魔法艦娘Reinforce
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第4話
前書き
皆さんお待たせ(?)しました。久々の更新です。
リーンホースが鎮守府に着任した日の翌日の朝。鎮守府のグラウンドで朝礼が行われていた。
「それでは、朝礼の最後に昨日着任した新たな艦娘を紹介しよう。上がってきたまえ。」
提督に呼ばれ1人の艦娘、リーンホースが壇上に上がった。
「スペースアーク級巡洋艦のリーンホースだ。」
「既に何人かもう会って知っていると思うが、彼女は俺と同じ世界出身の艦だ。強力な艦娘ゆえ、練度が上がり次第、最前線で戦って貰おうと思っている。君達には不慣れな彼女の面倒を見て貰いたい。以上だ。」
朝礼を終えた後、艦娘達は食堂で朝食をとる。今日は1人の艦娘の周りに人だかりが出来ていた。言わずもがな、リーンホースの周りである。
集まった艦娘達は次々と質問をぶつけた。リーンホース自身の事はもちろん、彼女と提督の居た世界や提督についても聞かれた。この時、リーンホースが提督の二つ名が“鉄の貴公子”であった事を教えてしまったため、暫くの間提督が一部の艦娘から“鉄の貴公子様”とからかわれる事になるのはまた別の話だ。
「やっと解放された。」
質問攻めから解放されたリーンホースは食堂のテーブルにぐったりと伏せていた。
「大丈夫か?」
そう声をかけたのは妙高型重巡の那智だ。昨日、重巡寮で暮らす事が決まったリーンホースは一足先に重巡および航巡の面々と顔見せをしていた。
「なんとかな。」
そう言うとリーンホースは席から立ち上がった。
「確か、この後演習場だったか?」
「ああ。私の艦としての特性を見て、訓練メニューを決める為だそうだ。」
「そうか。なら頑張って来い。お前と共に戦える日を楽しみにまっているぞ。」
那智にそう見送られ、リーンホースは演習場に向かった。
演習場に着いたリーンホースは艤装を装備して待機していた。
「では、最初の試験を行う。内容は指定されたコースを通りながら周りにあるブイに付けられた的を砲で撃ち抜いてくものだ。ミサイルを使っても構わんぞ。」
試験を直々に見に来た提督がそう言った。隣には秘書艦である正規空母の天城の姿がある。
「それと、テストは水上航行とミノフスキークラフトを使用して飛行した状態の2回行う。まずは水上航行からだ。では始め!!」
提督の掛け声と共に、リーンホースは水上を駆け出した。まず、メガ粒子砲で目の前の的を撃ち抜く。次にカーブしながら左右のメガ粒子砲で2つの的を同時に撃ち抜いた。
「なんと!?」
「嘘!?」
それを見た提督と天城は驚愕する。2つの標的を同時に撃ち抜くのは、高練度の艦娘でも難しいからだ。リーンホースにこれが出来たのはリインフォースが持っているスキル“分割思考(マルチタスク)”によるものだ。これは複数の事を同時に思考する魔導師の必須スキルで、当然リインフォースも使用出来る。
この後、リーンホースはこのテストでこれまでに無い好成績を出した。
「素晴らしい結果だ。だが、一体どうやって複数の的の同時撃ちなどと言う芸当を行ったんだ?」
テストを終えた後、提督が聞いてきた。
「・・・司令は私の中に私の容姿の元になった人間の記憶があると言うのは知っていますか?」
「ああ。報告は受けている。」
「その人間の持つ技能に分割思考(マルチタスク)という思考を分割し、複数の事を同時に思考すると言うものがあるので、それを利用したのです。」
「何?君は技能も引き継いでいるのか?」
「はい。」
「そのスキルは他の艦娘に伝授する事が可能か?」
「多分、出来ると思います。」
魔法はリンカーコアと言う機関が生み出す魔力により行使される。だが、分割思考はその魔法を効率よく使う為の脳によるスキルのため、理論上はリンカーコアが無くとも取得可能なハズだ。それに、魔法に関係する技能だが、魔法技術ではないため公開してしまっても構わないとリインフォースは考えていた。もっとも、リーンホースの部分がカムナ・タチバナと言う提督を信頼していると言う事もあるが。
