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魔法少女リリカルなのはINNOCENT ブレイブバトル

作者:blueocean
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DUEL19 過去との決着、そして明日へ………

「………」
「ふっ!!」

互いに大地に立ち、ぶつかり合う。
無言で攻撃を続ける桐谷。一歩的に攻められてはいるものの、しっかりと対応できていた。

「厄介だな………」

自然と人間の急所を狙ってくる攻撃。表情にも出ないため、冷酷な殺人マシーンに思えてくる。
更にその時の感覚で攻撃してくるため動きが読みづらい。今の俺でなければ対応しきれなかっただろう。

「でも、だからこそ………」

付け入る隙は多いにある。その中の一番の理由は相手はブレイブデュエルをしていないことだろう。

「魔神剣!!」

斬撃を飛ばし、桐谷を攻撃。

「………」

当然難なく避けられるがそんなの想定済みだ。

「魔神剣・爪牙!!」

桐谷が避けた瞬間を狙い斬撃を連続で放つ。

「……!?」

想定していなかったのが避けるのには間に合わず身を守るしかなかった。

「こんなんで驚くなよ!!」

足の止まった桐谷にすかさず追撃をかける。
横薙ぎに斬りかかるが、身体を捻り、最小限のダメージで避けられた。

「だがな……」
「!?」

この状態になって初めて桐谷の顔が険しくなった。
横薙ぎに斬りかかった後、続けて鞘で脇腹をぶっ叩いたのだ。

斬れはしないもののそれでもダメージはある。

「………ッ!?」
「初めて声をあげたな……だが、まだまだだ」

優勢に思えたが、すかさず距離を取る。
相手の強さを軽んじてはいない。相手の土俵で戦う必要も無いのだから。

「どうする?このまま負けるか?」

俺には既に奴に勝つ算段は付いていた。あいつは元々ダメージを負っている。それを気にせず動けるのは桐谷の今の状態が原因だろう。ある意味ダメージを気にせず、動けると言う事は無敵にも思えるが、それはもろ刃の剣だ。


ダメージを気にしない。それは自分の限界を分かってないのと同じだから。


「………」

そんな事を分かっているのか分かっていないのか、相変わらず無言で自分の意思を消しているような状態の桐谷。

恐らく分かっていないだろう。

「まだ目覚めないようだな………だったら!!」

魔力を刀に込め、鞘に収める。

「覚悟しろ………」

さらに距離を取り、更に魔力を込める。これほど魔力を溜めさせているのも今の桐谷の敗因だろう。

「斬り裂く………!!」

そして大地を蹴って相手に迫る。
桐谷はその場で身構えていた。おそらくカウンターに近い攻撃でも狙っているのではないか?

だが、そんなもの関係ない。

「葬刃!!」

魔力を込めた迅雷の抜刀術にこれくらいの距離は関係ないのだから………
















(何が起こった………)

世界がスローモーションのように動く中、桐谷が我に返っていた。

(戦いは………)

そこで桐谷は気がつく。自分が背中から倒れていっている事に。

(バカな!!負けるわけには………)

だが次第に思い出す記憶。それは我を失い戦っていた桐谷自身の記憶だった。

(これがブレイブデュエルか………)

敗因は桐谷自身にも分かっていた。ブレイブデュエルの場でただ本能のまま暴れていた事が原因だと。

(負けた………だが何故だろうな、あんなに気負ってた筈なのに妙に清々しい………)

今まで気負っていた分解放されて楽になった事が影響しているのか………妹の為に1人で戦って自分をすり減らして、妹の実の兄を殺そうとして………流石に精神が病んでもおかしくないと今更ながら自問する自分に思わず小さく笑った。

「………加藤桐谷」

桐谷の小さな笑い声を聞いてか、刀を鞘に収めた零治が近づいてきた。

「負けた……お前の言う通りだ。ブレイブデュエルをしているのにブレイブデュエルをしなかった俺が勝てるわけないな……自分で墓穴を掘っていたとは………マヌケにも程がある」
「俺もバカには出来ないさ。両親の遺してくれたメッセージを見なければ今日の桐谷みたいに闘っていたと思う。それは最悪な勝負だっただろうぜ」

