FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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シリルvs.ノーラン
前書き
思ったけど、アイリーンの魔法で全員が方々に散ったのであれば、下手したら今までに倒した12が出てくるかもしれないんですかね?
もしディマリアなんか出てきたら、シェリアが可哀想じゃん!!シェリアの頑張りを無駄にしないでくれぇ!!
ウェンディside
「この通路の先に、壊れて大きく空いた穴があったはず!」
「あい!!」
ルーシィさんの言う通り、通路の先に光が差し込んできている場所がありました。あそこから出て、フェイスを早く止めないと!!私たちを先に行かせてくれたシリルやグレイさんたちのためにも。
「!!」
まもなく穴に到達する。そう思っていると、T字路になっている場所から、ピンク色のモコモコが出てきていることに気付きました。
「逃がしませんぞぉ!!」
「きゃっ!!」
モコモコの中から姿を見せたのは、がいこつさんと一緒に制御室にいたはずの一つ目さん。彼はモコモコを巨大化させると、彼のそばを通りかかったルーシィさんの動きを止めました。
「なんでアリエスのモコモコが!?」
「ルーシィさん!!」
「ハッピー!!」
思わず立ち止まる私とシャルル。ルーシィさんはアリエスさんのものとよく似たモコモコの中から顔出します。
「ウェンディ!!時間がない!!先に行って!!」
「シャルル!!気を付けて!!」
フェイス発動まであと40分を切ってるはず。ここからドクゼリ渓谷までは大分距離があるし、迷っている暇はないですよね。
「はい!!」
彼女たちの言葉を聞いて穴から外へと飛び立つ私たち。しかし、そう簡単に敵も逃がしてはくれません。
「逃がさんと・・・言ってますぞぉ!!」
先程とは姿が変化している一つ目さんは、腕を伸ばしながら私たちを捕まえようとしています。
「シャルル!!追ってくるよ!!」
後ろから迫ってくるピンクのモコモコを纏った腕。シャルルはそれを見て、速度を上げながら振り払おうと動きに変化を入れながら逃げ回ります。でも、なかなか相手を振り払うことができません。
「しつこ~い!!」
あまりのしつこさに叫んでしまいました。このままじゃ捕まっちゃう!!
「絶対引き離す!!」
シャルルはそう言うとさらに速度を上げて逃げきりを図ります。
「うぎゃああああ!!」
足を掠めそうなほどに迫ってきた腕。だけど、悲鳴が聞こえたかと思ったら、その腕がみるみる縮んでいくのが目に入りました。
「どうしたの?」
「ん?」
一度その場に留まり様子を伺う私たち。一つ目さんが私たちを追いかけられなくなった理由、それは、ある人物の攻撃によって腕が破壊されたからでした。
「また会ったな、目ん玉やろう」
「ナツ!!」
それは、炎の竜、ナツ・ドラグニルさんの攻撃だったみたいです。
「お前は!!」
どうやら一つ目さんとナツさんは面識があるらしく、互いのことを見据えていがみ合っています。
「ありがとうございます!!ナツさん!!」
「ナツがいれば、大丈夫ね」
安心してその場を後にする私たち。皆さんが逃がしてくれたんだ、なんとしてもフェイスを止めなくちゃ!!
「シャルル!!もっと急いで!!」
「わかってる!!」
風を切りながらドクゼリ渓谷を目指す私たち。シャルルに負担をかけちゃうけど、急がないと大変なことになっちゃう。
「急がないと間に合わない。大陸中の魔力を消滅させるなんて、そんなこと、させるわけにはいかない」
今は皆さん戦っている真っ最中。このタイミングで魔力がなくなっちゃったりしたら、みんな死んじゃうもん。それをなんとかできるのは私たちだけ。
「だけど、フェイスを止める方法どうするの?」
「わからない・・・けどやらなきゃ!!シリルやナツさんならそうする」
フェイスの止め方はわからない。現地による手動操作じゃなきゃいけないってあったけど、やり方が向こうでわかるようになってるとは限らない。だけど、シリルやナツさんだったら何か方法を見つけるはず。私だって同じ滅竜魔導士なんだから、頑張らないと!!
「絶対止める!!シャルル!!もっと早く!!頑張って!!」
そう言うとシャルルはさらに速度を上げていきます。こっちはなんとかするから、負けないでね、シリル。
シリルside
「なんとか逃げ切ったみたいかな」
目を使ってウェンディとシャルルがこのギルド内から脱出したのを確認した俺は、改めて敵に向き合う。ノーランはこちらをマジマジと見ていると、口元に手を当て何かを考えている。
「まだ未完成の時に外に出たのか。通りで・・・」
「は?」
何かをボソボソと呟いているノーラン。彼が何のことをいっているのか、何を考えているのか、さっぱりわからない。
「体の具合はどうかな?シリル」
「眠らせてもらったおかげで、万全だよ」
余裕があるのか、こちらの体調を聞いてくるノーラン。俺はそれに思った通りに答えると、彼は笑みを浮かべこちらを見ている。
「そうか。気付いていないならそれもそれでいいだろう」
「??」
気づいていない?俺の体に何かおかしいところでもあるのか?