「そうか。ならば練度が充分に上がったら艦娘達に伝授してくれ。では、次は飛行しながらのテストを行うぞ。」
「了解です。」
飛行しながらのテストは水上航行状態でのテストよりも短いタイムとなった。空中であるため水の抵抗が無いのはもちろんのこと、空中戦はリインフォースにとっては慣れているからである。
「タイムはもちろんのこと、射撃の狙いも正確だな。」
提督はリーンホースのテスト結果をそう評価する。
「これならば、水上では体重移動、空中ではAMBACの訓練を重点的に行うメニューでいけるな。」
「AMBACですか?」
AMBACと言うのはモビルスーツの姿勢制御方法の一つで、手足を動かした反作用を利用して姿勢制御を行う方法だ。
「君達艦娘は人型をしているからな。モビルスーツの運用ノウハウを取り入れられる所は取り入れている。特に君は空中戦も考慮しなければならない。」
提督の言葉を聞いてリーンホースは納得した。確かに人型の艦娘はそれまでの艦艇と同じような運用をしようにも無理が出て来ると思われるからだ。
また。提督は彼が宇宙世紀からモビルスーツ関連の技法を持って来る以前も、兵士に白兵戦などの技術を取り入れていたと言う事も言った。
「さて、次は航空戦と対空防御のテストを演習形式で行う。相手は天城が務める。今回天城の放つ艦載機は訓練用だから落としても問題無いし、弾も模擬弾だ。」
「了解です。」
リーンホースと天城は距離をとって向かい合った。
「では、始め!!」
「モビルスーツ隊、発進!!」
「第一次攻撃隊、発艦!!」
そして、提督の合図と共に2隻はそれぞれ艦載機を発艦させる。
リーンホースはVガンダムヘキサにガトリングガンを、ガンブラスターにビームライフルを装備させ、空中戦用とした。一方、2組のセッターに乗った2機のガンイージーは片方にビームライフル、もう片方に対艦攻撃用にペイント弾入りのバズーカを装備させた。
一方、天城は零式艦戦52型、彗星、天山の標的機使用を用意していた。天城は初めてのテストなのだからもっと性能の低い機体でもいいのではないかと思っていたのだが、提督はむしろこれでも足りないくらいだと言っていたので従った。
発艦した艦載機達は丁度真ん中ではなく、真ん中より天城側に寄った所で接触する。モビルスーツはその形状から音速こそ出せないが、それでもレシプロ機よりは速かった。
接触するとVガンダムヘキサがガトリングガンによる面の攻撃を行い、母艦の脅威となりうる艦攻と艦爆を次々と撃ち落とし、ガンブラスターがVヘキサにに攻撃して来る艦戦を撃ち落とした。
しかし、数が多い為か全てを撃墜する事は出来ず、抜けて来た機体もあった。
「対空防御!!」
それに対してはリーンホース自身が3連装対空機銃で迎撃する。
一方、セッターに乗ったガンイージは、ビームライフルを装備した機体が近付く艦戦を撃ち落とし、天城へバズーカの弾を叩き込むべく突き進んでいた。ガンイージの妖精達は余裕だった。相手はレシプロ機ばかりで、まるでモビルスーツの相手にならない。そう油断した矢先だった。セッターの1機が撃墜判定を受けたのは。零戦の攻撃がビームライフルを持つガンイージのメインカメラとデュアルセンサーに直撃したのだ。モニターの映像がサブカメラに切り替わるまでの一種、レシプロの戦闘機ごときにメインカメラを潰された事に困惑した妖精は機体のバランスを崩し、セッターから落ちてしまった。慌てて、バズーカ装備機がセッターを操作し、ビームライフル装備機が海面に叩きつけられる前に救出する。しかし、その際隙だらけになった所を複数の零戦の機銃を受け、それがセッターの装甲の薄い部分に当たった事で撃墜判定を受けてしまった。
“油断なんてしてどうするのさ!これが演習じゃなかったら戦死だよ!!”
もう1機のセッターに乗るビームライフル装備のガンイージの妖精は悪態をついた。彼女の方は油断する事無く、こちらを撃ち落そうと近付いて来る零戦を撃ち落としていく。そして、ついに天城をバズーカの射程にとらえた。天城も機銃や高角砲で対空射撃を行ってきた。
“今だ!”
“がってん!!”