零治の言葉に桐谷は小さく頷く。

「お前は加奈の為に俺を殺すと言った。だけどそれは本当に加奈の望んでいる事なのか?加奈はそれを聞いても何も言わなかったのか?加奈に一体何が起こってるんだ?」

零治の問いに桐谷は答えない。

「1人で抱え込むなよ!俺だってお前と同じ加奈の兄なんだ!!」

その言葉を聞いて桐谷の心は決まった。

「零治、お前に聞いてほしい事が………」


「全く、情けない」


「「!?」」

突然、零治と桐谷を衝撃波が襲った。

「零治!?」

黒崎が心配そうに2人に近づく。

「えっ、誰………?」

神崎の言葉に続いて、衝撃波が来た方向を見ると、そこには桐谷に似た男性が立っていた。

「………父さん」
「父さん!?じゃあアイツが………」

「レイ!!」

そんな中、ブレイブデュエル内にディア達3人がやって来た。これは予め話し合った通りだ。

「………加藤謙蔵さんですね」
「忌々しい………加奈は早苗似だが、お前は雅也にそっくりだな」

母親を名前で呼ばれ、零治の眉を吊り上げた。

「父さん、何故………」
「決まっているだろう?いつまでもダラダラしてるお前に待つのも限界だったのでな。行動に移す事にした。まさか敵に助けを求めるとは思っていなかったよ………」
「何をするのかは知らない。………だが、碌でもない事なのは分かってる。鹿島はどうした!!加奈を使って何をするつもりだ!!」
「あの執事にも困ったものだ。主人の命令を無視して行動するとは執事として失格だな。おかげでギリギリになってしまった。お前に全てを話していないとは言え、余計な障害は無しに限る。クレインもお目にいらぬ入れ知恵をしたようだが、アイツは俺を裏切る事は出来ない。だから脅威にもならないだろう」

「桐谷、一体何の話を………」

親子で話し始める2人に零治が詳しく聞こうとした時だった。

「あっ………」

短いショートの髪にカチューシャを付けた少女。小さい頃の面影を感じ、その顔は虚ろながらとても懐かしさを感じた。

「加奈!!」
「何!?」

零治の声に桐谷も確認する。その姿は間違いなく加奈に違いなかった。

「加奈!!父さん、一体何を!!!」
「今日!この日を持って!私は全てを取り戻す!!ジェイルにしろ、グランツにしろ、もう誰が来ても手遅れだ!!あの男が作ったこのゲームを壊し、その血を断ち、私は新たな早苗を手に入れる!!さあ起動しろウロボロス。全てを暴食の限り喰らい付くせ!!!」

大きく空に両手を上げながら狂ったように叫ぶ謙蔵。
そして加奈を巻き込んで2人の周りに巨大な機械の蛇が現れた。

「何これ!?」
「桐谷、来い!!」
「加奈!!加奈!!!」
「みんなも一旦離れるぞ!!」

驚きで硬直している皆に声を掛け、急いで距離を取る。

「何だよあれ………」

元々離れていた神崎だけはその一部始終を全て見ていた。

現れたのは1体の機械の蛇だけでは無い。その蛇は7体居て、そのどれもが大きい。身長の高い零治を丸呑み出るくほどだ。
そしてその7体の蛇が合わさっている中心部分、そこに謙蔵と加奈が居た。

「何でしょうあのカプセルみたいなものは………?」

ウロボロスと呼ばれた蛇に乗る謙蔵とは異なり、謙蔵の後ろには加奈を入れた紫色のカプセルがあった。

「………嫌な予感がする」
「俺もだ………」

そんな話をしていると相手が動いた。

「何をしているの………?」

2体の蛇が何も無い空間を何かを探すように首が動いていた。そして同時に………


バリン!!


