英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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最終話(3rd篇終了。零篇に続く)
――――”影の国”帰還から数日後――――
~七耀教会、星杯騎士団所属、特殊作戦艇”メルカバ”壱号機~
「――――なるほどな。大まかな状況は理解した。」
”影の国”よりケビン達が帰還した数日後、”星杯騎士団”を率いる第1位の”守護騎士”―――”紅耀石”アイン・セルナート総長はケビンから通信で報告を聞き、頷いた。
「君が問い合わせた人物ならすでに確認は済んでいる。オリヴァルト皇子。ミュラー・ヴァンダール。ジン・ヴァセック。ジョゼット・カプア。エステル・ファラ・サウリン・ブライト。ヨシュア・ブライト。ミント・ルーハンス・ブライト。ティオ・プラトー。リウイ皇帝。イリーナ皇妃。カーリアン。ファーミシルス。聖女ペテレーネ。リフィア皇女。プリネ皇女。レン皇女。エヴリーヌ。レオン=ハルト。ツーヤ・ルクセンベール。セオビット・ルアシア。シルフィエッタ・ルアシア。エクリア・フェミリンス。冥門候ナベリウス。ウィルフレド・ディオン。セラヴァルウィ・ディオン。エリザスレイン。――――以上の者達については無事、帰還を確認したとの事だ。」
「そうですか………安心しました。リベールにいる人についてはこっちで確認できましたし………あとは”蛇”の一人やけどま、そっちは確認しようがないか。」
セルナート総長の報告を聞いたケビンは安堵の溜息を吐いて答えた後、苦笑した様子で呟き
「フフ、さすがにな。」
ケビンの言葉にセルナート総長も苦笑しながら頷き、そしてすぐに表情を引き締めた。
「しかし………俄かには信じ難い話だな。”影の国”――――至宝が残した負の遺産か。」
「ええ………ま、詳しい話は戻ってから報告しますわ。事後処理にもう少し時間がかかりそうですし。」
「ああ、よろしく頼む。………しかし君、少し雰囲気が変わったな。」
「へ………」
口元に笑みを浮かべたセルナート総長が通信に向かって話すと、通信から呆けたケビンの声が聞こえて来た。
「以前の君なら、関わった人間の安否などそこまで気にかけなかった。いや………気にかけないように自分を抑えていたと言うべきか。どうやら”影の国”とやらで色々とあったようだな?」
「はは………あったと言えばイヤになるくらありましたけど。そのあたりも含めて帰ったら報告させてもらいます。………個人的に総長にお伝えしたいこともあります。」
「なんだ、意味深だな。まあ、リース共々無事帰還してくれて何よりだ。戻ってきたら、彼女と3人で一緒に飲みにでも行くとしよう。」
「はは、楽しみにしてますわ。………そうや総長。一つ聞きたい事があるんですけど。」
「なんだ?」
「えっと、その………”守護騎士”の渾名って後からでも変えられるんですかね?」
「!……………は…………」
ケビンの話を聞き驚いたセルナート総長は呆けた声を出してケビンと通信をしている画面を見つめた。
「実は”外法狩り”以外にもやりたい事が出来てしまって………もちろん守護騎士としての役割は全うさせてもらうつもりですけど。」
「…………………」
ケビンの説明を聞いたセルナート総長は黙り込んだ後、顔を地面に向け
「……ククク………ハハハ……ハハハハハハハッ!」
地面に立ち上がって、頭を天井に向けて大声で笑いだした!