セッターが対空防御をかわすと、バズーカ装備のガンイージはペイント弾を発射した。それは天城の飛行甲板に直撃する。それを見た妖精2人は“やった!”と思うがその直後、彼女達の下に母艦が大破したと言う知らせが届いた。
ガンイージが天城の飛行甲板を大破させる少し前、敵機の数をかなり減らす事の出来たが、Vガンダムヘキサのガトリングガンが弾切れになってしまった。航空戦を相手するのなら頭部のバルカン砲でも充分だが、慢心する事は出来ない。そこで、リーンホースは補給のため、1度Vガンダムヘキサを下げる事にした。敵機の残りは少ないため、ガンブラスターだけでも充分と考えたからである。
リーンホースはVヘキサを迎え入れるため、後部着艦デッキのハッチを開いた。Vヘキサはそこへと向かう。その時、1機の彗星が着艦デッキへ向けて急降下してきた。この機体の妖精は宇宙巡洋艦であるリーンホースを相手に一筋縄では勝てないと考えていた。そこで、上空で旋回しながらチャンスを待っていたのである。そしてそれは功を奏し、リーンホースは着艦デッキのハッチを開けると言う隙を見せたのだ。
リーンホースは対空機銃を撃ち、Vガンダムヘキサもヘッドバルカンを撃つ。Vヘキサのバルカンで彗星は撃墜されたが、それは彗星が爆弾を切り離した後だった。切り離された爆弾はそのまま着艦デッキのハッチの中へと吸い込まれていった。
「さて、リーンホース。今回の演習で何か反省点はあるか?」
テストを終えた後、提督が聞いてきた。
「相手が私から見て骨董品だと無意識にバカにして、慢心していた事です。」
「そうだ。連邦軍も時折、旧式のモビルスーツを使うジオン残党を相手した際に油断し、手痛い損害を負っていた。今回の君もそれと同じだ。今の所、深海棲艦の性能は通常の艦娘達とほぼ互角だ。つまり、油断すれば今回と同じようになると言う事を肝に命じておけ。」
「はい!」
「では、この後はシャワーを浴びてから甘味どころで一休みするといい。天城も一緒に休んで来たまえ。」
提督に言われた通り、天城と共に軽くシャワーを浴びたリーンホースは甘味どころ“間宮”へやって来た。
「これがここの名物のスペシャルクリーム餡蜜ですよ。」
「大きいな・・・」
リーンホースの目の前にあるのは、巨大な餡蜜風のパフェだった。そのサイズにリーンホースは狼狽えるが、向かいに座る天城はスプーンでその巨大な山を崩しながら食べて行く。
「そう言えば、昨日提督と飲んだ時は居なかったが、どうしてなんだ?」
リーンホースはふとした疑問を天城にぶつけた。
「別に、秘書艦だからと言って常に提督と一緒に居る訳ではありませんよ。現に、今も提督から離れて休憩していますし。」
「それもそうだな。」
天城の答えに納得すると、リーンホースも巨大餡蜜を食べ始めた。優しい甘さが彼女の口の中に広がる。
「美味しいな。だが、量が多すぎる気がするぞ。」
「大丈夫ですよ。あれだけ動いたんですし。」
「そう言うものか?」
そう言いながらもリーンホースは食べる手を止めない。この味が気に入ったようだ。
その時、間宮に新たな来客があった。
「あら?天城さんとリーンホースさんも休憩ですか?」
それは正規空母の赤城と加賀だった。
「はい。赤城さん達もですか?」
「ちょっと小腹がすいたもので。」
そう答えると、赤城達はリーンホース達の隣に座った。
「間宮さん。“いつもの”をお願いします。」
「私もそれで。」
「は〜い。」
ここの店主である給糧艦の間宮がそう返事をした。やがて、間宮は赤城達の言う“いつもの”を持って来る。
「は?」
それを見たリーンホースは目を疑った。間宮が持って来たのはリーンホース達が食べているものよりもさらに大きなクリーム餡蜜だったからだ。
「「いただきます。」」
それを2人は何の躊躇も無く食べ進める。その様子を見たリーンホースは天城に聞いた。
「なあ、天城。あの2人は朝食もかなりの量を食べていたと記憶しているんだが・・・」
「あの2人はその、かなりの大食いでして・・・」
天城は苦笑しながら答えた。
「同じ正規空母でも大分違いがあるんだな。」
「まあ、私達雲竜型は正規空母の中でも燃費がいい方ですから。」
「逆に、向こうは燃費が悪いと言う訳か。」
かなりの量のあるクリーム餡蜜を結構早い速度で食べて行く赤城達をリーンホースは興味深そうに見ていた。
夜中、当直以外の艦娘が寝静まった頃、リインフォースは鎮守府の片隅に結界を張り、そこで融合騎としての自分の状態をチェックしていた。
(スキャンの結果、私の身体はリンカーコアのある艦娘だと言う事が分かった。これなら防衛プログラムを生み出す心配は無いな。)
その事にリインフォースはホッとする。
(しかし、ならば何故デバイス無しで魔法が使えたんだ?)
リインフォースが魔導師とは違い、デバイス無しで魔法が使えたのは彼女自身がデバイスだったからだ。そこで、彼女は試しにブラッディダガーを使ってみた。すると・・・
(前使った時よりも負荷が大きいだと?まさか、艤装がデバイスとして働いていたのか?)
現在、リインフォースは艤装を着けていない。何故なら、艤装を私用で持ち出す事は規則で禁止されているからだ。
(明日、艤装の手入れをした際に調べてみるか。)
そう考え、リインフォースは部屋に戻った。
続く
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