳ね上がるプレッシャーに負けまいと意識を集中させる。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名にかけて、お前を倒す!!」
「来い。人間ども。これが最後の戦いだ」

にらみ合う両者。先に動いたのは、三人の妖精たちだった。
先手必勝と言わんばかりに絶対の悪魔に向かうシリルたち。マルド・ギールはそれに対し、両手と翼を大きく広げると、先程までとは比べ物にならない速度で荊を作り、三人へと解き放つ。

「凍り付け!!」
「燃えろ!!」
「砕け散れ!!」

交わる三人の腕。彼らの魔力は迫り来る荊を、瞬く間に無効化する。

バサッ

しかし、それは敵の予測のうちだった。崩れ落ちる荊の上から、翼をばたつかせる音が聞こえそちらを向くと、こちらに向かってくるマルド・ギールの姿が見えた。

「うおっ!!」

すると、悪魔はナツの頭を掴むと、岩の壁に向かって彼を投げ捨てる。

「ナツ!!」
「ナツさん!!」

投げ飛ばされた青年に視線を向けたグレイとシリル。だが、そんな余裕はなかった。マルド・ギールはすぐさま二人をナツ同様に掴むと、彼と同じ方向へと投げ飛ばす。

「これが、冥府の門の向こう側の世界」

投げられた三人は壁に打ち付けられるように衝突する。マルド・ギールはその中で一番上になっているグレイの頭を掴むと、三人の体を削り取るように壁を擦りつけながら進んでいく。

「「「うあああああああ!!」」」

あまりの激痛に悲痛の叫びを上げるシリルたち。マルド・ギールはその声を聞き、さらに速度を上げていく。

「削り取ってやろう。貴様らの感情までも」

自分たちに抗った人間たちに知らしめるため、悪魔はその力を存分に使い、シリルとグレイ、そしてナツの意志と肉体を削り取ろうと攻めた。






















「ぬおおおおお!!」

地面に突き刺さるジエンマの拳。スティング、ローグ、グラシアンはそれを回避すると、かつてのマスターを鋭く睨み付ける。

「あんたが・・・お嬢を巻き込んだのか?」
「よくよく使えぬ小娘よ。悪魔の力でも与えられれば、少しはマシになると思ったが、弱者は弱者のままだったようだな」

ジエンマはミネルバを幼き頃から徹底的に指導してきた。だがそれが原因で、彼女の性格は歪んでしまい、大魔闘演武の際のような卑劣な行動を取るようになってしまったのである。

「ふざけんなよ!!」
「自分の娘だろ!!」
「娘・・・か」

自分の娘を悪魔にするなど、普通ならやれるはずがない。それが親心というものだと思ったグラシアンとローグが怒声を上げる。だが・・・

「否!!」

その想いは、目の前のひねくれた強者には届かなかった。

「我が最強の血を後世に残すためだけの――――」
「黙れぇ!!」

自分の子供を子供とは思わず、ただの道具と見ているジエンマに、スティングは怒りの拳を叩き込む。その怒りが通じたのか、ジエンマは膝をつき、後方へと押される。

「効かぬ!!」
「うわぁ!!」

だが、それでジエンマが倒れることはない。すぐに立ち上がった彼は、魔力の塊でスティングをすぐさま攻撃する。

「どこを見てる」
「!!」

ジエンマの真横から聞こえる声。しかし、その声の先には誰もいない。なぜならその男は、その声の反対側に立っているのだから。

「お前がしてきた行いの報いを受けろ」

そう言うとグラシアンはある人物へと変身する。長い黒髪でお団子を作った、中華風の服に身を包んだ、彼らのギルド最強の魔導士。

消えろ(イ・ラーグド)!!」

ジエンマを球体に閉じ込め、その空間を爆発させるミネルバ(グラシアン)。彼は敵の娘であるミネルバの力で、ジエンマを倒そうと試みた。

「その程度か?」
「!?」

しかし、その攻撃は微塵も彼には通じていなかった。

「フンッ」
「がはっ!!」

地面を強く踏み込み、グラシアンの腹部に拳を押し込むジエンマ。あまりの速度にグラシアンは反応できず、空中へと打ち上げられる。

スゥ

グラシアンを打ち上げたジエンマ。その後ろに、影となり身を潜めていたローグが現れる。

「フッ!!」
「ぐっ!!」

完全に死角から迫り、不意をつけるはずだったローグ。それなのに、ジエンマは即座に振り返ると、ローグの腹を殴り軽く宙にあげ、その反動を利用し地面に強く叩きつけた。

「うぬらごとき小童が、剣咬の虎(セイバートゥース)を乗っ取った気でいるのか?」

地面に伏すローグを見下ろしながらジエンマがそう言う。その言葉を受け、ローグは手をつきゆっくりと立ち上がる。

「俺たちは・・・剣咬の虎(セイバートゥース)を取り戻した・・・ギルドの・・・あるべき形に」
「笑わせるでないわ!!」
「っ!!」

フラフラのローグの頭部に拳を入れる。ローグはなんとかそれに耐えたが、かなりのダメージを受けたのは間違いない。

剣咬の虎(セイバートゥース)のあるべき姿とは、最強であること!!それをうぬらの弱さが、台無しにした!!」

周囲が驚くほどの速度で成長を遂げた剣咬の虎(セイバートゥース)。ジエンマはそれを自らの力でやったという自負があるため、最強の座から落ちた彼らに腹をたてているのだった。

