Blue Rose
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第十六話 神戸を後にしてその三
「そうしたものだから」
「そのことは本当に」
「考えが及ばなかったわね」
「これまでね」
「そうよね、無理はないわ」
優花が生理等のことにも考えが及ばなかったことをだ、優子は責めなかった。穏やかな声でこう言ったのだった。
「それはね」
「そう言ってくれるんだ」
「だって女の子になるってだけで」
そのことだけでというのだ。
「大変なことだから」
「それでなんだね」
「そう、そこまで考えが及ばなくても」
それでもというのだ。
「当然よ」
「そう言ってくれるんだね、姉さんは」
「大変なことだから」
身体が女性になる、そのこと自体がというのだ。
「とてもね」
「そうなんだね」
「そう、だから私が女の子に必要な物事をね」
それこそというのだ。
「全部用意しておいたから」
「それじゃあ」
「任せてね」
微笑んでだ、優子は弟に告げた。
「全部ね」
「それじゃあ」
「長崎に行く用意をしておいて」
「そうするね、あと僕がこっちにいない間は」
「姉さんはずっとここにいるわよ」
この神戸にとだ、優子は弟にこのことについても答えた。
「離れることはないわ」
「そうだよね」
「そう、それでね」
「それで?」
「お料理とか家事はちゃんとするから」
優子自身がというのだ。
「安心してね」
「姉さんも出来るからね」
「優花程丁寧じゃないけれどね」
このことはだ、優子は少し苦笑いになって弟に告げた。
「出来るから」
「うん、ただお酒はね」
「控えろっていうのね」
「あまり飲み過ぎないでね」
「わかってるわ、お酒は飲んでもね」
それでもとだ、優子も答える。
「飲み過ぎないわ」
「そうしてね」
「わかってるわ、あとお料理を作っても」
「栄養のバランスと」
主婦の様にだ、優花は姉に言った。
「予算もね」
「そっちもなのね」
「考えてね」
「両方だね」
「そう、両方考えて」
栄養のバランスに予算もというのだ。
「作ってね、お洗濯は溜めない」
「ちゃんと毎日よね」
「洗って、とはいってもある程度溜まってからでもいいから」
洗濯はというのだ。
「それでお掃除もね」
「お家の中をゴミだらけにしないことね」
「そうしてね」
「そう、ちゃんとね」
「そうしたことをして」
「いつも奇麗にしていてね」
「優花はそうしたことしっかりしてるわね」
昔からだ、だから優子も家事は全て弟に任せていた。だから仕事にも専念出来たのだ。少なくともこの時までは。
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