どうして俺ばかり
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第四章
「果たして」
「そう言われるとな」
オスカーも困った顔になって首を傾げさせた、そのうえでの言葉だった。
「俺も返答に困るな」
「そうだろ、まあそこはな」
「俺がどう結論を出すかか」
「無名と悪名どっちがいいかな」
「ナチスみたいには言われたくないしな」
人間の世界の彼等の様にだ。
「ありのままの俺達を知って欲しいんだよ」
「けれどそれだと魅力を感じないんだよ」
言われている狼のそれをというのだ。
「どうもな」
「難儀な話だな」
「自分を宣伝するのもいいが他の話を聞いたらどうだい?」
小鳥はここでオスカーにアドバイスもした。
「そうしたらどうだい?」
「アンケートか」
「宣伝もいいが他の生きものや人間の話を聞くのもいいだろ」
「それもそうだな」
オスカーは小鳥のアドバイスに頷いた、そしてだった。
一時宣伝を中断して森の他の生きものや街の人間達に狼のどうしたところが魅力なのかインタヴューをしてアンケートも取った、街の犬や猫達にもだ。
猫達は自分達にアンケートをしたオスカー自身にだ、こう答えた。
「怖いところ?」
「ワイルドなところ?」
「狼のいいところって」
「悪いところじゃないの?」
「他の生きものが出来ないことを平然とやってのける」
「そこに痺れる憧れる」
「極悪非道なところが」
まさにというのだ。
「悪のカリスマ」
「永遠の悪役ヒーロー」
「悪のスタイリッシュ」
「悪いけれど精悍」
「残忍で貪欲で狡猾で獰猛」
「血に餓えた野獣ってイメージが」
狼の魅力だとオスカーに語る。
そしてオスカー自身にだ、街の猫達はこうも言った。
「正直家庭的な狼さんなんてね」
「全然よくないよ」
「何の魅力があるのか」
「全然面白くないよ」
「格好よくないわよ」
「狼自身を前に言いたい放題だな」
アンケートを聞くオスカーは猫達に憮然として返した。
「俺が傷つくと思わないのか」
「いや、全然」
「猫は嘘吐かないから」
「誰に対してもはっきり言うのが私達よ」
「それが狼さん自身でもね」
「言うわよ」
「全く、それは全部偏見だけれどな」
しかしとだ、オスカーは今自分がしていることを思い出して猫達に返した。
「御前等はそう思ってるんだな」
「うん、そうだよ」
「狼さん達のどうしたところが魅力かっていうとね」
「やっぱり悪いところだね」
「悪ってところがいいんだよ」
「やれやれだ、犬共に聞いてもそうだしな」
勿論人間の老若男女に聞いても森の生きもの達に聞いても同じだった、誰もが狼の魅力は悪にこそあるのだと言う。
「俺達は悪でないと駄目か」
「悪くなかったら犬さんだよ」
「外見そのままじゃない」
「結局犬さんって狼さんからなってるし」
「一緒じゃない」
「狼が悪くなかったらね」
「犬さんと同じだよ」
やはりずけずけと言う猫達だった。
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