英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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第118話
~幻影城~
「みんな………今まで本当にありがとう………みんなのお蔭で私は争いのない世界を創る事………道は険しいけど、いつか必ず叶えられる事を改めて思ったわ………」
「………こちらこそ今までありがとうございました。」
「………サティアさんが願う世界は私達が目指す世界と同じ………いつか必ず実現してみせます………」
サティアに微笑まれたケビンとリースはそれぞれ静かな表情で頷いた。
「パズモ………貴女が私やエステルと出会ってくれなかったら、きっと私は今ここにいなかった………本当にありがとう………貴女と出会えて本当によかった………リタ、クー………貴女達も元気でね………」
そしてサティアはパズモ、リタ、エステルを見回して優しい微笑みを浮かべ
「私も………私も貴女の使い魔になれて、本当に幸せだった………ありがとう………!」
「ドラブナに囚われていた私を救ってくれて……本当にありがとうございました。」
(クー………)
パズモは涙を流しながらサティアに微笑み、リタは静かな表情でサティアを見つめ、エステルの身体の中にいるクーは寂しそうな声で鳴いてサティアを見つめた。
「エステル………私達の”約束”を”誓って”くれて本当にありがとう………貴女のお蔭でセリカと再会でき………こんなにも多くの暖かい人達と接することができたわ………これもみんな、貴女のお蔭よ………」
そしてサティアはエステルに微笑み
「サティアさん………サティアさんはこれからどうなるの?」
微笑まれたエステルは不安そうな表情で見つめて尋ねた。
「………フフ………すぐにわかるわ………………でもその前に………私が貴女にできるせめてのもの感謝の気持ちをあげるわね。………はい。」
尋ねられたサティアは優しい微笑みを浮かべた後、エステルに近づき、ウィル達によって強化された自分の神剣――――天秤の十字架をエステルに手渡した。
「え………これって………」
「なっ………!?サティア、一体何を……!それにその神剣は貴女しか扱えないはずでしょう………!?どうしてエステルに………」
天秤の十字架を手渡されたエステルは天秤の十字架に視線を向けて呆けた声を出し、パズモは驚いて尋ねたが
「……………………」
サティアは何も答えず優しい微笑みを浮かべた後、セリカに視線を向けた。
「しばらくの間、お別れね、セリカ………」
「ああ………だが、俺達は必ず再び出会える………その時に”約束”を叶えよう………」
「うん………!」
そしてサティアとセリカは見つめあった後、互いを抱きしめて軽い口付を交わし、セリカから離れたサティアはセリカの使徒達を見回し
「セリカの事……お願いね。」
優しい微笑みを浮かべて言った。
「………承りました。」
「いつかまた出会える事………心から祈っております。」
「任せて下さい!」
「はいです~!」
「わらわ達に任せておけ!」
サティアの言葉にエクリアとシュリは会釈をし、マリーニャとサリア、レシェンテは力強く頷いた。そしてサティアはケビン達を見回し
「みんな………いつか、また会いましょう………」
優しい微笑みを浮かべた後、光の球体になり、光の球体はエステルの身体と同化した。するとエステルが持つ天秤の十字架はサティアが扱っていたように神々しい光を放ち始めた!
「なっ……天秤の十字架が…………まさか………!?」
それを見たパズモは驚いてエステルを見つめ
「うん………あたしの中にいるわ………セリカやみんなを想う優しいサティアさんが………そっか………こういう事だったのね………」
見つめられたエステルは静かな表情で自分の身体を見つめ
「………エステルの身体に………サティア………宿った………」
「………じゃあ、エステルの子かその子孫がサティア様になるんだ………!」
「………なるほどな。”想念”の力で自らを魂に戻して、エステルに宿ったという事か………」
「フム。ならば”正義の大女神”であるサティアしか扱えないその神剣がエステル嬢ちゃんが扱える事にも納得がいくな………エステル嬢ちゃんが天秤の十字架を扱えなくなり、嬢ちゃんの子供が天秤の十字架が扱えたその時………その子こそが生まれ変わったサティアという事か………」
ナベリウスは静かに呟き、リタは嬉しそうな表情になり、リウイとハイシェラは真剣な表情でエステルを見つめ
「エステル………サティアの事は頼んだ………」
セリカはエステルに視線を向けて頭を下げ