「シリル~・・・」
「ん?」
ノーランと睨み合っていると、ズボンの裾を引っ張るものがいたため、彼女の方に視線を移す。足元にいたのはセシリーなのだが、彼女の顔が妙に強張っていた。
「その腕・・・どうしたの~?」
腕?彼女が何のことを言っているのかわからず、とりあえずそこを見てみる。すると、ある一部が見たこともないほど変わっており、目を見開いた。
「なんだこれ・・・」
自身の左腕・・・前腕の部分に妙な黒い模様が浮かび上がっている。うっすらと消えているのか、はたまた浮き出ている最中なのかは判断できないが、確かにそこには模様が描かれていた。
「やっと気付いたか、おチビさん」
「っ・・・!!」
勝手に人の服を脱がせたり何かおかしな模様を入れたり・・・好き勝手やりやがって・・・
「セシリー、離れてて」
「オッケ~!!」
安全のためセシリーをこの場から離れさせておく。あいつは戦うのは苦手だし、これが一番無難なはず。
「お前は俺がここで倒してやる!!覚悟しろ!!」
ノーランを指さし宣言する。こいつの血を回収するのは、戦っている最中にいくらでもできる。殴って返り血を服にもらうのもいいし、倒した後に何かしらの入れ物に入れるのだって構わない。とにかく今は、こいつを仕留める!!
「水竜の・・・鉄拳!!」
地面を強く蹴り、顔面目掛けて握りしめた拳を向ける。水を纏ったその一撃は、男の頬に突き刺さった。
「え?」
攻撃が当たったことに驚きを隠さない。こいつは今避けようとしていなかった・・・それどころか、受け止めようともしないで、まるで自らの意志で攻撃を受けたかのような、そんな印象を与えた。
「それが今の全力かい?」
「!!」
目をギョロッと動かしこちらを見るノーラン。その顔は完璧に俺の拳を受けたはずなのに、全くダメージを受けているようには見えない。
「ふっ!!」
「うっ!!」
足で腹部を蹴られたことでその場に尻餅をついてしまう。そこからノーランは体を回転させて回し蹴りを仕掛けてきたが、間一髪頭を下げて回避する。
「くそっ・・・」
立ち上がりすぐさま距離を取る。でも、なんであの程度の蹴りで尻餅なんかついちゃったんだ?普段ならそんなことないはずなのに・・・
「悩んでいる暇は・・・」
さっきの出来事を思い出していると、敵は右手を横に上げ魔力を集中させている。
「ないんじゃねぇの!?」
ザクッ
「!!?」
ノーランが腕を振るうと突然、左肩の辺りから鮮血が吹き出る。あまりの痛みに、傷口を押さえその場に膝をつく。
「がっ・・・くっ・・・」
「シリル~!!」
「来るな!!」
痛みを堪えながら、こちらに来ようとしたセシリーを制する。血があふれでている箇所に水を当てて止血を行う。しかし、頭の中ではある疑問が浮かび上がっており、それを必死に考えている。
(今・・・何か持ってたか?)
振るわれたノーランの手には何も握られていなかったように見えた。しかし、実際は俺の体に刀に切り裂かれたような傷ができた。これは一体どういうことなんだろうか?
「クククククッ」
思考を凝らしているとノーランが顔を伏せて笑い出す。その笑い方がこちらを嘲笑っているようで、なんかムカつく。
「情けない姿だな、シリル」
「何?」
顔を上げてこちらを見下したような笑みで見下ろしてくるノーラン。その男の態度に目を細める。
「だってそうだろ?お前は三大竜とかいう奴等を一人で圧倒したそうじゃないか。なのに今は、たった一人の・・・それどころか全力すら出してない相手に手も足も出ない。これが情けなくて何が情けないんだ?」
「ぐっ・・・」
これは挑発だ。ここで怒ったら相手の思うつぼ。冷静に、冷静に・・・
「それとも何か?三大竜はこんなしょぼいお子様に手も出ないヘッポコどもなのか?」
その言葉を耳にした瞬間、堪忍袋の緒が切れたのがわかった。
「てめぇ!!」
「おっと」
水の剣に腕を変化させて斬りかかる。ノーランはそれを横に小さく飛んであっさり回避している。
「どうした?当たってないぞ?」
いまだに膝をついたままのこちらを見下しノーランはそう言う。止血も終わり、一時的な痛みも引いてきたので、足に力をいれて立ち上がる。
「ふぅ・・・」
しかし、なぜか立ち上がった際に猛烈な疲労を感じ、大きく息をつく。おかしいなぁ、体力がこの程度で尽きるはずなんかないんだけど。
「もうお疲れかい?」
「まだまだ!!」
両手で十字を作り敵を見据える。ノーランはそれに対処するべく攻撃の姿勢へと入る。
「水竜の・・・翼撃!!」
水の翼を作り出し目の前の敵を飲み込もうと考える。だが、
「え?」
勢い良く放たれたはずの水の翼。それは、ノーランに届く前に徐々に蒸発してしまい、消えてなくなってしまう。
「あ・・・あれ?」
なんでだ?力が入ってなかった?それとも魔力がちゃんと込められていなかったのか?でもいつも通りにやっていたはずだし、何かおかしい点は思い付かないんだが・・・
「どうした?攻撃が届いてないぞ?」
「うるさいうるさいうるさ~い!!」
攻撃が消滅した辺りを指さし挑発にうって出るこの男に苛立ちが立ち込める。イライラしすぎてるから、力がロスしてるのか?その結果なんてない動作で疲労が溜まったり、魔法が思うほどの威力を出せていないのか?
