杞憂
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第四章
「そんなのに使うよりな」
「それよりもプロ野球の球団持った方がいいか」
「あっちは多少赤字でも企業の宣伝になるだろ」
「毎日新聞やテレビで企業の名前言ってもらえるからな」
「近鉄のトップはわかってなかったけれどな」
徹は眉を顰めさせてこうしたことも言った。
「だから多少以上に赤字でもいけるがな」
「軍需産業は違うからな」
「だからか」
「それに戦争になって商売出来ないだろ」
「とてもな」
「それじゃあ戦争がないことがな」
「日本にとってもいいんだよ」
最高だというのだ。
「わかったな」
「そうだな、しかもな」
ここでだ、昌也はこうも言った。
「何か俺が昔言っていたことはな」
「そのこともわかったな」
「ああ、言っている人達はな」
「おかしな人達ばかりだろ」
「さっき話に出た北朝鮮を好きな人ばかりだな」
「スウェーデン好きな人もいるだろ」
「あの人もな」
とある女性学者だ、その人の話もした。
「言ってることが滅茶苦茶だろ」
「あの人スウェーデンのこと全然知らないな」
この国が実はかなりの軍備を持っている国家であることをというのだ。
「そうだな」
「そうだよ、あの人もな」
「そうした人だからな」
「何かな」
つくづくという口調になっていた昌也だった。
「俺が言っていたことは杞憂だったんだな」
「全部な」
「そして馬鹿だったんだな」
「そうなるな、正直言って」
「勉強すべきだな」
昌也は徹に深く考える顔で述べた。
「本当にな」
「そうだな」
「そういえばこの前な」
ここでだ、昌也は徹にこうした人物のことを話した。
「天皇制反対でも北朝鮮のあの世襲はいいって言う奴と会ったな」
「世襲制の共産主義はいいのか」
「そう言ってる奴いたな」
「そいつは馬鹿だろ」
「やっぱりそう思うか」
「昔の御前もそこまでは言ってないからな」
「俺でもあそこはおかしいって思っていたからな」
かつての昌也でもというのだ。
「だからな」
「そうだよ、だからな」
それでというのだ。
「どうせそいつ自衛隊嫌いだろ」
「全廃すべきとか言ってるな」
「もうそうした奴はどうしようもない」
「俺と違ってか」
「御前はそこまで馬鹿じゃなかったからな、そこまで馬鹿だとな」
それこそというのだ。
「もう付ける薬がないさ」
「そうなるか」
「そこまで馬鹿だと杞憂が杞憂ともわからない」
昔の昌也と違ってというのだ。
「もう放っておくしかないな」
「そうなるか」
「ああ、本当にな」
徹もそうした者には言わないのだった、昌也に対するのと違って。
「杞憂が杞憂とわかるにはそれなりのものが必要なんだよ」
「馬鹿でもか」
「馬鹿でも自分の馬鹿がわかればいいさ」
こう言うのだった。
「それがわからないともうどうしようもない」
「そういうことか」
彼もわかった、そしてだった。
そうしたことを話してだった、二人は日常の会話に入った。昌也はもう徴兵制だのそうしたことは一切言わなくなりむしろ日常の話を多くする様になった。杞憂が晴れた後は。
杞憂 完
2015・11・24
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