μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜
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第10話 アイドル研究部
1年生達がμ‘sに入って2週間後の休日。俺は今秋葉原にいた。
実は今日は俺の好きなアーティストのCDの発売日。
元々予約はしていなかったので特典とかはないけど
1年生が入ってからというもの、穂乃果は嬉しそうに練習し、暴走する穂乃果をことりと海未は抑える日々が始まった。
花陽はよく笑うようになったし凛は相変わらず。真姫はまだ馴染めないではいるけどもう少し時間がかかりそうだ......
時間と比例してか、μ'sのみんなの接し方も少し変わってきた。特に花陽。最初の頃はもじもじと俺と話す時も遠慮するようなことが多かった。
でもあの日....μ'sに入ったときから俺のことを『大地先輩』と呼び、親しみを持って接してくれるようになった。俺としてはすごく喜ばしい。
俺と花陽がよく話すようになってからか、穂乃果は抱きつくようになってきたし...海未は殴るようになってきた。...それはいつものことか
ことりは.....微笑むだけ。そこにどんな意味があるのかは想像したくないけど.....
と、なんだかんだいって目的のCDは買うことができたし、帰りに本屋に行って参考書でもみてみようかな。
そういえば今月末に模擬試験があるんだったな.....音乃木坂にきて初めての模擬試験だから学力落ちてなきゃいいけどな....
ふと、ピンクの建物に目がいってしまう。
カードとかTシャツとか売っているのがわかるが、その柄が女の子の柄ばかりである。
手前の『いま注目の商品はこれ!』と、でかでかと看板で記されているのはA-RISEのTシャツとポスターだった。
どうやらアイドルの専門店らしい。
そういえばこの前クラスメートがアイドル専門店が出店したとか言ってたのを耳にしたな。
そんなに興味はなかったが、もしかするとμ'sのあったりするのかな...と半信半疑で中に入った。
入って後悔した。中にいる客は8割が男、しかも中にはリュックにスクールアイドルの缶バッチを何個もつけている人や中からはみ出るほどのポスターを持っている人、着ているTシャツがA-RISEの綺羅ツバサの人もいた。いわゆる『ドルオタ』の聖地だということに.........
これは.....早く出ないと誤解されかねない。でもμ‘sのあるかどうかだけ確認したい。
そんな葛藤をしながらキョロキョロと店内を見渡す。
「ん?....これは??」
俺が手にしたものは『伝説アイドル伝説DVD-BOX』というものだ。
なんていうか.........ここまでくると胸にこみ上げるモノがあるな。
世の中のドルオタはこういうものにお金をかけているんだろうな...
こんなのに7000円も払うとか....まぁそのなかにμ‘sが入ってるなら別だけどな....
「あーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
「っ!!!!」
近くで大声で騒がれ、耳がキーンと鳴る。
「ったくうっせぇな!!なんなんだよ」
振り向いたそこには.....誰もいなかった。
「あれ?誰もいない....」
キョロキョロ見渡しても騒いだ人は見当たらなかった。
「気の所為?」
「気の所為...なわけないでしょっ!!!」
グニィッ!!!
「あああっ!!いって〜〜っ!!何しやがる!」
誰かに足を踏まれた。まさかと思いつつ、視線を少し下に向ける。
そこには音乃木坂の制服に身を包み、黒髪ツインテールが特徴な1年生が腰に手を当てて突っ立っていた。
っていうか..どこかで....
「あーーーっ!!あんた!!この前ライブにいた!」
どうやら彼女は俺のことを知っているらしい?
ライブっていったらあれしかない。やはり間違いないようだ。
「えっと.....先日μ'sのライブに来ていた1年生?」
ブチッ
俺の物が切れたわけではない。だけど確かに『なにか』が切れた音がした。
「.....1年生..........ですって.......?」
急に1年生(?)の声のトーンが下がり、肩をわなわなわとさせて俯いている。
うん、間違いないようだ。俺は今の発言で地雷を踏んだらしい
「にこはっ!!!!!3年生よっ!!!!!」
顔面に拳がとんできたのは人生初めてだった
親父にもぶたれたことないのに.............