「考えてたって仕方ない」
体を捻り、頬を大きく膨らませる。威力が足らないなら、いつもより強く力を込めればいい。
「水竜の・・・咆哮!!」
ブレスに全神経を集中させてぶちかます。普段の何倍もの大きさで放たれたそれは、みるみるうちにノーランへと迫っていく。
「このままいけぇ!!」
声と共になおもブレスを吐き出す。敵に攻撃が当たると思った直後、ノーランが腕を振るう。すると、津波ほどの大きさのあった水の波動は、真っ二つに分断されてしまった。
「どうだ?」
「そ・・・そんな・・・」
威力は絶大だったはず。それなのに、その攻撃はノーランにあっさり破られてしまった。確かに彼のもとに到達する前に少しずつ衰えているように見えなくもなかったが、それでも当たればいいダメージを与えられたはず。それなのに、あいつはずいぶんあっさりとそれを打ち破ってきやがった。
(調子が悪い?いや、体自体は違和感があるわけでもないからそれはない・・・と思う)
魔法の力がいつもより落ちているのが原因だとは思うんだけど、何が理由で落ちているのかわからないから対策の建てようがない。ミラさんとエルザさんと戦ってた時は問題なかったわけなんだから、その後に何かあったってことか?
「考えられるのは・・・」
左腕の前腕を握り絞める。ノーランにも意識を向けたまま、チラリと妙な模様が浮かび上がっているその腕に視線を落とす。もし俺の不調の原因があるのだとしたら、それはこれ以外には考えられない。
そもそもこれは何なんだ?魔法を封じる印?いや、でも冥府の門は大陸中の魔力をすべて消滅させる兵器、魔導パルス爆弾フェイスを使おうとしているんだ。今さらたった一人の魔力を拘束して意味があるとは思えない。
フェイス計画が失敗した時のための保険か?でもミラさんの体にはこんな模様なかったし、俺一人だけ縛りをつけるなんてことがあるだろうか?縛るなら捕らえたメンバー全員にやるべきだし、それが当たり前のことだろう。
「むぅぅぅぅ!!」
訳がわからず頭をかきむしる。一体これが何なのかもわからないし、わかったところで不調が回復できるとは限らないし・・・どうすればいいのかな?
「何に悩んでるのか知らねぇけど、隙だらけだぜ?」
ノーランはそう言うとまたしても腕を振り上げる。
「くっ!!」
あいつが動くよりも先に魔力の流れと筋肉の動きからコースを予測して回避行動に出る。その結果、高速で降り下ろされたノーランの腕から放たれた謎の攻撃は、俺の脇をすり抜けて後ろの壁を切り裂いた。
「今だ!!」
敵の攻撃を避けた今が大チャンス。そう考えた俺はすぐに進行方向をノーランへと変え突撃する。
「水竜の・・・」
ジャンプしながら足に魔力を纏わせ一気に距離を詰める。ノーランは腕を振り切っていたこともあり、こちらに体を向けるのに時間がかかっている。
「鉤爪!!」
ノーランの顎目掛けて放たれたドラゴンの爪。その一撃が入れば間違いなく脳震盪が起こるであろう。そうなれば、さっきの劣勢から優勢に事態を立て直すことができるはず。そう思い渾身の力を込めた攻撃・・・それなのに・・・
ガシッ
ノーランはその攻撃をあっさりと受け止めた。
「何!?」
向こうは体勢も悪く反応も遅れていた。おまけにノーランの魔法は物体を変化させる魔法だったはず。素手での戦闘は俺に分があるはずなのに・・・
「残念、せっかくのチャンスだったのになぁ」
片足を持たれたまま着地する。掴まれた足が身長の関係上高い位置にあるため、バランスがものすごい悪い。
「チャンスの後にはピンチありって言うしな」
とても逃げられる状況にない俺にノーランは先程までの同じように手を振るう。その結果、胸から大量の血しぶきが上がった。
「がはっ・・・」
至近距離で攻撃を受けてしまった俺は、口からも血を吐き、その場に倒れ込んだ。
後書き
いかがだったでしょうか。
シリル劣勢から始まりました二人の戦い。
シリルが力を発揮できない理由は後々ちゃんと出てきます。
予想よりも二人の戦いが難しい気がする今日この頃。
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