「えっ………?」

何も無い空間にガラスが割れたように違う空間が出来た。

「あれは………」
『皆、聞いてくれ!!』

そんな時、緊急の通信が入った。通信を入れたのはグランツ博士だ。

『現在謙蔵の使用したウロボロスによってブレイブデュエルのシステムが侵食されている!!こちらが用意していたプロテクトを易々と突破してだ。このままでは直ぐに主であるマザーシステムにまで侵食するだろう。そこまで侵食されればゲームをプレイしているプレイヤーまで影響を及ぼす。………多少の時間稼ぎにしかならないだろうが、協力者の科学者と共に何とか時間を稼ぐ。厳しいとは思うが、出来るだけ早く相手を機能停止にしてくれ』
「機能停止にすれば良いのだな?」
『ああ、だけど恐らくキルモードも起動されてるみたいだ。下手に攻撃を喰らえば最悪死に至る。すまない、今の状態では初期状態までの回復と多少の能力上昇しか出来なそうだ。いつまで効力があるか分からないし、どれだけダメージを抑えられるか分からない。矛盾してるかもしれないけど決して無理はせず相手を即座に倒してくれ!!危険な事を任せて済まない………だが頼む!!』

そう言って博士との通信が切れた。その声はとても悔しそうだった。
そして同時にかかる能力アップ。

「魔力も全快………アーベントも再度使用可能か」
「俺も…………」

対象は俺達だけでなく桐谷も含まれていた。

「おい、零治、一体何が起こってる?」
「悪い黒崎、2人を巻き込むつもりは無かったんだ。お前は神崎と巻き込まれない様に下がっていてくれ。後は俺達が………」

そう言って下がらせようとしたが黒崎は引き下がらなかった。

「事情は分からないが、奴を止めないと不味いんだろ?だったら俺も協力する」
「危険だぞ?」
「日常茶飯事だ」

そう言ってニヤリと笑った。正直とてもありがたいし頼りになる。

「神崎は下がってろ、下手に攻撃受けると命に関わるからな」

そう言う俺の助言を聞いても神崎の返事は無かった。俯き、何か言うのを耐えているように思えた。

(神崎………)

クラスで大体一緒にいる中で、神崎の性格もある程度分かってきた。オタクで人付き合いが苦手な神崎だが、思いやりがあり、優しい面もある。今も本当なら並んで戦いたいと思う気持ちがあるのだろう。だが、死を隣り合わせにしていきなり戦えるほどの勇気は無かったのだと思う。

それに対して責める気も無いし、むしろ黒崎のような奴が異常なのだ。

「大丈夫だ、任せろ」

そう言って神崎を下がらせた。

「皆、来るぞ!!」

ディアの声と共に6人全員散開した。

「レイ!!この首は5体しか動けん!!レイはあの男を止めるのを優先しろ!!」
「分かった!!」

時間は掛けていられない。アーベントになり、一気に加速して謙蔵の元へと駆ける。

「喰らえ!!」

そしてパルチザンランチャーBモードを発射した。

「全く、野蛮な………」

謙蔵は全く動じず、右手だけを射撃方向へかざした。

『あっ………あっ………』
「!?」

その時カプセルの様なものに入った加奈が苦しそうにしたのが視界に入った。
射撃はと言うと謙蔵が展開したシールドによって阻まれた。

「…………」
「レイ!!ごめん行った!!」

レヴィの声に反応し、上昇し、喰らい付こうとした蛇を避ける。

「このお!!光翼斬!!」

蛇にではなく、俺の元へ移動してきたレヴィは謙蔵に斬撃を飛ばした。

『あっ………!!』

先ほどと同じく攻撃を易々と防ぐ謙蔵だが、目に入ったのは別だ。

「くそっ、だったら!!」
「レヴィ、攻撃は一旦止めろ!!」
「ええっ!?」

近距離へ攻め寄ろうとしたレヴィは慌てて止まった。

「恐らく、謙蔵が魔力を使うと加奈が苦しむ。何か連動しているみたいだ!!」
「えっ!?それじゃあどうするの!?」

「………流石雅也の息子か。貴様の言う通り俺が魔力を使えば使うほど、加奈の記憶は消えて行く」
「記憶が………消える!?」
「そう!!俺の最大の目的は加奈の記憶を無くし、新たに早苗として作り替える事だ!!もっと大体的に魔力を使っても良いが、マザーシステムを早く掌握しなくてはいけないからな。時間は多少掛かるが、これで無闇に攻撃は出来んだろう?」
「それじゃあ攻撃出来ないって事!?」