「そ、総長?」
笑いだしたセルナート総長に”メルカバ”を操縦している従騎士は戸惑い
「あー………やっぱマズイですかね?」
ケビンは気まずそうな様子で尋ねた。
「ククク………守護騎士が一度付けた自らの”渾名”を変えるか。確かに騎士団千年の歴史でも相当、珍しいかもしれない。………だが、例が無いわけではない。」
そして尋ねられたセルナート総長は口元に笑みを浮かべて答えた。
「それじゃあ………」
「フフ、今度会う時までに気の利いた渾名でも考えておくといいだろう。思いつかなかったら罰として私が適当に変なものを付けてやる。」
「そんな、どこぞの罰ゲームやないんですから。まー、せいぜい格好いいのでも考えときます。”蒼き流星”とか”ブラックアロー”とか。」
「………………」
ケビンの説明を聞いたセルナート総長は頭に片手をあてて黙り込み、周囲の従騎士達も黙り込んだ。
「あ、あれ………外しましたか?」
セルナート総長の様子に気づいたケビンは戸惑った様子で尋ね
「………ケビン・グラハム。君の元教官として一つだけ忠告しておこう。」
「はあ………」
尋ねられて答えたセルナート総長の言葉を聞いて再び戸惑った様子になった。
「もし君が後々、余計な恥をかきたくなければ………悪い事は言わない。リースあたりと相談して決めたまえ。」
そしてケビンに忠告をするセルナート総長を乗せた”メルカバ”はどこかへと去って行った。
――――”影の国”帰還から数ヶ月後――――
~工匠都市ユイドラ・ウィルの家・玄関~
「………2人とも、忘れ物はない?」
旅支度を終え、玄関で待っていたセティは同じように旅支度を終えてやって来たシャマーラとエリナを見回して尋ね
「うん!大丈夫だよ!」
「私も大丈夫です、セティ姉様。」
尋ねられた2人はそれぞれ頷いた。
「フフ、お土産や向こうでの生活の話………期待して待っているよ!」
「みんな、向こうの方達に我儘を言って迷惑をかけては駄目ですよ?」
そこにシャルティとセラウィが3人に話しかけ
「………寂しくなりますね。しばらくの間は、エリナ達の顔が見れないのですから………」
「貴女は過保護すぎよ。子供は旅をさせる事で成長するって昔からよく言われている事でしょう?」
メロディアーナは苦笑しながらセティ達を見つめ、エリザスレインは呆れた表情でメロディアーナを見つめた。
「リウイ達や留学でお世話になる職場の人達に失礼のないようにね、3人共。」
そしてウィルはセティ達を見回して話しかけ
「「「はい!」」」
セティ達はそれぞれ力強く頷いた。
「水那、アト、クレール、クレアンヌ。セティ達の事を頼むね。」
セティ達の返事を聞いたウィルは水那達を見回し
「はい!任せて下さい、お兄様!」
「まっかせて!アト、一杯頑張るよ~!」
「へへーん!僕達がいれば何かあっても絶対大丈夫だよ!」
「セティは私達にとっても妹同然なんだから、セティ達の姉として頑張るわ、ウィル!」
水那達はそれぞれ力強く頷いた後セティ達に近づき
「水那姉さん、よろしくお願いしますね。」
「任せて下さい!みんなのお姉さんとして私、頑張りますね!」
セティに微笑まれた水那は頷いた後光の球体になった後召喚石になり、セティは水那の召喚石を懐に仕舞い
「アト姉さん、一緒に頑張ろうね!」
「うん!一緒に成長して、ご主人様に褒められよう!」
シャマーラに微笑まれたアトは光の球体になった後召喚石になり、シャマーラはアトの召喚石を懐に仕舞い
「クレール兄様、クレアンヌ姉様。しばらくの間、よろしくお願いします。」
「うん!新たな土地へ行く事……今から楽しみだね、クレアンヌ!」
「フフ、そうね。これからしばらくよろしくね、エリナ!」
エリナに微笑まれたクレールとクレアンヌは光の球体になった後一つの球体に合体し、そして召喚石になり、エリナは一つになった召喚石を懐に仕舞い、ウィル達に振り向いた。
「「「「「3人共……行ってらっしゃい!」」」」
そしてウィル達はセティ達に微笑み
「「「行ってきます!」」」
微笑まれたセティ達は微笑みで頷いた後メンフィル帝国の帝都ミルスが登録されてある”帰還の耳飾り”を使って、転移した。
