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5部分:第五章


第五章

「満足できるわ。味も量もね」
「どちらでもだね」
「ええ、満足できるわ」
 こうだ。作った淳司に答えるのだった。
「いいものね」
「美味しいんだね」
「ええ、これならメインディッシュでもいけるわね」
「そう。じゃあこれは特になんだ」
 淳司もだ。香菜の言葉にだ。笑みになる。
 見れば淳司もそのシュバインスハクセを美味しそうに食べている。勿論付け合せのキャベツンもだ。どれもふんだんに食べている。そしてだった。
 パンは出なかった。その代わりにだ。
 これまた丸いものが出て来た。それについても尋ねる香菜だった。
「これは?」
「うん、ジャガイモの玉だよ」
「ドイツはジャガイモだけれど」
「そのジャガイモを小麦粉と一緒に練ったものなんだ」
「それがこの玉なの」
「そうだよ。これも美味しいよ」
 こう言ってだ。淳司は香菜にその玉を食べることを勧める。そうしてだった。
 実際にそのジャガイモ玉を食べてみてだ。また言う彼女だった。
「これもかなり」
「美味しいよね、これも」
「こうしたドイツ料理もあるのね」
「そう、ドイツ料理は色々あるんだよ」
「ううん、ジャガイモっていったら」
 香菜のイメージ、ドイツ風でいうとだった。
「茹でて上にバターと乗せたりとか潰してマッシュポテトにするとか」
「そういうのだよね」
「あとはパンケーキとか」
 そういうのは知っていたのだ。
「ドイツはジャガイモを潰して食べるのよね」
「そうだよ。それが基本だよ」
「だから。それのイメージだったけれど」
「これも一旦潰すからね」
「潰すっていっても様々ね」
「そういうこと。これも変わってるけれどね」
「美味しいわ」
 そのジャガイモの玉も楽しめた。こうしてあらかた食べてだ。
 いよいよデザートになる時にだ。淳司は香菜に言ってきた。
「さて、それじゃあね」
「ワーグナーね」
「そう、そのワーグナーのオペラからできた料理だよ」
「それがデザートなの」
「うん、オードブルかメインディッシュだって思ったかな」
「そこまでは考えてなかったわ」
 具体的にはどういった料理がそうなのかまではだ。香菜は想像できなかったのだ。それにデザートと言われてもだ。彼女はどうもぴんとこないものがあった。
「ローエングリンよね、私がさっき観ていた」
「そう、それだよ」
「ローエングリンね」
 そこから連想するものはというと。
「白鳥?」
「あっ、鋭いね」
「っていうか凄いインパクトがあるから」
 ローエングリンにおいてはだ。まずはそれだというのだ。
「最初ローエングリンは白鳥に曳かれた小舟でやって来るから」
「しかもその白鳥の正体が」
「ヒロインエルザ姫の弟でね」
「行方不明になっていたゴッドフリートだから」
「余計にインパクトがあるから」
 それだけそのローエングリンという作品では白鳥が重要な位置にあるのだ。まさに作品のモチーフ、聖杯や剣と並んでだ。そうなっているものなのだ。
 
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