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Three Roses

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第三話 幸福と孤独その五

「どちらもな、しかし」
「その二つばかりでは」
「よくない、遊びは否定するものではない」
 決して、というのだ。
「遊びからも学べるのだ」
「そうです、様々な遊びから」
「人として大事なことをな」
「人とも交わりますし」
「あの娘は人と交わろうとしない」
「そのことが問題です」
 大公も言う、このことを。
「マイラ様にとって」
「そうだな、どうしたものか」
「何とかマイラ様に学問と祈祷以外のことも知って欲しいですが」
「自らそうだとな」
 交わろうとせず遊びに近寄ろうとしないならというのだ。
「難しい」
「はい、どうしても」
「せめて三人と共にいて欲しいが」
「それもです」
「全くだな」
「陛下のご息女だというのに」
「側室の娘ということはだ」
 王は苦い顔で言った。
「そんなことはどうでもいいことなのだ」
「大したことではないですね」
「全くだ」
 それこそというのだ。
「気にすることではないのだ」
「ですがマイラ様は」
「周りの言葉も聞いてだ」
「育ってこられています」
 幼い、いや物心つく前からだ。周りの側室の娘という言葉を聞いてきたというのだ。この言葉をその耳に直接。
「ですから」
「難しいか」
「はい、むしろ私の娘よりも」 
 マリアよりもというのだ。
「意識しています」
「その様だな、マリアはだ」
 王も彼女のことを話す。
「そなたの娘、正室との間のな」
「正室ですか」
「しかも王家とつながる公爵家の娘だった」
「血筋が高貴である」
「そうだ、それ故にだ」
「マリアに対してもですか」
「劣等感を抱いているのだ」
 大公にこのことを話すのだった。
「強くな」
「そうなのですね」
「側室の子の宿命か」 
 王は顔を上げてこうも言った。
「これは」
「側室の子であることを強く意識する」
「劣等感を抱いてな」 
 そのうえでというのだ。
「そうしたものか」
「正室の子ではない」
「それは重荷か」
「我等が思っている様に」
 マイラ、そして彼女以外の側室即ち妾の子はというのだ。
「現に王位継承権を与えられない国もありますね」
「我が国もそうだった時期があるな」
「洗礼が許されない場合もありますし」
 このことは教会の判断による、聖職者の考えで側室の子は私生児とみなされ洗礼が与えられない。即ち社会的に認められないのだ。 
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