~同時刻・クロスベル自治州・ベルガード門~
「お、来たか。」
クロスベルと両帝国の国境――――ベルガード門のバス停でバスを待っていたオレンジ色のコートを着た赤毛の男性は近づいて来る導力バスに気づいて呟き
「……向こうでふざけたり足を引っ張って、クビにならないようにしなさいね。」
男性の近くにいた軍服の女性は溜息を吐いて男性に忠告したが
「ククク………このあたいがいるんだから、無用な心配だよ!」
「………貴女も一緒だから余計に心配なんだけど………」
男性の近くで不敵な笑みを浮かべている歪魔族の女性の言葉を聞き、疲れた表情で溜息を吐いた。
「ハハ………今まで色々と世話になったな、ミレイユ。」
「………別に。私も手のかかる部下がいなくなって、少しは楽になるからお礼を言われる事はないわよ。」
苦笑する男性に見つめられた女性―――ミレイユは冷静な表情で答えたが
「やれやれ………相変わらず素直じゃない女だねぇ………そんなんだからいつまでたっても、関係が進まないんだよ。」
「う、うるさいわね。余計なお世話よ!」
呆れた後口元に笑みを浮かべた歪魔の言葉を聞き、頬をわずかに赤らめて慌てた後歪魔を睨んだ。一方近づいてきた導力バスはバス停に停まり、乗客たちが降りはじめた。
「そんじゃ、行くとするか。行くぜ―――エルンスト!」
「あいよ!楽しい戦を期待しているぜ、ランディ!」
そして男性―――ランディは歪魔―――エルンストを自分の身体に戻した後、バスに乗り込み、乗り込んだバスは行き先――――クロスベル市に向かった。
~同時刻・レマン自治州・国際空港~
クロスベル自治州行き定期飛行船、まもなく離陸します。ご利用の方はお急ぎください
「…………………」
(時間だぞ、ティオ。)
空港のロビーにある椅子に座って導力装置を操作しているティオの身体の中にいるラグタスは放送を聞いた後念話で伝え
「……はい。」
ラグタスの念話に頷いたティオは操作をやめて、導力装置を仕舞い、飛行船に乗船し、乗船した飛行船は行き先――――クロスベル市へと飛び立った。
~同時刻・王都グランセル・国際空港~
クロスベル自治州行き定期飛行船、まもなく離陸します。ご利用の方はお急ぎください
「お姉様、エクリアさん。お忙しい中、わざわざ見送りに来て頂き、ありがとうございます。」
飛行船出発の放送を聞いたパールグレイの髪をなびかせ、腰に鞘に収まった細剣を帯剣し、その横に導力銃も装着している少女はドレス姿のイリーナと黒を基調とした高貴な服を着て、腰に連接剣を装着したエクリアに会釈をし
「フフ……大切な妹の旅立ちを見送らないわけがないでしょう?」
「……行ってらっしゃいませ。エリィ様のクロスベルでのご活躍………クロスベルより遠く離れた大使館にてイリーナ様と共に楽しみにさせて頂きます。」
少女――――エリィに会釈をされたイリーナは微笑み、エクリアは会釈をした。そしてイリーナはエリィの傍にいる天使に視線を向け
「エリィの事、お願いね。メヒーシャ。」
「……ああ。我が斧槍にてエリィの害となる者達は全て斬り伏せる。」
「……守ってくれるのは助かるけど、やりすぎないでよね?メヒーシャ。………じゃあ、しばらくの間は私の中で休んでいて。………それでは行ってきます。」
「ええ。行ってらっしゃい。」
視線を向けられた天使―――メヒーシャは静かに頷き、メヒーシャの言葉を聞いたエリィは冷や汗をかいてメヒーシャに視線を向けて言った後、メヒーシャを自分の身体の中に戻した後、イリーナとエクリアに見守られながら飛行船に乗船し、乗船した飛行船は行き先――――クロスベル市へと飛び立った。
~カルバード共和国・アルタイル市・アルタイル駅構内~
「……………………」
白を基調とした服と菫色を基調としたロングスカートの服装で、薄い撫子色の髪を腰まで伸ばし、十人中十人が振り向くような整った容姿の女性は駅構内の椅子に座って静かに本を読んでいた。するとその時
「か~のじょ!暇をしているんだったら、俺と遊ぼうぜ!」
「………結構よ。今、男の人と待ち合わせをしているの。」
軽薄そうな青年に話しかけられ、溜息を吐いた後本を閉じて青年を睨んだ。