「で、見た目1年生もとい3年生の先輩は俺に何の用だったんですか」
一息ついて俺たちは近くの喫茶店で見た目は高校1年生の先輩の話を聞く。
「別にあんたに用はないわ。用があるのはあんたの持ってた『でんでんでん』よ。でもちゃんと買ったし、もういいけど...」
彼女はさっき俺が見ていた『でんでんでん』っていうやつを袋から取り出し見せびらかす。
「ふ〜ん....まぁ別にいらないから。あ、すいませ〜ん、コーヒー1つお願いします。先輩は何頼みます?ここ、俺の奢りなんで気にしないで頼んでください」
「え?じゃあ....ホットミルクで」
少しして、コーヒーとホットミルクが来たのでちびちび啜る。
「ねぇあんた.......アイドル部の部員?」
唐突に先輩は尋ねる。
「もしそうだと言ったら、どうするんですか?」
先輩は少し悩むような表情をして黙り込む。
「..........」
「..........」
「.....とっとと解散して欲しい」
「.....は?なに?もう一回言ってください」
聞き間違いだと思い、問いただす。
「だから!!...解散して欲しいって言ってるの」
「それはどうしてですか?俺達は遊びでアイドルをやっているわけじゃないんですよ。廃校を止めるために始めたんですよ!それなのに---」
「いいから!!スクールアイドルを早く解散しなさい。」
どうしてそんなに解散して欲しがるんだろうか。
ライブの時にはあんなにも真剣に見てくれていたのに....
イマイチ先輩の言動が理解できない。
「残念ですが先輩にそんなこと言われたってやめるわけありません」
「なんですって.....」
「どうしてやめて欲しいのか理由を言ってください」
「そ、それは........」
急に口篭る。なるほど言えない理由かそれとも単なる嫉妬か.....
「まぁ....いいです。どんなこと言われようと俺達は...彼女たちはアイドルを続けます」
「........そう...なら彼女たちに直接言うわ。ご馳走様」
先輩はホットミルクを飲み干し、荷物をまとめて立ち上がる
「先輩」
「なに?」
「名前.....俺は笹倉大地」
「.......ふん」
先輩は名乗らず店を出ようとする。
さ〜て......どうしたもんかな。先輩に言われたからって辞めるような奴らじゃない。先輩は何故解散して欲しいのか聞き出さないと後々面倒なことになりそうだ
「矢澤にこ」
「...........いい名前じゃないですか」
いきなり名前言われてもわかんねぇよ....
矢澤......にこ....か。
「矢澤先輩。また明日です」
「........」
矢澤先輩は無言で頷き、店を後にする。
残された俺はまだ中身のあるコーヒーと空のホットミルクを見つめて、
ため息をつくだけ
〜☆〜
「え?アイドル研究部??」
穂乃果と海未、ことりに連れられて生徒会室を訪れた。部員が5人以上集まったことにより正式な部活として認められると思っていた。
考えてみれば1年生が入ったことにより7人になったんだな。いろいろありすぎて忘れていたよ。
と、教室でその事を海未に話したら
『大地....あなたもですか』
と、呆れられてしまった。穂乃果も同じだったらしい。
真姫も『ダメかもこの先輩』と言って呆れていたらしい
ダメな先輩ですいませんね〜まったく
「そう、既にこの学校には『アイドル研究部』というアイドルに関する部が存在します。」
「まぁ、部員は1人やけど」
そこで部活申請に行ったことろ現在の状況に至るわけだ。
「え?でもこの前部活には5人以上って...」
確かに絢瀬会長はそう言った。なのにどうして部員が1人でもあるんだ?
「設立するときは5人必要やけど、その後は何人になってもいい決まりやから〜」
「そ、そういうことか.....」
つまり退部しようが入部しようが最初に5人以上いればいいということか。
「生徒の人数が限られている中、悪戯に部を増やすわけにはいかないんです。アイドル研究部がある以上、貴方達の申請を受け容れるわけにはいきません」
絢瀬会長は余計なことを冷たい氷のように言い放つ。
「質問です」
俺は軽く手を挙げる
「なにか?」
「なんでその事を俺らが最初に申請に来たとき言わなかったんですか?」
明らかにつくるなと言っているように思えて仕方ない。
なにが絢瀬会長をそこまで嫌いにさせたんだ?そんなに穂乃果たちが嫌いなのか?それとも......