最悪だった。相手を止めると加奈が記憶を無くしてしまい、止めなくても結局ブレイブデュエルのマザーシステムがアイツの手に渡り加奈の記憶も消される。

「そう、お前等があがいた所で加奈を救う事は………」
「それは………どうかな!!」

大きな爆発音と共に蛇の顔が爆発した。

「何が………!!」

そこから現れたのは赤い姿。

「桐谷………」
「悪いが、お前の好きにはさせない!!」
「強がった所でお前には何も………!?」

そう言う謙蔵を尻目に桐谷は一気に加奈の元へ駆ける。

「くっ!?」

近づかせまいと魔力の触手を伸ばし、アルトアイゼンを受け止めた。

「無駄な事を!!」
「ぐ、ああああああああああああ!!」

放電の様な漆黒の雷が桐谷に走り、苦しそうな叫び声を上げる。

「このまま死ね!!」
「ぐうう………ああああああああああ!!」

アーマーを着ているのにも関わらず、本人にダメージがある様だ。

「月牙天衝!!」

そんな桐谷を救ったのは同じ黒い斬撃だった。

「黒崎!!」
「パイロシューター!!」

桐谷に目を取られた瞬間だった。
オレンジの魔力弾が加奈を包んだカプセルを襲った。

「これで、どうです!?」

閉じ込められている以上、何かしら変化があると考えたシュテルの攻撃。
しかしそれはカプセルに吸収されるような形で消えてしまった。

「なっ………!?」
「覚えたぞ。パイロシューター!!」

謙蔵はシュテルの方へ手をかざし、黒い魔力弾を複数発射。

「!?くっ………!!」

驚いた加奈だが、すぐに立て直し、下がりながら同じくパイロシューターを発射して相殺した。

「相手のスキルをコピーする………?しかも無効にされるとは………」
「加奈!!」

完全に油断していた。加奈の視界から加奈がバインドで抑えた筈の蛇が襲い掛かって来た。

「あっ………」
「くそっ!!」

間に合わない………加速して加奈の元へいくがとても間に合わなかった。

「インフェルノ!!」

それを救ったのはディアだった。シュテルに襲い掛かる寸前で紫の巨大な球体が蛇を押し潰していく。

「王!!」
「油断するでない!!」
「ありがとうございます………」

「蛇、もう全部倒したのか?」
「あれくらい問題無い」

そう言うディアの後方を見るとたしかに全て破壊していた。さきほど、俺に襲い掛かってレヴィが対応していた蛇も含めてだ。

「もう全部潰されたか………だが!!」
『ああああああああああああああああ!!!!』

今度はハッキリと聞こえる加奈の悲鳴。それと同時に先ほど倒した筈の蛇が全て復活した。

「なっ!?」
「倒したのに………」
「魔力を使えばいくらでも復活できるの!?」

そんなレヴィの驚きをよそに再び襲い掛かって来る蛇達。

「くっ、シュテル!!バインドで全部抑え込むぞ!!」
「ですが王、私達だけでは!レヴィはバインドは苦手ですし………」
「だったら俺が!!六条光牢!!」

そう言って黒崎が俺を拘束した光の楔で蛇を拘束した。

「レイ、ここは我等が何とか抑え込む!!だから早く妹を助けるのだ!!」
「ディア………」
「頼みます!!」
「零治、気張れ!!」
「シュテル、黒崎………ああ!!」

3人に感謝しつつ、レヴィと桐谷に合流する。

「でもどうするレイ?魔法でも防がれちゃうし、そもそもあの触手もあのスピードのロボットを捕まえちゃうし、私のライトニングがもし捕まっちゃったら………」
「そもそもどうやって助けるかだ………」

