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オズのボタン=ブライト

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第三幕その八

「この子は凄いのよ」
「偶然に愛されているんですね」
「これ以上はないまでに運もいいしね」
「幸運の塊でもあるんですね」
「オズの国一の幸運児よ」
「そうなんだね」
「わかんなーーい」
 けれどボタンはです、カルロスに聞かれてもこう返します。
「僕そんなに凄いかな」
「常にいいことが起こるからね」
「確かに不幸になったことはないよ」
 ボタン自身も言います。
「そうしたことはね」
「特によね」
「そう、じゃあ運がいいのかな」
「不幸に遭わないだけでもね」
「運がいいんだね」
「そう言ってもいいけれど」
 それ以上になのでした。
「幸運を自分だけじゃなく皆にももたらしてくれるから」
「ボタンは凄い子よ」
 オズマもこう言います。
「オズの国一のラッキーボーイよ」
「ほっほっほ、この子は確かに運がいいぞ」 
 王様も笑って言います。
「トランプもおはじきもサイコロもいつも勝つからのう」
「とにかく運がいいので」
 王子もにこりと笑ってボタンのことをお話します。
「勝負ごとは無敵ですね」
「しかも勝ってもな」
「特に自慢も欲も張らないので」
「そのこともあるのじゃろうな」
「とても無欲な子なので」
「だって僕もう服は着てるし」
 その水兵さんの服です。
「食べるものはオズの国なら何処にでもあるから」
「困ることはない」
「そう言うんだね」
「身体もお池や川で奇麗に出来るから」
 オズの国ではというのです。
「何もいらないよ」
「ふむ、だからじゃな」
「ボタンは無欲なんだね」
「だって欲しいものはいつもあるししたいことも出来るから」
 それで、というので。
「これ以上何かしたいなんて思わないよ」
「無欲さこそ最高の美徳というから」
 カルロスはボタン自身の言葉を聞いてこう言うのでした。
「ボタンは神様に愛されていてね」
「それでなのかな」
「うん、いつも偶然が周りで起こってね」
 そしてというのです。
「幸福に愛されてるんだよ」
「そうだよね」
「そう、それでね」
「それでなのかな」
「君は無欲さ故に運がいいんだよ」
「成程ね」
「オズの国の人は無欲な人が殆どだけれど」
 中にはかつてのノーム王ラゲドーみたいな人もいますが。
「ボタンはその中でも特にだからね」
「欲がないから」
「だからなんだ」
「ううん、だから欲しいものはね」
 それこそというのです。
「あるし、それにね」
「ある以上のものは、だね」
「欲しくないから」
「そこで欲しくないというのならね」
「それが無欲なんだよ」
「ううん、あるものがあればそれ以上何が欲しいの?」
 これがボタンの考えです。 
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