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最高の贈りもの

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5部分:第五章


第五章

「俺からのな。最高のな」
「最高のプレゼントって」
「ほら、これだよ」
 こう言って出してきたもの。それは。
 靴下だった。厚い靴下だ。それを彼女に出してきたのだ。
 それでだ。こう彼女に言うのである。
「じゃあこれをな」
「これを穿いてくれっていうのね」
「ああ、そうしてくれるか?」
「気が利いてるわね」
 テレサはその靴下を見てだ。笑顔になって言うのだった。
「もうずっと足が寒くてね」
「そんなこと言ってたよな」
「それでその靴下なのね」
「そうだよ。それでどうするんだい?」
「断る理由はないわ」
 微笑んでだ。テレサはペドロに応えた。
「それじゃあ」
「そうか。穿いてくれるんだな」
「早速ね。スペインの靴下じゃとてももたなくて」
 あまりにも寒いからだ。そのせいだ。
「有り難う。それじゃあね」
「じゃあな」
 こうしてだ。テレサは彼のその贈りものを受け取りだ。そうしてだった。
 実際に早速穿く。すると。
 それだけでだ。彼女の顔が変わったのだった。
「いいわね」
「温かいかい?」
「こんな温かいのないか」
「ええ、ないわ」
 そこまで温かいというのだ。
「これだけ温かいと」
「これから楽だろ」
「実際にね。ただね」
「ただ?」
「あんた意外と気が利くのね」
 こうだ。彼に言うのだった。
「案外ね。何年も付き合ってたけれどはじめてわかったわ」
「はじめてかよ」
「だって。恋人をこんなところに連れて来るのよ」
 このシベリアにだというのだ。
「それじゃあね」
「人間誰だって間違いはあるだろ」
「あんたの場合いつもじゃない」
「それは気のせいだよ」
「どうだか。とにかくね」
「ああ、とにかくかよ」
「有り難う」
 笑顔でだ。ペドロに話した。
「じゃあ早速ね」
「穿くんだな」
「そうさせてもらうわ。だって寒いから」
「それに尽きるよな」
「ここの寒さは異常よ」
 テレサは苦笑いと共に述べる。もうその靴下を穿こうとしている。
 そうしながらだ。彼女は恋人に話すのだから。
「だからね」
「早速穿くんだな」
「そうよ。それにね」
「それに?」
「あらためて言うわ」
 こうだ。また笑顔でだった。
「有り難うね」
「一回じゃないんだな」
「普通は一回だけれど」
 今回は違うというのだ。今回だけは。
「特別よ。だってこれだけいいって思った贈り物ないから」
「だからなんだ」
「ええ。こうして穿くと」
 実際に穿くとだ。どうかというと。
「最高の温かさよ」
「最高か」
「そうよ。こんなに温かいものないか」
「そうか。それはよかったな」
「確かにここは最悪の寒さだけれど」
 シベリアの寒さはだ。どうしても否定できなかった。尚ここの話ではないがロシアに攻め込んだ者は大抵その寒さの前に敗れてしまっている。
 
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