魔法を吸収され、コピーされてしまう中、あのカプセルを破って助ける事が出来るかも怪しい。

「それに加奈に負担がかからないとも………」

謙蔵は何も言っていない以上、その可能性も大いに考えられる。
正直手が無かった。

「いや、方法はある………」
「桐谷!!」

アルトアイゼンは既にボロボロであり、あの触手の雷の威力の高さがよく分かった。

「俺はあのウロボロスを開発した博士からの預かりものがある。これを直接あのカプセルにぶつければ………だが、俺のスピードじゃあの触手を………」
「………だったら俺にも考えがある。2人ともちょっと聞いてくれ………」


そうして俺は思い付いた策を2人に伝えた………


















「ふん、いくら考えようとお前達にはどうしようも出来ん」

謙蔵は備えは完璧だと自負していた。加奈を直接攻撃すればその魔法は吸収され、スキルを使う事が出来る。こちらを直接狙ったとしても負けるとは思っていない。魔力を使っていけば加奈の記憶を消去する時間が省ける。

(だが、全てを完了するまで完全には消し去れない。途中止まってしまったらやり直さなければならない。この辺りはクレインの僅かな抵抗か………まあいい、例えカプセルに攻撃が通ったとして破壊されれば加奈の記憶も破壊される、もうどうする事も出来ないのだよ)

そう振り返り、小さく笑みを溢した。

「さて、動くか………」

何か3人で話していたのを謙蔵は静観していた。既にこの戦いの先は見えていた。

「もう貴様らにはどうする事も出来ない」
「さて、それはどうかな!!」

零治がそう言うと零治の姿が変わる。それと同時に桐谷のアルトアイゼンが解除された。
零治は黒い姿、ブラックサレナに、桐谷は普段の双剣の姿に。

(桐谷のはダメージから解除せざるおえなかったのだろうな)

そう推測しながら2人の動きを見る。

「桐谷、レヴィ、時間稼ぎを!!」
「ああ!!」
「任せて!!」

零治はその場で魔力を集束し、それをカバーするように桐谷とレヴィは謙蔵に襲い掛かった。

(威力の高い砲撃で私を倒すか、加奈を直接攻撃するかか………無駄な事を………)