「うん、任せて!必ず2人の”約束”を叶えてあげるわ!………それがあたしの”誓い”なんだから!」
セリカの言葉にエステルは太陽のような明るい笑顔で頷いた。
「…………さて………俺達も帰るとするか………」
エステルの笑顔を見て静かな笑みで黙って頷いたセリカは自分の使徒達やハイシェラと共に光の階段の前に来て、ケビン達を見回した。
「………みんなには本当に世話になった。今回の件のお蔭で俺はサティアと再会でき………全ての記憶を取り戻したのだからな。」
「ククク………血がたぎる戦いを幾度もさせてくれた事………感謝する。」
ケビン達を見回したセリカは微笑み、ハイシェラは不敵な笑みを浮かべ
「私も今回の件で救われました………本当にありがとうございました。」
「取り込まれた当初は混乱していたけど………結構楽しかったわよ!」
「セリカ様や私達を暖かく迎え入れてくれて本当にありがとうございました………」
「みなさんといれて、とっても楽しかったです~!」
「うむ!今回の件………絶対に忘れんぞ!」
エクリア、マリーニャ、シュリ、サリア、レシェンテはそれぞれ微笑みを浮かべてケビン達を見回した。
「こちらこそお世話になりました………お元気で。」
「………貴方達の事は上には報告せんでおきます。……なのでいつでも、オレ達の世界に遊びに来てもらっても構いません。」
そしてリースは軽く会釈をし、ケビンは穏やかな目でセリカ達を見回して言い
「………いつかリベールに尋ねて下さい………その時はお祖母様達と一緒にお茶を楽しみましょう……」
「フフ………エレボニアにも是非来てくれたまえ。君達のような美しい人達は大歓迎さ♪」
「また御手合わせ、お願いします!それとレシェンテちゃん、いつか絶対に私の方から会いに行って、またギュ~って抱きしめるね♪」
「貴方ほどの剣士との手合わせ………私にとって非常に勉強になった。いつかリベールに来られたその時………再び、手合わせをお願いします。」
「俺にとってもかつてないほどの修練になった。また手合わせ、頼むぜ。」
「勿論、ユイドラも君達を歓迎するよ。」
「時間ができた時にナベリウスと一緒にまた会いに行きますね。」
「………絶対…………いつか………行く………」
クローゼ、オリビエ、アネラス、リシャール、ジン、ウィル、リタ、ナベリウスはそれぞれ微笑みを浮かべてセリカ達を見つめた。
「全く………わらわは神だというのに子供扱いしおって………」
一方アネラスの言葉を聞いたレシェンテは呆れた様子で呟き
「………皆揃って俺達に相談もなく、そんな勝手な事ばかり言うな………”神殺し”達がお前達の世界に行くという事は”神殺し”達がお前達の世界と繋がっている転移門を管理しているメンフィルに来るという事になるのだぞ………?」
リウイは頭痛を抑えるかのように片手で頭を押さえて呟いたが
「………まあいい。メンフィルは光にも闇にも属さん………来るのなら勝手にしろ………ただし、その時は正式な手順を取ってもらうからな………」
溜息を吐いた後、苦笑しながらセリカ達を見つめた。
「ああ。」
リウイの言葉に頷いたセリカはリウイの前に片手を差し出した。
「………何のつもりだ?」
セリカに差し出された手を見たリウイはセリカに視線を向けて尋ね
「………俺達はもう争う事はない………そして……俺達は共に戦った”戦友”だ。違うか?」
尋ねられたセリカは静かに答えた後、口元に笑みを浮かべ
「フッ………そうだったな………」
リウイは静かな笑みを浮かべた後、セリカと握手をした。
「いや~………変われば変わるもんねぇ………あの無愛想だった”神殺し”がここまで感情を表すなんて………それにリウイとも和解する所か友情を結ぶなんて………」
「フフ……互いがぶつかり合ってもいつかは信じ合える仲になる………私達が目指す理想の世界にまた一歩近づきましたね………」
リウイとセリカの様子をカーリアンは口元に笑みを浮かべ、優しい微笑みを浮かべているイリーナと共に見守っていた。
「あ、そうだ。帰る前に………はい、これ。」
一方何かを思いだしたエステルはセリカに近づき、”絆の神剣”を鞘ごとセリカに手渡した。
「これは………」
「元々その神剣は貴方のだったからね。あたしはサティアさんからもらった神剣があるし………それに今度こそサティアさんとの”約束”を忘れない為にも返すわ。………今までありがとう。貴方のお蔭で随分助けてもらったわ………絶対に貴方が願う”約束”を叶えてあげるからね。」
手渡された神剣を見て驚いているセリカにエステルは説明した後、微笑みを浮かべてセリカに手渡した神剣を片手で優しく撫で、撫でられた神剣はエステルの言葉に答えるかのように一瞬、神々しい光を放った。