「........」
無言のままじっと俺を見つめる。どうやら答える気がないようだ
「そんなことあなたが知ってどうするつもりです?」
「質問に質問で返さないでください。今は俺が絢瀬会長に質問しているんです」
俺と絢瀬会長の間に火花が散る。
あまりにも絢瀬会長の態度に納得できず怒りがこみ上げてしまう。
彼女も俺も互いに睨み合ったまま喋ろうとしない
「まぁまぁ...えりちも大地くんも落ち着き〜な」
そんな俺達の中に東條副会長が介入する。
「.....希」
介入により気分を削いでしまったので俺はため息をつきながら後ろに下がる。
「...とにかくこれで話は終わり--「になりたくなければちゃんとアイドル研究部と話をつけてくることやな」
「ちょっと!希」
絢瀬会長の言葉を遮り、東條副会長は俺らにアドバイスをする。
「2つの部が1つになることは問題ないやろ?部室に行ってみれば?」
東條副会長はどちらの味方なのだろうか.....
掴みどころの難しい人だな。でも俺達を助けるような素振りを見せているにも関わらず絢瀬会長の側で副会長を務めてるってことは2人は仲がいいのかもしれない.......
「わかりました.......ほら、行くよ」
〜☆〜
「な.....な....な」
「な....なんであんたが...........」
アイドル研究部の部室は3年生の階の空き教室の一角にある。
そこに俺とμ‘sのみんなはやってきた。そこで鉢合わせしたのが......
「や......矢澤先輩?」
心の底からびっくりした。あそこまでμ‘sを解散しろ解散しろ言ってたから、てっきりアイドルが大嫌いなんだと思っていた。
そして蓋を開けたらアイドル研究部の部員ときた。驚かないことの方がムリだろう
「え?大くんの知り合いなの?」
「ま、まぁ...知り合いというか昨日知り合ったというか.......」
とりあえず部室の前でもなんなので矢澤先輩に部室に入れてもらい、矢澤先輩とμ'sのみんなは席に座り、俺は椅子が無かったので壁に寄りかかって話を聞くことにした。
ていうか....この部屋、アイドルグッズ多いな。どこを見てもアイドル、アイドル、アイドル......
みんな落ち着きがなくキョロキョロし始め、花陽は目をキラキラさせながら物色し始める。
「すごいな....」
「あれはA-RISEのポスターだにゃー」
「こっちは福岡のスクールアイドルね」
「校内にこんなところがあったなんてね....」
我慢しきれなくなった穂乃果、凛、真姫、海未は立ち上がって
アイドルグッズに近寄る。
「あんまりジロジロみないでよね」
近寄るμ'sのメンバーに注意する矢澤先輩。若干嬉しそうな顔をしている。ほんとはアイドル大好きなんじゃないのか?
「こ、こここ.....これは......」
花陽が手にしていたのは俺が昨日見つけた『でんでんでん』というDVD-BOX。
「伝説のアイドル伝説DVD全巻BOX!!持っている人に初めて会いました」
あまりの花陽のテンションっぷりに矢澤先輩はたじろぐ。
「そ、そう?」
「すごいです!」
「ま、まぁね」
花陽が褒めまくるためすこし鼻高々のようだ
「へぇ〜そんなにすごいんだ」
穂乃果は興味がないらしい。おい、仮にもスクールアイドルだろ?知らないっていいのか?俺もそのすごさは知らないけど....
穂乃果の発言で花陽は火がついたらしく
「知らないんですか!?!?」
と、大声で驚きすぐさま部室に設置されたパソコンに向かう。
なんなんだ?今日の花陽は.....