再び触手を使い、襲い掛かる2人を攻撃する。攻撃を仕掛けた筈の2人だが、触手の猛攻に避けるのに精一杯だった。

「くっ………!!」
「このっ!!」

触手を斬り裂き、何とか捕まるのを逃れる2人、後方を確認する辺り、やはり零治の一撃に賭けている様に見えた。

「浅はかな………」
「それはどうかな?」
「!?」

思わず呟いた小さな言葉に桐谷が反応した。それと同時に2人は下がる。

「無駄な………」

しかし砲撃はやってこない。その代わり、零治の元へ桐谷は近づき、レヴィはフォトンランサーで謙蔵を攻撃した。

「一体何を………!?」

そこで3人の考えが分かった。

「しまった!!」

気付くのが遅かった。桐谷と零治はその場から転移し、現れたのは加奈のすぐ目の前だった。

「桐谷!!」
「白虎咬!!」

手に魔力を込め、直接ぶつけるシールドをも破壊出来る技。

「バカが!!破壊すれば加奈は………」

しかし様子がおかしかった。

「カプセルが解除される………!?」

攻撃を防ぐ筈のカプセルが静かに消え去り、桐谷は色々と巻き付けられている加奈を無理矢理救い出した、持ち上げた。

「な、何故………」
「クレイン博士の置き土産、そして俺達の『希望』だ!!父さんはあの人を舐めすぎなんだよ」
「くっ!!」

2人を攻撃しようにも既に加奈との魔力供給を切られてしまい、魔法が使えないでいた。

「レヴィ!!」
「任せて!!行くよ~!!雷刃滅殺極光斬!!!」

零治の攻撃と共にレヴィは準備していた巨大な水色の剣を振り下ろした。

「な………」

呆気にとられる謙蔵だが、その後の行動は早かった。

「なめるなあああああああああ!!!」

魔力供給を切られた筈なのに最後の意地なのか。触手が攻撃に動いているレヴィに向かっていた。

「レヴィ!!」

あの状態では避けられない。最悪な未来を想像してしまう中、その触手が全て消え去った。

「何だと!?」

それは砲撃だった。動く触手とレヴィの中、触手だけを性格に撃ち抜いたのだった。

「俺だって、俺だってやるときはやるんだ!!」
「神崎!!」

震えながらランチャーを構えていた神崎。勇気を振り絞った最高の援護だ。
 
「ありがとう!!!いけええええええええ!!!」

そして何の憂いもなく、レヴィの攻撃を喰らわせたのだった………














「加奈、加奈!!」
「………う、う~ん………あれ?兄さん………?」

爆風に巻き込まれた謙蔵から皆距離を取り、加奈の様子を確認した。
蛇達も停止し、変な静けさが漂う中、加奈は静かに目を覚ました。

「加奈!!」

桐谷ががっしりと抱きしめる。その様子に複雑な思いを抱きつつ、腕を組んでると、ディア達3人がニヤニヤと俺の顔を見てきた。

「加奈、ほら………」
「えっ、あっ………」

俺の顔を見て加奈は固まる。見つめられて気恥ずかしさを感じ、首を掻きながら視線をそらすが、いつまでもごまかすわけにもいかず、意を決してこちらから声を掛けた。

「あっ、久しぶり………大きく、なった!?」

その瞬間、腹に衝撃が走った。

「加奈………?」
「お兄ちゃん………お兄ちゃん!!」

しっかりと抱きしめられて、ずっと忘れていた自分の心を思い出した。

「ごめんな………ずっと待たせて…………」

直ぐに迎えに行くと決めていた筈なのに、いつの間にか自分の事で精一杯になって加奈を迎えに行くことを知らないうちに心の中で諦めていた。

「本当に………ごめん………」

涙を流しながら抱きしめている妹に謝る。肉親がいる、その安心感と嬉しさから涙が止まらなくなっていた。

「お兄ちゃん………」

加奈ももう離れないようにとしっかりと抱きしめ返した。

「レイ、良かったですね………」
「うん、良かった………」
「これで1つ、レイの気持ちも晴れただろう。後は実際に顔を合わせて………!?」

そう言おうとした瞬間、ディアの横を何かが通り過ぎた。

「!?」

抱きしめられた加奈の身体揺れる。

「お兄ちゃん………?」

不思議に思い、離れると零治が加奈にもたれかかるように倒れて行く。

「お兄ちゃん!?」

異変に気が付き、零治に声を掛けると零治の背中には複数の鱗の様な物が突き刺さっていた。

「レイ!?」
「零治!!」

黒崎とレヴィが零治に駆け寄る中、桐谷とディア、シュテルが、攻撃の来た方を向いた。

「………全てが上手くいっていた筈なのに………」

そう言ってゆらりと動く影。

「貴様等、覚悟は良いか………?」

先ほどの大きさとはうって変わり、2体の蛇は以前と何かを蝕す様に別空間に繋がっているが、大きさはかなり小さくなっていた。

しかしそれ以上に異質なのは現れた謙蔵の姿だった。
現れた姿は白い蛇の様で、身体から複数の蛇が生え、とても人間とは思えない姿だった。

「父………さん………?」
「こうなれば皆、道連れだ………このゲーム共々死ぬが良い………!!!」

「レヴィ、レイは!!」
「レイ、レイ!!」
「だ、大丈夫だ………」

背中に痛みはあるものの、それで気絶したり、致命傷になるような傷では無い事は分かった。

「焔、痛み、何とかならないか?」
『ごめん、私じゃとても………』
「そうか………」

その答えに痛みに関しては頭の隅に置く。アドレナリンでも出れば痛みも忘れるだろう。

「アーベント………」
『……イエスマスター』

アーベントは何も言わず、言われた通りに反応してくれた。

「レイ、そんな傷じゃ!!」
「お兄ちゃん………」
「零治、お前………」

レヴィと加奈が心配そうな顔で見つめる中、黒崎は察してくれた様だ。

「………終わらせよう。早く、俺達で」

そう言って桐谷の横に互いに支えあう様に並んだ。

「ああ………!!」

それに答える様にしっかりとパルチザンランチャーを構える。

「もう終わりだ、そんな姿をしても何も得られない、何も変わらない。貴方はちゃんと見据えるべきだったんだ。自分の家族も自分の家も自分の全てを捨ててまでこんな事して………」
「私には………早苗が、早苗こそ全てだったんだ!!!それ以外何も………!!」
「そんなの………」
「もういい零治」