「君みたいな美人を待たせる男なんてほっといて俺と遊ぼうぜ~。」
一方睨まれた青年は諦めずに声をかけ
「…………………」
声をかけられた女性は無言で本を異空間に仕舞うと同時に異空間から大きな球体が付着している杖を出し、立ち上がって青年の喉元に突き付けると同時に杖の先端にすざましい魔力を溜めた。
「ヒッ!?」
それを見た青年は恐怖し
「それと……あなたみたいな軽薄な男性は私のタイプじゃないわ。痛い目にあいたくなければ、今すぐ去りなさい。」
「ヒ、ヒィィィィィ~!!」
女性の言葉と行動に青年は悲鳴をあげながら女性から逃げ去った。
「……ルファ姉!」
するとその時、青年と入れ違いに青と白を基調した上着を着て、腰の左右に二丁の白銀の銃を装着している少年は走りながら近付き、少年に気づいた女性は杖を異空間に仕舞った。
「ハア、ハア………待たせてごめん、ルファ姉。」
「フフ、いいのよ。それで…………お世話になった人達への挨拶や荷物の送付はすませたのかしら?」
息を切らせて話す少年―――ロイドに女性は微笑んだ後、尋ねた。
「うん。えっと…………さっきの男性はもしかして……」
「………ええ。”また”よ。今日だけで他に10人も声をかけられて、断るのにせっかくの読書の時間をかなりつぶしたわ………」
ロイドに尋ねられた女性は疲れた表情で溜息を吐いて答えたが
「ハハ………ルファ姉は”天使”の姿と”人間”の姿…………どっちでも美人だから仕方ないよ。」
「フフ…………普段言われ慣れてうんざりしているけど、可愛い弟に褒められるのなら、嬉しいわね。」
「うっぷ!?」
苦笑しているロイドの言葉を聞き、微笑んだ後ロイドの顔を服を着ていてもわかるほどの豊満な胸に押し付け、頭を撫でた。
(かかかっ!相変わらずロイドにだけは甘いね~、ルファディエルの奴は。さすがはロイド!我輩と同時にルファディエルを攻略するとは!今のルファディエルならお前だったら、押し倒されても抵抗しないぞ!大人の男になる大チャンスだぞ、ロイド!かかかっ!)
「(何、馬鹿な事言っているんだよ、ギレゼルは………)………ハア……いい加減、子供扱いはやめてくれよな…………」
女性――――ルファディエルの胸に顔を押し付けられ、頭を撫でられたロイドは契約し、自分の身体の中にいる悪魔―――ギレゼルの念話に呆れた様子で答えた後、溜息を吐いてルファディエルから離れたが
「あら。でも、男の子として役得だったでしょう?」
「ル、ルファ姉!」
からかうような表情のルファディエルに見つめられ、恥ずかしそうな様子で慌てた。
――――お待たせしました。クロスベル自治州行き鉄道、後10分で発車します。ご乗車される方はお早めにご乗車下さい――――
するとその時、駅構内に放送が流れた。
「………どうやら時間のようね。はい、昼食用のお弁当と飲み物。買っておいてあげたわよ。」
放送を聞いたルファディエルは隣の椅子に置いてあった弁当と飲み物が入った袋をロイドに渡し
「ありがとう、ルファ姉。じゃあ、一端俺の中で休んでいてよ。」
「ええ。」
光の球体になった後、ロイドの身体の中に入った。
「さてと。………行くとするか――――クロスベルへ。」
そしてロイドはクロスベルへ向かう鉄道に乗車し、乗車した鉄道は行き先――――クロスベル市に向かって走り出した。
――――両帝国と共和国、三大大国の狭間、急成長を続ける巨大貿易都市。光と闇の混在するその街を、人々はこう呼んだ。魔都”クロスベル”―――
――――市民の信頼を失ったクロスベル警察に集められた4人の若者たちと3人の異世界からの留学者たち―――
――――光と闇の混在する大都会を舞台に、若き捜査官とその仲間達は光と闇の絆と共に”魔都クロスベル”の光と闇に挑む――――
――――直面する数多の矛盾、そして試練。立ち塞がる巨大な”壁”――――
――――若き捜査官は光と闇の絆、そして仲間達と共に”壁”に立ち向かう――――
新たな舞台と光と闇の絆が織りなす新たなる新章、開幕………!
―――――ワタシヲ………ミツケテ――――――――
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