英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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第87話
~ラエドア城・謁見の間~
「………ようやく死んだか。……しかしあれほどの猛攻を受けてなお立ち上がるとは………さすがは”破戒の魔人”という事か………」
イグナートの絶命を見届けたリウイは静かに呟いた後、真剣な表情でイグナートがいた場所を睨んだその時、さまざまな光の球体達が出てきて、女性達の姿を形どり
「ありがとう………ようやく私達も解放されます………」
ケビン達に微笑んだ後、安らかな表情で次々と消滅して行った。
「あら?今の人達………見覚えがあるのだけど。」
「……今の方達はイグナートの謀略や力により、捕えられ、私のように”道具”として扱われた方達よ……中にはイグナートによって滅ぼされた国の姫君たちもいるけど……ようやく彼女達も解放されるのね………」
消滅して行った人物達を見て疑問に思ったセオビットの言葉にシルフィエッタは静かな口調で答えた後、次々と現れて人の姿を形どり、自分達に微笑んで安らかな表情で消えていく光の球体達から目を離さず見つめていた。するとその時
「姉様……」
「シルフィ様……」
「!!ああっ……!エフィ……!アレサ………!」
光の球体は少年の姿をしたエルフ―――シルフィエッタの弟、エフィと下半身が触手となっている種族―――エルザリィ族にしてシルフィエッタの侍女―――アレサが現れ、2人を見たシルフィエッタは涙を流しながら見つめた。
「シルフィ様……元に戻られて本当によかった……!」
「……イグナートが死んだ事により、奴に取り込まれた僕達も解放され、輪廻の輪に加われます………その前に姉様と………”ルア=グレイスメイル”にいた頃の姉様の笑顔を見れて、本当によかったです……」
「アレサ……エフィ……私一人だけ、助かってしまって本当に貴女達には申し訳ないわ……」
アレサとエフィに微笑まれたシルフィエッタは辛そうな表情で2人を見つめたが
「いいのです。シルフィ様がご無事なら、私に悔いはありません……それに……幸せそうな貴女を見れて本当によかった………」
「……それに今の姉様は一人ではありません。」
アレサは首を横に振って微笑み、エフィは微笑んだ後セオビットに視線を向けた。
「…………………」
視線を向けられたセオビットは静かにエフィを見つめた。
「……セオビット様……シルフィ様のご息女である貴女にこんなお願いをするのは図々しいと思うのですが……よろしいでしょうか?」
「……聞いてから判断するわ。何かしら?」
さらにアレサに視線を向けられたセオビットは静かに問いかけ
「これから新たな道を行くシルフィ様にとって、貴女は唯一人の家族……どうか孤独になったシルフィ様を支えてください………」
「アレサ………」
「……別に頼まれなくても母様の事は一生支えるつもりよ。……今までの分の償いもあるし……ようやく本当の”親娘”になれたからね……これからは親孝行をするつもりよ。それにこれからの母様は孤独じゃないわ。私を含めてリウイ様にイリーナ様……メンフィル皇家の方達が母様のこれからの”家族”よ。」
アレサの懇願を聞いたシルフィエッタは涙を流してアレサを見つめ、セオビットは静かな口調で答えながら一瞬だけ、リウイに視線を向けた。
「……そうですか………フフ……やはりシルフィ様のご息女である貴女は本当はとてもお優しい方なのですね……できれば生前に貴女とシルフィ様が仲良くされているところを見たかったです………」
「………………」
アレサに微笑まれたセオビットは複雑そうな表情をして黙り込んだ。
「……それではエフィ様……私はお先に失礼します……」
「……ああ。……今まで姉様を支えてくれて、ありがとう。……心から感謝している。」
「もう行くの、アレサ……?」
そしてアレサとエフィの会話を聞いたシルフィエッタは寂しそうな表情でアレサを見つめ
「シルフィ様……いつか生まれ変わって貴女と出会った時……再び貴女のお傍に置いていただけますか……?」
「アレサ……!ええ……!私にとって一番の侍女は貴女だけよ……!貴女にルリエンの導きを……!」
見つめられたアレサは微笑み、微笑まれたシルフィエッタは頷いた後、その場で涙を流しながら強く祈り
「それでは失礼いたします、シルフィ様……どうか貴女のこれからの人生が幸せに満ちた人生である事を心から祈っております……!」
アレサは安らかな表情になって、光になって、消滅した。
「………エフィ………」
アレサが消滅した後、シルフィエッタは涙を流しながらエフィを見つめていた。
「姉様……神格位に到って、ようやく姉様を解放できると思ったのに………姉様を助けれなかったあげく、逆に囚われて姉様の想いを無駄にしてしまって……僕は愚か者でした……」
「そんな事ないわ!貴方のその気持ちだけでも、私はとても嬉しかった……!私こそ、傍にいながら何もできなくて、貴方の姉として失格よ……」
「……やっぱり姉様は以前と変わらず、お優しいですね………ありがとうございます。……お陰で迷いは振り切れました。」
後悔している様子のシルフィエッタを見たエフィは微笑み
「迷い……?エフィ、一体何を……?」
エフィの言葉を聞いたシルフィエッタは戸惑った様子でエフィを見つめた。
「……我等の母たるルリエンよ………選ばれし娘たるかの者に処女の証を再び与えたまえ……」
その時、エフィは強く祈った。するとシルフィエッタに淡い光が包んだ!