言葉を続けようとした零治を桐谷が止めた。

「もういいんだ………」
「桐谷………」
「悪いが、あのバカな父親を止めるのを手伝ってくれ。せめて俺の手で………」
「分かった」

そんな時、零治と桐谷のホルダーが光った。

「これは……」
「スキルカード………?」

そのカードはどちらも同じカードだった。

「桐谷」
「ああ」

2人はそれ以上言葉を交わさず動く。
桐谷はアルトアイゼンよりも大きい姿。まさに巨人と言えるアルトアイゼン・リーゼに。

「オーバーリミット」

そして零治はスキルカードを発動し、アーベントの姿は蒼く、そしてランチャーの形が変わる。

「桐谷、行け!!」
「ああ!!」

零治の言葉と共に桐谷は背中の翼を広げ、スラスター全開で駆け出した。

「パルチザンブラスターBモード!!」

零治はそれに合わせる様に高速移動と高速連射。まさにガトリングの様な魔力弾の雨が謙蔵を襲った。

「ああああああああああああああああ!!」

攻撃を防ごうともせず、身体中の蛇を伸ばし、2人を拘束しようとするが、零治の魔力弾が全てを防ぎダメージを与える。

「父さん!!」

そんな中、頭の角が雷を帯びる。

「母さんは!!ずっと!!」


そんな叫びと共に思い出す風景。
病院の個室で寂しく1人誰かを待つように外の景色を見る女性の姿。


その角で謙蔵を2度斬り裂き、吹っ飛ばす。しかし蛇の鱗で覆われた身体はダメージが少なかった。
だが攻撃はそれで終わりでは無い。

「桐谷!!」

吹っ飛ばされた先に先回りした零治がパルチザンランチャーを構えて待ち構えていた。

「Eモード!!」

そして巨大な砲撃をまた桐谷の方へ撃ち返した。

「父さんを待っていた!!」


その顔は少し寂しそうだが、見舞いに来る桐谷を見てはいつも優しそうな顔をしてくれていた。


次に桐谷はアルトアイゼンのステークよりも大きくなったリボルリングバンカーを構え、思いっきり突き刺した。そして弾を打ち込む。

「倒れてからずっと、ずっと!!」


父に何度も見舞いに来てほしいと桐谷は頼んだ。だが、一度たりとも会いに来てはくれなかった。


まるで訴える様な叫びだった。
2度、打ち込む、3度目、上へ思いっきり射出し吹っ飛ばした。

「決めるぞ!!」

またも待ち構えた零治がまたEモードで桐谷に撃ち返し、それをツノで受け止めた桐谷は前に振り下ろした。

そして両肩の巨大なスラスターを開けた。

「父さんを信じて待ってたんだ!!!」


それで笑ってずっと来てくれるのを待っていた。その姿を見て、桐谷は何度も何度も頼んだが、決して動こうとはせずそして結局………


その叫びと共に大きくなったベアリング弾を一斉発射。

「これで!!」

そして零治もトドメと言わんばかりに直接ブラスターを当て、Bモードを連射した。

「死ぬまで………笑顔で………父さんを………あなたは、愛されていたんだ。それなのに………いつまでもしがみついて………人は誰でもこんなはずじゃないって、そんな事を経験しながらも明日を、未来を歩いて行くんだ」

弾を全て撃ち尽くし、沈黙する両者。桐谷も零治もアーマーを解除し、動かなくなった謙蔵を見る。

「父さんもここから踏み出そう。新たな一歩を。父さんが生まれ変わってまた会える事を信じて待ってるよ………」

そんな願いを込めつつ、桐谷は拳を一閃。

(穂香………?桐谷、穂香に似て………)

桐谷の自愛に満ちた顔を見ながら謙蔵の意識を失った……… 
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