「伝説のアイドル伝説とは各プロダクションや事務所学校などが限定生産を条件に歩み寄り古今東西の素晴らしいと思われるアイドルを集めたDVD-BOXでその希少性から伝説の伝説の伝説略して『でんでんでん』と呼ばれるアイドル好きなら誰もが知っているDVD-BOXです」
花陽はらしくもなく熱く、物凄い勢いで語り出した。何を言ってるのか正直聞き取れなかったぞ。花陽ってこんなキャラだったんだ.....初めて知ったよ...
「花陽ちゃんキャラ変わってない?」
穂乃果の指摘を無視して花陽はパソコンと会話するかのようにまだ語っている
「通販限定の特典ポスターも持っているなんて....尊▪敬」
そして再度矢澤先輩の方を見る。
「家にもう1セットあるけどね...」
「ほんとですかっ!?」
「じゃあ後でみんなでみようよ」
「だめよ、それは保存用」
保存用とかあるんかい!!これがアイドルに魂を込めるっていうのかな......すごいな..尊敬はしないけど
「うわぁぁんっ!!で...でんでんでん...」
花陽は机に突っ伏し泣き崩れる。
「かよちんがいつになく落ち込んでる...」
凛がそこまで言うってことは珍しいことなんだな...
ことりはことりで棚の方を見ている
「ことり、何見てんだ?」
「ぴよっ!!な、なんでもないよなんでも...ハハ」
なにもそこまで驚かなくても...てか、ぴよってなんだよぴよって
「??.....ミナリン....スキー?」
ことりが見ていたのはミナリンスキーと言う人のサイン
誰?
「あぁ...気づいた?それは秋葉のカリスマメイド『ミナリンスキー』のサインよ。ネットで手に入れたから実物は見たことないけどね」
「秋葉にそんなメイドさんいるんだね。1度は見てみたいな〜」
「ははは...ははは」
ことりはずっと苦笑いし、そしてほっと胸をなで下ろす。
なんか今日のμ‘sは忙しいな。
「みなさん、そろそろ本題に入りましょう」
海未は手を叩いてみんなを席に付かせる
「アイドル研究部さん」
「にこよ」
「にこ先輩、実は私達スクールアイドルをやっておりまして」
「知ってる、どうせ希あたりに部にしたいなら話つけてこいとか言われたんでしょ?」
「おお、話が早い」
「まぁ、いずれこうなるんじゃないかと思ってはいたけどね」
「なら--「お断りよ」
矢澤先輩は即答した。昨日の時点であの態度だからこうなるとは予想していた。俺にはまだ矢澤先輩は何をしたいのかわからない
わからない....けど、なにかあると俺は睨んだ。
あとで聞き出せないだろうか....
「わ、私達はμ'sとして活動出来る場所が欲しいのです。なのでここを廃部にして欲しいとか言いたいわけではありません。」
「お断りって言ってるの!言ったでしょ!貴方達はアイドルを貶してるって!」
「ん?」
矢澤先輩はμ'sのメンバーと面識あるのか?
俺は近くにいた真姫の肩をたたく
(なによ?)
(わりぃ、君達って矢澤先輩と面識あるのか?)
(え?前に私達の前に現れて解散しなさいって言われたの)
(ふ〜ん。そ、ありがと)
「でも!ずっと練習してきたから歌もダンスも--「そういうことを言ってるんじゃない」
「え?」
みんなが目を丸くして疑問を浮かべる。じゃあ何について貶してるっていんだ?
「あんたたち...ちゃんと『キャラ作り』してるの?」
「「「「えっ???」」」」
は?何言ってんだこのお子様体型の先輩は
「お客さんがアイドルに求めているのものは楽しい夢のような時間でしょ?」
「そ、そんなもんなのか.....」
「だったら!それにふさわしい『キャラ』ってものがあるの!ったくしょうがないわね」
矢澤先輩は後ろを向いてなにかしようとしている。
「いい?例えば......」
「にっこにっこにー♪あなたのハートににこにこに〜♪笑顔届ける矢澤にこにこ〜♪にこに〜って覚えてらぶにこっ♪♪」
...........................................
この先輩は一体何をしているのか俺には理解出来なかった。
だけど.....
だけど.....
俺はこの瞬間
既視感を覚えた
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