「……これは一体……?エフィ、一体何をしたの……?」
淡い光に包まれたシルフィエッタは戸惑い、エフィを見つめ
「……僕達エルフの母たるルリエンより頂いた神格位の力で姉様を再び”処女”にしました……これで姉様はイグナートによる穢された身体も元通りになりました……今度は国や僕の為ではなく、姉様自身の幸せの為に、姉様自身が添い遂げる事を決めた男に姉様の大切な”処女の証を捧げてください………」
「エフィ………ありがとう………!」
見つめられたエフィは答えながら一瞬リウイに視線を向け、エフィの説明を聞いたシルフィエッタは嬉しそうな表情で涙を流しながらエフィを見つめた。一方見つめられたエフィは真剣な表情でリウイを見つめた。
「……何だ?」
「……まずは英雄達と共にイグナートを討伐した事……ルア=グレイスメイル継承者として………我が姉、シルフィエッタ・ルアシアの弟して感謝する……―――貴殿の名を聞きたい。」
エフィに見つめられたリウイは静かにエフィを見つめて呟き、エフィは静かに問いかけた。
「……前メンフィル皇帝、リウイ・マーシルン。お前達が”魔族”と蔑む者達の中でも理性を持ち、平和を望む者達―――”闇夜の眷属”を率いる皇だ。」
問いかけられたリウイは覇気を纏って、重々しい口調で答えた。
「……”闇夜の眷属”か。”魔族”は皆イグナートのような者達ばかりだと思っていたが、貴殿のような気高く、誇り高い者達もいるのだな………」
一方エフィはリウイから視線を逸らさず、まっすぐと見そえて呟き
「……姉様の事、よろしくお願いします……」
リウイに向かって頭を深く下げた。
「エフィ……」
「……承った………」
エフィの言葉を聞いたシルフィエッタは驚きの表情で見つめ、リウイは静かに頷いた。そしてエフィは複雑な表情でセオビットに視線を向けた。
「……セオビット。イグナートの血を引くお前の事を正直、僕は姉様の娘として……僕の姪として認めたくない。」
「……でしょうね。それで?貴方もアレサのように私に何か言いたい事か頼みたいことがあるのかしら?」
エフィの言葉を聞いたセオビットは皮肉気な笑みを浮かべた後、エフィを見つめて尋ねた。
「……僕の分まで姉様を支えてくれ……”セオビット・ルアシア”………」
そして尋ねられたエフィは両目を閉じて呟き
「……!ええ。貴方の分も含めて、この命ある限り、一生母様を支え続けるわ……………………”エフィ叔父様”。」
エフィの言葉を聞いたセオビットは目を見開いて驚いた後、決意の表情で静かに頷いた。
「……………姉様。最後にこの力を受け取ってください。」
セオビットの返事を聞いたエフィは静かに頷いた後、両目を見開いて、両手を空に向かって掲げた。するとシルフィエッタの目の前に神々しい気を放つ光の球体が現れ
「む。あれは……」
「……”神核”ね。」
「イオやラヴィーヌが俺の”道”を作る為に消えたように自分の”神核”をシルフィエッタに与えて、消えるつもりか……」
球体を見たハイシェラは興味深そうな様子で球体を見つめ、サティアとセリカは静かに呟いた。
「なっ!?エフィ!貴方、自分が何をしたのかわかっているの……!?そんな事をしたら、貴方は2度と……!」
一方サティアの言葉を聞いたシルフィエッタは驚いた後、血相を変え、涙を流しながらエフィを見つめて叫んだが
「いいのです。姉様が少しでも長く幸せになれるのであれば、悔いはありません。それに……僕は姉様の中で生き続けます。だから泣かないで下さい、姉様……どうか笑って下さい……最後は姉様の笑顔を見ながら、逝きたいです………」
「エフィ………………ありがとう…………………いつか貴方が生まれ変わる奇跡がある事をずっと信じ続けるわ……だから………その日が来るまで”また”ね………」
満足げな笑みを浮かべているエフィを見たシルフィエッタは驚いた後、涙をぬぐい、目の前にある”神核”を両手で包み込み、自分の身体に押し当てた。すると”神核”はシルフィエッタの身体と同化し、シルフィエッタの身体を決して老いず、永遠の命の身体―――”神格者”の身体へと変えると共に膨大な魔力を宿らせた!そしてシルフィエッタは優しい微笑みを浮かべ
「ああ………ようやく見れた………姉様の優しい笑顔を…………」
エフィは安らかな表情を浮かべて消滅した!
