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紅き微熱と黒き蓮華

作者:神悠
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第四話

 
前書き
お久しぶりです。浪人したりで2年半ほど放置してました。少し時間が出来たのでまた書いていこうと思います。

全然話は進んでいませんがそれでも良いという方は読んでいただけたら幸いです。 

 
竜の耳垢、竜の血液など真偽が定かではない怪しいものが散乱している机上で「炎蛇」ことコルベールが着衣の乱れも気にせずに神田の六幻とゴーレムの解析を行っていた。目の下には寝ていないのか隈が出来ている。

コルベールは神田の持ち物に何か手掛かりとなるものがないか探している中で昨日の事に思いを巡らせていた。

該当なし…

それが、キュルケのサーヴァントに刻まれたルーンの解析結果であった。

時刻はサモン・サーヴァントにおける全ての工程を終えて数刻後に遡る。
コルベールはキュルケの召喚したサーヴァントのルーンを見たことがなかったので、学院の図書館にて解析する作業に取りかかった。ルイズの召喚したサーヴァントのルーンも見たことがなかったが、優先度はキュルケのそれよりも低かった。何故ならキュルケがゲルマニアからの留学生であるからであった。キュルケがただの人間を召喚しましたと報告すれば、ツェルプストー家は学院にどのような教育を施してきたのか詰問するかもしれない。それだけならまだ良いが、他国の貴族がトリステインへの留学に躊躇いを覚え、少なくない留学生を受け入れているトリステイン魔法学院の教育機関としての信用が失墜する可能性もある。
またキュルケはトライアングルのメイジであることも優先度が高い一因であった。火竜や幻獣などを呼び出したのでなければ、何か特別な付加効果を持つルーンが施されているはずだ。そうでなければ彼女のような優秀なメイジが人間を呼び出すはずがない。
そこまで考えたところでコルベールはサモン・サーヴァントの指導教官としての責務を果たすためこうして図書館に足を運んだのである。
彼は始めから一般区画ではなく教師のみ閲覧が許される「フェニアのライブラリー」の区画で検索を行った。しかし、ルイズの使い魔のルーンが始祖ブリミルの使い魔「ガンダールヴ」のルーンと一致することが確認できたが、キュルケの使い魔のルーンはどれにも該当しなかった。

ルーンがダメなら持ち物の解析だ。そう思ったコルベールはキュルケから預かった六幻とゴーレムの解析を始めた。だが、六幻は彼にとって珍しい反り曲がった剣という印象しかなく、ゴーレムに至っては主人と離れているためかずっと眠りこけており、蝙蝠だろうとの結論に至った。何も手掛かりがない。しかし、ここで諦めるような術をコルベールは持ち合わせていなかった。何か1つでもキュルケの使い魔が人間でも優秀であること証明できるような手がかりを求めて解析作業を続けて今に至る。

これは本当にまずい状況になってきましたぞ…

解析を始めて既に半日が経とうとしている。それでも尚1つも見つからない手掛かりにさすがのコルベールも焦燥に駆られていた。そんなときだった、ドアがノックする音を聞いたのは。

「ここに俺のモンがあると聞いたんだが」

声の主は今まさにコルベールの悩みの種である張本人であった。だうやら自身の持ち物を返してもらうために自ら取りに来たのであった。

このままでは八方塞がりだったのでコルベールは神田を招き入れ話を聞くことにした。

「これで会うのは二度目ですね。私、トリステイン魔法学院の教官のコルベールと申します。汚いところですが、どうぞゆっくりしていってくださいミスター…ああ、失礼ですが名前を聞いても?」

彼は神田とだけ答えた。

「ミスターカンダどうぞ座ってください。では、早速ですがいくつか質問させてもらってもよろしいですかな?」

「ああ、こちらも聞きたいことがあるからそれは構わんが、その前に俺の持ってた黒い刀と丸い生き物がここにあるだろ。それを先に返してもらいたい」

「ええ、良いですとも」

コルベールはこれはカタナと云うものなのか、そんなことを思いながら六幻とゴーレムを彼に手渡した。

彼の顔を見ると心なしか安堵しているようだった。

質問は出身から趣味まで多岐にわたるものであり、神田はエクソシストの事には触れないように職業は町の警備と答えつつ、神田からも質問を行った。

長きにわたる質問はお昼休みになるまで続いた。

「なるほど、ミスターカンダは町の警備隊の一員でしたか。いやはや、道理でそのカタナを帯剣しておられるのですな。」

「ああ、俺の仕事にこの刀、六幻は必要だからな。それとこのゴーレムもな」

そう言って丸い生き物を眠りから解き放った。目覚めた生き物は羽をパタパタさせ動作確認をしているようだった。
コルベールはその姿を見て彼から聞いていた通りやはり蝙蝠の類いだと思った。

「じゃあ、そろそろ俺はあいつのところに戻るが、どこにいるかあんた分かるか?」

コルベールにしてみれば一生徒の動向などいちいち把握しているわけではないが、貴族の行動パターンなんて高が知れている。そう思って彼女がほぼ確実にいるであろう中庭の場所を告げた。

「そうか、確かに食後の休憩をしていてもおかしくない時間だな。…世話になった、感謝する」

「こちらこそ感謝します、ミスターカンダ。それでは明日学院長の部屋にお二人で来るようミスツェルプストーに伝えて下さいな」

神田はああ、と短く返答するともう用はないと言わんばかりにそそくさと部屋を出ていった。


ただ一人散らかった部屋に残された彼は神田との会話を反芻した。

(彼に施されたルーンは蓮の花というゲルマニアらしいという以外に目立った特徴はなかった。一方彼自身については戦闘になれば分からないが何か傑出した能力を持っているようには見受けられなかった…これをどうオールドオスマンに報告したらよいものか)

ぐー

今まで黙っていた彼の身体が主張を始めた。

とりあえず考えるのはやめ何か腹に入れよう、そう思い部屋を後にするコルベールだった。 
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