「………何から何までありがとう………いつか俺達の力が必要になった時、呼んでくれ。いつでも手伝う。」
「うん。その時は遠慮なく頼らせてもらうわ!」
そしてセリカとエステルは握手をして、離れた。
「……セリカ様。別れが名残惜しいと思いますが………」
「わかっている。………だが、その前に………エクリア、傍に。」
「はい………あっ。」
エステルから離れたセリカは近寄って来たエクリアを抱き寄せ
「大変だったな。」
「いえ………私こそ、ご迷惑をお掛けしてしまって………」
「………こういう時はどう言えばいいかわからないが………」
「んっ………んちゅ………」
エクリアの髪や肩などを優しい手つきで触れながらねぎらい、口付けをした。一方その様子を周りの者達は顔を赤らめて見つめたり、視線を逸らしたり、興味深そうな様子で見つめていた。
「はぁ…………ありがとう、ございます………」
セリカとの口付けを終えたエクリアは顔を赤らめてセリカを見つめ
「出会ったときから比べると、ずいぶんといい表情をするようになったな。」
見つめられたセリカは静かな微笑みを浮かべた。
「だとしたら、セリカ様のお蔭です………」
そしてセリカの言葉を聞いたエクリアは穏やかな目でセリカを見つめた。
「………君は贖罪を求めていたな。」
「………はい。」
「………エクリアの行く末を見守りたいと思っていた。エクリアが知ることで、俺の探しているものが得られると感じた。………その結果………俺は探しているもの―――サティアと再会でき……君もイリーナと出会えた。今までの事を含め………君に感謝しなくてはならないな。」
「そんな………」
セリカの話を聞いたエクリアは驚きの表情でセリカを見つめ
「『使徒の生から解放する』」
見つめられたセリカはエクリアの頭に指をかざし、静かに呟いた。
「えっ………?」
セリカの言葉を聞いたエクリアが呆けたその時、エクリアの中にあったセリカとの統合が失われた。
「ご主人様!?」
「一体何を……!?」
一方セリカの言葉を聞いたマリーニャとシュリは同じように驚き、言葉を無くしているサリアとレシェンテと共にセリカとエクリアを見つめた。
「ど、どうして………」
そしてセリカの”使徒”でなくなったエクリアは信じられない表情でセリカを見つめ
「これで君との約束を果たした。君を”殺す”、というな。」
「エクリア・フェミリンスは死んだ。そして生まれ変わった。これからは”使徒”ではなく、ましてフェミリンスの娘でもない、自分の人生を生きるのだ。」
見つめられたセリカは答え、ハイシェラがセリカの言葉を補足するように説明した。
「……自分の、人生………」
「そうじゃ。嬢ちゃんがセリカに依存していること………使徒となることで安息を得ていたことはわかっておった。じゃが今のお主は、依存せずとも生きていけよう。己の足で、自らの途を。」
「あまり喋るな………俺が伝えるべき事がなくなるだろう………」
呆けて呟くエクリアにハイシェラは口元に笑みを浮かべて説明を続け、セリカは溜息を吐いた後、苦笑しながらハイシェラに視線を向けた。
「………わ、私………なんと、申していいのか………うぅっ………」
そしてエクリアは少しの間大粒の涙を流して泣き崩れ、その後落ち着いたエクリアをセリカはリウイの元へと連れて行った。
「しばらくエクリアを預けてもいいか?」
「………お前はそれでいいのか。」
セリカの言葉を聞いたリウイは静かにセリカを見つめて尋ねた。
「………リフィアの後見人か今後生まれてくる君とイリーナの子の教育係に据えてやってくれ。遥か昔に失い、そしてずっと望んでいたイリーナや君達との絆を取り戻すまでの間だけでいい。」
「承った………」
「セリカ様……ありがとうございます……」
そしてセリカの頼みにリウイは静かに頷き、イリーナは涙を流して微笑みながらセリカに礼を言った。
「セリカ様………わ、私………貴方にお仕えできて………幸せでした………その気持ちは変わらない………ずっと………いつか………また、帰っていいですか?貴方のいる御屋敷に………」
一方エクリアは涙を流しながらセリカに微笑み
「………ああ。待っている。俺はあそこにいる。ずっとな………」
「うむ。しばしの間、さらばだの!」
「勿論、あたし達も待っているわよ!」
「いつか絶対に帰って来て下さいね、エクリア様!」
「必ずですよ、エクリア母様~!」
「お前がいない間のセリカの事はわらわ達に任せておけ!だから、絶対に帰ってくるのだぞ!」
セリカ達はそれぞれ微笑んだ後、ケビン達に背を向けて階段を走って登り、門の中へと入って行った………………………
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