「………………………」
「母様………」
エフィが消滅した場所を黙って見つめているシルフィエッタをセオビットは辛そうな表情で見つめ
「……大丈夫か?」
リウイはシルフィエッタに近づき、静かな口調で尋ねた。
「はい………でも……今だけは……胸を借りてもいいですか?」
そして尋ねられたシルフィエッタは頷いた後、リウイを見上げ
「……ああ。」
シルフィエッタの嘆願にリウイは静かに頷いた。するとシルフィエッタはリウイの胸によりかかり
「ううっ……ああ……うああああああああああああああっ………!」
涙を流し続け、大声で泣いた!そしてしばらくの間、泣き続けたシルフィエッタはようやく泣き止み、涙をぬぐってケビン達に笑顔を向けた。
「……すみません。みっともない所をお見せしてしまって……」
「あたし達の事は気にしなくていいわよ、シルフィエッタさん。……大切な家族がいなくなったら、誰でもそうなるわ………」
「……………………」
シルフィエッタの言葉を聞いたエステルはわずかに辛そうな表情で答え、ケビンはある出来事を思い出して辛そうな表情で黙り込んだ。
「……それより気になったのですが、シルフィエッタ姫は”神格者”に到ったのですか?」
「はい。……ルリエンよ……どうかエフィに奇跡を与えて下さい………」
ヴァイスに尋ねられたシルフィエッタは頷いた後、その場で強く祈った。そして祈り終えたシルフィエッタはセオビットと共にケビン達を見つめ
「……これで私達の”試練”は終わりました。皆さん、本当にありがとうございました………」
「後の事は任せたわよ。……私達の”試練”を手伝ってくれて、ありがとう………」
それぞれ微笑みを浮かべた。
「ええ……任せといてください。」
そしてケビンは2人を見つめて力強く頷いた。その後ケビン達は周遊道に転位し探索をすると、文字盤が光っている石碑が追加され、『”影の王”が告げる………これより先は零の宮殿。”神殺し”と”正義”を司る女神、2人の”絆”を取り戻した娘をともない文字盤に手を触れるがいい。』という文章を見つけた。
~エルベ周遊道・夜~
「!!これは………」
「……私とセリカ……そして私達を再び出会わせてくれたエステルね………」
文字盤を読んだケビンは驚いてセリカ達に振り返り、サティアは静かに頷き
「何であたしまで指名されているんだろう……?」
(恐らくサティアとセリカが再会する切っ掛けを作ったエステル嬢ちゃんの事も憎んでいるのであろうな、ラプシィアは。……セリカよ、わかっているな?)
「(ああ……サティアとエステルは……俺の仲間達は皆、守る………!)……今度こそ決着だ、ラプシィア………!」
文字盤を読んだエステルは首を傾げ、ハイシェラの念話を聞いたセリカは頷いた後、石碑を睨み
「…………アイドス…………もうすぐ、全てを終わらせるわ……!」
サティアも決意の表情で石碑を見つめた。その後ケビン達は拠点で休憩をした後メンバー編成を行い、ケビン、エステル、セリカ、サティア、話を聞いてそれぞれ名乗り上げたセリカのかつての仲間であり使い魔達のペルル、アムドシアス、リタ、ナベリウス、セリカの”使徒”であるエクリア、マリーニャ、シュリ、サリア、レシェンテを連れて、石碑に触れて転位した。
~零の宮殿~
「何だ、ここは……?」
「……………」
転位して来たセリカは周囲を見回して眉を顰め、サティアは静かに周囲を見回し
「!!そ、そんな……!ここって……!」
「フン、まさか再びここに来ることになるとはな……!」
ペルルは周囲を見回して驚き、アムドシアスは先へと続く道を睨んでいた。
(……………なるほどね。やはり”彼女”との決着はここ以外はないという事ね……)
「へ?パズモ達は知っているの??肝心のセリカとサティアさんは知らないようだけど………」
その時、自分から出てきて真剣な表情で先へと続く道を見つめているパズモにエステルは尋ね
「――――”狭間の宮殿”………かつて私達と主が”慈悲の大女神”―――アイドスと決着を付けた場所だよ。」
リタが静かな口調で答えた。
「………そう……ここでアイドスが………」
「………………」
リタの説明を聞いたサティアは静かな口調で呟き、セリカは先へと続く道を見つめて黙り込んだ後
「―――行くぞ。全ての決着を付ける為に……!」
「うん……!」
サティアと共に歩き出し、セリカ達の行動を見たケビン達はそれぞれ頷いて歩き出した!
こうしてセリカとサティアは心強い仲間達と共にかつて”慈悲の大女神”が”神殺し”自身の手によって全ての決着を付けさせられた神々の牢獄にして処刑場――――”狭間の宮殿”の探索を開始した………!
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