龍が如く‐未来想う者たち‐
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冴島 大河
第三章 内部崩壊
Side story 東城会 Yを持つ2人
宮藤が逃亡した日の朝。
東城会本部は、騒がしい朝を迎えていた。
6代目の大吾と連絡はつかず、喜瀬はまだ警察。
足立と宮藤も行方不明で、真島は留守電しか入らなかった。
今力ある者達が徐々に消えていき、軽くパニックに陥る。
今は6代目を捜すべき。
それなら幹部の人も捜して、手伝ってもらうべきだ。
様々意見が錯綜する中、2人の男は黙って座っている。
大きな体に濃い顎髭の男と、長い黒髪を後ろに結ったつり目の男。
腕を組み静かに俯いていたが、まとまらない幹部の会話にしびれを切らしたのか、顎髭の男が座る椅子に拳を叩きつけた。
大きく音が響くと、騒がしかった幹部が一斉に静かになる。
「いつまで座って話してる?動かないと見つからないだろ?」
「だがよ、屋良……」
「では僭越ながら……」
長髪の男が椅子から立ち、数人の男を指さす。
大体ここにいる幹部の、半分程だった。
「今指をさした方々は、6代目の捜索にあたって下さい。残りは、連絡のつかない喜瀬さん以外の幹部と引き続き連絡をとってみてください」
話し終えると長髪の男は椅子に座り、逆に揉めていた男達は立ち上がった。
「湯川がそう言うなら、俺たちはそうするさ」
「では、よろしくお願いします」
湯堂と呼ばれた男がニコリと笑うと、幹部達はゾロゾロと部屋から出て行った。
残されたのは長髪の湯川と、屋良と呼ばれた顎髭の男のみ。
静まり返る空気に、湯川の小さな笑い声が響く。
「相変わらずの采配だな、湯川」
「いえ、とんでもないです。僕には、屋良さん程の力は持っていませんよ」
「本当、何で極道者になったんだよ」
屋良の言う通り、極道に似つかわしくない男だった。
整った顔に、透き通る声。
歌舞伎の女形が似合いそうな湯川が、極道を選んだ理由がわからない。
逆にそういった雰囲気だからこそ、誰も腹の底を読めないというメリットがあるのだが。
不意に、扉からノックが聴こえる。
3回ノックの後姿を現したのは、姿を消していた足立だった。
「屋良さん、湯川さん」
「おぉ、来たか足立。まぁ座れや」
部屋の扉をゆっくり閉め、空いた席に腰かけた。
いろいろ言いたい事はあったが、どれから話せばいいかわからず言葉に詰まる。
それを察した湯川は、無言でゆっくりと頷いた。
「6代目は、冴島大河と一緒です」
「冴島……あいつはムショにいるんじゃ無かったか?」
「どうやら真島さんが絡んでいるそうです」
「はん、また真島かいな」
難しそうな顔をして、鼻を鳴らす。
屋良は真島とは気が合わず、陰で対立していた。
だからこそ、しゃしゃり出てくる真島が気にくわない。
「宮藤も負けたらしいやないか」
「そうみたいですね……」
「もう宮藤くんは、使えませんね」
ニコニコ笑っていた湯川の顔が、突然不気味に怪しく微笑む。
怒りにも笑顔にも思えない、理解し難い顔。
だから足立は、湯川だけは絶対に逆らわないと誓っていた。
「如何致しますか?」
話を振られた屋良は、思わず湯川の方を見る。
案を出せと促すその目に、聞こえるか聞こえないか程の溜息を漏らした。
「そろそろ、頃合いなのかもしれませんね……」
「じ、じゃあ……」
足立は生唾を呑み込み、言葉を待つ。
目を伏せて微笑む湯川の、次の言葉を。
「堂島大吾、暗殺計画。始動させます」
黙っていた屋良が、ブルッと身震いする。
口を開けっ放しの足立もまた、興奮のあまり震えていた。
堂島大吾は、殺してでも蹴落とす。
そして空いた7代目の座に……。
間違っても、ただの殺しではない。
自分たち自身に火の粉がかからぬよう、暗殺という計画を練っていた。
たった半年で持ち直した東城会を崩すため。
そしてそれを再び立て直し、崇拝される存在になるため。
東城会の未来を変えようとする2人のYが、今動き出す。
後書き
次回6/14更新
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