「その通りだ・・・俺たちは弱かった・・・」
「だが、その弱さは、あんたのいう弱さじゃない」
「何?」

なんとか立ち上がったグラシアンとスティング。彼らが何を言いたいのか、ジエンマは理解できずに彼らの方を向く。

「仲間を、仲間と思えない弱さ」
「それが・・・俺たちの弱味だ」

ジエンマの支配により、ギルドに汚点をつけた魔導士を切り捨ててきた彼ら。今思えばそれは、非道な行為だったと彼らは思い、考えを改めている。

「俺たちはもう・・・そんなギルドはごめんなんだ」
「勝利することだけじゃない・・・」
「真の意味で強いギルドにするために・・・俺たちは、0から歩き出したんだ」

三人にはずっと、大切な相棒がいた。そして、その相棒たちと同じように仲間を大切に思うギルドを見た。彼らはその強さに惹かれ、自分たちもそうなりたいと願ったのだ。

「だから・・・あんたはもう・・・」
「俺たちの前から・・・」
「消えてくれ!!」

過去の己の過ちから逃れるために、その原因となったものを倒す。昔の自分と決別するために、三人は最大の脅威へと立ち向かう。

「「「はああああああっ!!」」」

放たれた三人の拳、しかしそれは、ジエンマが魔力を放出したことで簡単に防がれてしまった。

「フハハハハハハッ!!真に強いギルドだと?我は悟った!!そんなものは存在せぬ!!最強とは個!!我が意志のみ!!」
「いや、あるよ。強いギルドが」
「すごく近くにな。俺たちは幸せだ」
「こんなにも強くて、優しくて、真っ直ぐなギルドに出会えた!!」
「腑抜けが!!」

太く、鍛え抜かれた腕を振るうジエンマ。その一撃はスティングたちの肩を捉え、彼らのそこから鮮血が吹き出す。

「個が最強なり!!他人への依存など、弱弱弱弱弱!!弱者の極み!!」

なおも自らの考えを押し通そうとするジエンマ。しかし、それは彼らも同じことである。

「それでも!!俺たちは、誰かのために生きて・・・生きるために、誰かを愛するんだ!!」
妖精の尻尾(フェアリーテイル)のように!!」
「強く!!」
「ほざけぇぇぇぇ!!」

互いの感情がぶつかり合う両者。その中で三大竜は、己の意志を貫くために動く。

「あんたの歪んだ傷口を縫う!!」
「俺たちの三人の・・・」
「三大竜の楔でな!!」

この時、三大竜の意志は一つになった。元々コンビネーションには優れていた彼ら。そしてそれは、仲間を想う力によって、よりいっそう輝きを増していた。

「「「白幻影竜の絁!!」」」

三人の攻撃が、ジエンマの体を激しく切りつける。

「バカな・・・」

まさか自分が彼らにやられるとは考えもしなかったジエンマは、口から血を吐き、その場に崩れ落ちた。

「「「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」」」

呼吸を乱し、肩で大きく息をしている三大竜。彼らは過去の忌々しい記憶とのケリをつけたことで安心し、限界を迎えたところでゆっくりと地面に倒れる。

「やったぜ・・・」
「後は・・・」
「頼ん・・・だ・・・」

地に伏したグラシアン、ローグ、スティングの三人。彼らは上空で戦う三人の妖精に、全てを託した。























マルド・ギール・タルタロスの攻撃にされるがままのシリルたち。その中で、一番敵に近い場所にいる氷の魔導士が、敵の足を掴む。

「!!」

グレイがマルド・ギールの足を掴んだことで彼の後ろにいるシリルとの間に若干のスペースが空いた。彼はその隙を見逃さず、ナツと共に左右に散ると、敵の背中を取る。

右と左、そして正面。それぞれの角度に散らばった三人の妖精は、自身の腕に魔力を纏わせ、それを悪魔へと叩きつけた。

「「「おう!!」」」

三人の虎の想いを受け取った妖精たち。敵の野望を打ち砕くため、最後の戦いが幕を開ける。










 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
この漢字『絁』が出てこなくてすごく苦労しました。そしてジエンマは一話で退場です。
いよいよ冥府の門(タルタロス)編もクライマックスです、
基本は原作よりのつもりですので、多目に見て頂けると幸いです。 
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